時空の門の重ね

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旅立つことをおそれないで
すぐにまた帰ってこれる
人は帰りつかずにはいられないもの
どんなに明日が来なくなっても

なにもかもを失くしても
すぐにまた満ちる日が来る
喪失の中にある出離を
ためらわないときに人は目覚める

まるでおそれなど知らぬように
森を駆け風になる少年
失くすものなどないかのように
海の揺れと同じになる魂

どうして護り抜いてしまうのだろう
なにひとつ宝石など持たないのに
まるで持っているかのようにけしかけて
定まらぬ価値を無謀に示した

真に透明な時代へと立ち返り
捨てきれずにいた少年を訪れて
ぼくたちは彼に問いかける
既に知っていた答えは返されて

青い液体のあふれ出す日々
快楽の衝動に隠された
幸福を蓄えるための滑らかな果実
損なうことのない美しい日々

時空の門を通り過ぎて
やがて異界へとたどり着いても
必ずもうひとつの扉は待っている
それがあなたを故郷へといざなう

帰りつく先の故郷は
あなたの既知の故郷ではない
旅路を通して変わり果てた瞳が
あなたの故郷を眩く歪める

彼岸から此岸 此岸から彼岸へ
移り変わる無常に照らされ
ぼくたちは転轍を図られる
世界はひとつではない事を知る

 

 

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