水色の少年の祈り

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ぼくはやっとたどり着いた
自分自身でも忘れていた
どこにたどり着きたいかなんて
知らないままに命を進めた

すべての人がぼくを見つめてくれる
すべての人がぼくを愛してくれる
はるか遠くの美しき桃源郷を
いつか夢に見たことがあっただろうか

何をさがし荒野を彷徨い歩いているのか
見果てぬものに心を委ねているのか
なにひとつ聞かされずにぼくらは生かされる
生まれる前からの「約束」をまとって

誰か教えてください
誰か聞かせてください
彷徨いの声はあてもなく
やがて他人など何も知らないことに気がつく

ぼくの「約束」はぼくだけが知っている
世界との「約束」をぼくだけが知らされている
遠い昔になぜか置き去りにしてきた
最も大切なものへと祈りはじめる

生きるという聖なる巡礼の道は
ぼくがぼくへと帰りゆく道
少年を捨て去ったところに青年は現れない
少年を伴ってぼくたちは荒野を行く

最も幸福だと信じられた時代を
ぼくは自分にさえ隠して歩いてきたんだ
ぼくだけが愛されたあの時代
新しい怪獣が訪れる前の楽園

ぼくはやっとたどり着いた
3人だけで生きていた家
ぼくが笑うだけで幸福に満たされた部屋
思い出す光の中を生きる感覚

少年が何を心から強く願っていたかなんて
少年自身も忘れて旅は継げられる
けれど本当は泣き叫びながら祈っていた
心が張り裂けるように痛かった

今まで忘れていてごめんねと
ぼくは少年を強く抱きしめる
あなたが生きているだけで嬉しいのだと
すべての慈しみを捧げて愛を伝える

これがぼくの巡礼の答えだ
おばあさまがむいてくれた桃の甘い香り
氷と硝子のぶつかりあう清らかな音
どこまでも果てしなく澄んだ水色の少年の祈り

植えつけられたものたちを
ひとつずつ宙(そら)へと解き放っていこう
麦の畑はまるで黄金色の海のように
風と祈りに呼応しながら揺れている

 

 

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