無我の聖域
必死になって生きる者には 昔も明日も見えてはいない 必死になって生きる者には 誰の声も響きはしない 死を知らない獣たちのように 時を忘れて光を追い求める おそれを知らない赤子たちのように ただ直感だけを手繰…
必死になって生きる者には 昔も明日も見えてはいない 必死になって生きる者には 誰の声も響きはしない 死を知らない獣たちのように 時を忘れて光を追い求める おそれを知らない赤子たちのように ただ直感だけを手繰…
鍵を見つけ出そうともしなかった 鍵があることすら知らなかった けれど鍵は自ずともたらされた 運命は地下水脈で動いていた 誰に鍵は与えられるのだろう 誰が無視され置き去りにされるだろう どこにい…
ひとつひとつに意味があることを 見逃しながら舟は進んだ 繋がり合って描き出す星座を 見下ろす翼もなく時は流れた 海流から運ばれてくる歌には 何ひとつとして同じ言葉はない それなのにあらゆる涙には 碧色の言霊…
異国を旅して彷徨い果てても 私たちが必ず辿り着くのは 歩き始めた遥かなる源流 光に揺らぐ森の中の清流 最初から知っていたものを見失い 最後にもう一度見出すことで 人は一生を終えていく 秘境の川…
天空へと舞い上がる火炎と 大地を叩きつける水が結実する 最も遠いものが最も近い揺らぎ ぼくたちが信じるものはいつも儚く移ろう 激流によって閉ざされた怒りが 燃え盛る水飛沫として虚空を支配する …
罪を犯さなければ生きられない者 間違えなければ息のできない者 たとえ心が滅ぼされたとしても 密かに魂だけを旅立たせてゆけ 肉体はやがて老い朽ちるだろう 愚かさは生きる度に深まるだろう それでも…
絶望することなしに旅立つことはできない あなたが怯えて動き出せずにいるのは 何もかもを失ったことがないから 守りたいと庇うものに価値がないことも知らずに 魂を滅ぼされることなしに飛翔することはできない 誰に…
大海原の旅路から帰った鮭たちが 生まれ故郷の川を探し当てるように まさにそのようにして人間も 行くべき世界を知らずにいられるだろうか 解き放たれた精子たちが 迷いなく卵へと突き進むように まさ…
世界中にはたくさんの 美しい宝石のような風景が眠っている まるで夢の中を彷徨い歩くように それぞれの美しさを褒め讃えてゆく たとえカメラを置き去りにしても ぼくは世界の巡礼をやめないだろう 胸…
誰もが火を持っている たったひとつの火を隠して歩いている 内なる火の声を聞くことが ぼくたちの生きていく意味だ 火を絶やすことなかれ 火を遠ざけることなかれ 美しい火に濁世の泥をかけて 灯りを…