旅のお供にオススメ!宇多田ヒカルの隠れた名曲7選
・宇多田ヒカルの壮大さは精神的宇宙
1.宇多田ヒカルで最も魂の旅情を感じさせる「BLUE」
2.宇多田ヒカルの旅歌といえばこれ!「traveling」
3.ガンジスの川に祈りを込めながら「DEEP RIVER」
4.日常のちょっとしたお出かけに「大空で抱きしめて」
5.少年的な冒険心を忘れない旅を「Goodbye Happiness」
6.プラハの美しい朝の光に導かれて「Be My Last」
7.あの世の世界へ旅立っていきそうな「夕凪」
・宇多田ヒカルの壮大さは精神的宇宙
本当かどうかは知らないが、宇多田ヒカルは都会の部屋の片隅でひとり背中を丸めて曲を書いているというイメージがぼくの中にはある。彼女の歌には壮大な風景や大自然は似合わず、もし広々とした空間を彼女の歌の中に感じ取るとしたならば、それは広さではなく宇宙のような深さである。彼女の歌が解き放つ壮大な世界観は、人間の外界にあるものでは決してなく、彼女が自分自身の心をただひたすらに狭く深く追求した先に突如として立ち現れる、広大な精神的宇宙だ。
そんな彼女の歌には典型的な旅らしい歌は少ないが、それでも旅人との精神的宇宙がつながり合う、旅する心に共鳴する歌がいくつかあるのでここで紹介したいと思う。
1.宇多田ヒカルで最も魂の旅情を感じさせる「BLUE」

”見慣れた街 見慣れた人
すべてが最近 まるで遠い国の出来事
もう一度感じたいね 暗闇の中で
希望が織りなす 鮮やかな音楽
どんなにつらい時でさえ 歌うのはなぜ(さぁね)
恋愛なんてしたくない 離れてくのはなぜ
全然何も聞こえない 砂漠の夜明けがまぶたに映る
全然涙こぼれない ブルーになってみただけ
女の子に生まれたけど わたしのいちばん似合う色はこの色なの”
ぼくが宇多田ヒカルの歌の中で最も好きな曲!4thオリジナルアルバム「ULTRA BLUE」の表題曲。宇多田ヒカルの曲の中で最も異国情緒、魂のさまよいと厭世観を感じさせる珠玉の名作!しかしその異国情緒というものも、実際の異国というよりは人間の心に浮かび上がってくる異国という気配がある。人の世に生きる虚しさと怒り、浮世離れした感性が肉体から魂を解放し、透明な世界で浮遊しているような感覚が心地よい。
2.宇多田ヒカルの旅歌といえばこれ!「traveling」
”風にまたぎ 月へのぼり
ぼくの席は 君の隣
不意に 我に 帰り くらり
春の夜の夢の如し
traveling 君を traveling 乗せて
アスファルトを照らすよ
traveling どこへ traveling 行くの
遠くならどこへでも
traveling もっと traveling 揺らせ
壊したくなる衝動
traveling もっと traveling 飛ばせ
急ぐことはないけど”
宇多田ヒカルで「旅」といえば、そのままの題名の「traveling」!旅というよりはドライブにぴったりな、スピード感のある幻想的な歌。今まで生きてきてもこんなに独特でオリジナリティあふれる優れた歌は宇多田ヒカルからしか聞いたことがないなー。
3.ガンジスの川に祈りを込めながら「DEEP RIVER」
”点と点をつなぐように 線を描く指がなぞるの
はわたしの来た道 それとも行き先
線と線を結ぶ2人 やがてみんな海にたどり着き
ひとつになるからこわくないけれど
いくつもの川を流れ
わけも聞かずに与えられた 名前とともに
すべてを受け入れるなんてしなくていいよ
わたしたちの痛みが今 飛び立った
剣と剣がぶつかりあう音を
聞くためにたくされた剣じゃないよ
そんな矛盾で誰を守られるの
何度も姿を変えて わたしの前に舞い降りた
あなたを今日はさがしてる
どこでも受け入れられようとしないでいいよ
自分らしさという剣を皆 授かった
時には流れを変えて何も持たずに
与えられた名前と共に
すべてを受け入れるなんてしなくていいよ
潮風に向かい鳥たちが今 飛び立った”
遠藤周作の小説「深い河」からインスピレーションを受けたと言われる「DEEP RIVER」。小説内の深い河とは、インドの聖なるガンジス川のことである。宇多田ヒカルの「DEEP RIVER」もガンジス川のように深々とした底の見えない作品に仕上がっている。
4.日常のちょっとしたお出かけに「大空で抱きしめて」
”晴れた日曜日の改札口は 誰かを待つ人たちで色づき始め
今日はどこか遠くへ行きたい気分 空の見える場所へ
雲の中 飛んでいけたら 大空で抱きしめて”
旅というよりは、土日のちょっとしたお出かけにぴったりな作品。心地よいだけでなく、後に残るもう会えないかもしれない透明な寂しさが魅力的。
5.少年的な冒険心を忘れない旅を「Goodbye Happiness」
”甘いお菓子 消えた後には
寂しそうな男の子 雲ひとつないsummer day
日に焼けた手足 白いワンピースが
汚れようがお構いなし 無意識の楽園
夢の終わりに 待ったはなし
ある日君の 名を知った
So goodbye loneliness 恋の歌口ずさんで
あなたの瞳に映るわたしは笑っているわ
So goodbye happiness
何も知らずにはしゃいでたあの頃へは
もう戻れないね それでもいいの
考えすぎたりヤケ起こしちゃいけない
子供騙しさ 浮世なんざ”
旅は、ぼくたちが過去から未来へしか流れるしかないと思い込んでいる時の流れを逆流させる。旅立ちを通して浮世の穢れを祓い落とし、ぼくたちは少年的な心を取り戻すことが可能だ。ぼくたちは少年の自分を捨て去って大人の自分を手にいれるわけではなく。少年の自分に様々な不純物を取り付けていった結果として老い大人になっていくのだ。その不純物の穢れを取り除くというのは、旅という神聖な行為である。取り戻した少年的な自分自身とともに、透明な冒険心を持って世界へと立ち向かおう。それはまさに歌詞の中にあるように”無意識の楽園”である。
”ありのままで生きていけたらいいよね
大事な時もうひとりのわたしが邪魔をするの
So goodbye happiness
何も知らずにはしゃいでたあの頃に戻りたいね
そしてもう一度 kiss me”
6.プラハの美しい朝の光に導かれて「Be My Last」

”いつか結ばれるより 今夜1時間会いたい”
ミュージックビデオの美しさが宇多田ヒカル作品の中で随一の作品!「Be My Last」のミュージックビデオは、ぼくが世界で最も美しいと感じたチェコのプラハの街で撮影された。美しい東ヨーロッパの仄暗く神聖な雰囲気とそこへ差し込む光の対比が幻想的で美しく、ぼくはこのミュージックビデオに心奪われてプラハを再訪したくらいだ。ぼくは今までの人生で3度もプラハを訪れてしまった。
歌詞に言葉の数が少なく「あ〜〜〜」と歌う部分が多いことが、不思議と言葉の届かない自分の中の野生的な心を呼び覚ます。美しさは野生の中にこそあるのかと信じ込まされてしまう作品。
7.あの世の世界へ旅立っていきそうな「夕凪」

”誰もが例外なく 必ず必ず
いつかは終わります これからも変わらず”
”真に分け隔てなく 誰しもが変わらぬ
法則によります 急がずとも必ず”
アルバム「初恋」の中でも最も難産で、いちばん最後に完成したという作品。「ぜいあ〜ぜいあ〜ぜいあ〜ぜいあ〜」という囁きが不気味で、冥界に連れて行かれそうになる作品。死の国や異界への旅立ちとしてピッタリな作品。歌詞も無常観や滅びの観念で満ちあふれている。
