あちらの岸へとたどり着いたのは
まさにこちらの岸へと達するため
こちらの岸へとたどり着くのは
いつかあちらの岸へと渡るため
いつ終わるとも知れない繰り返しの中で
次第に時空は輪を描く
いつ果てるとも知れない命を携えて
もしかしたら死んでも旅を続けるのだろう
重き荷を負いて生きるという苦しみ
前へ進むことも後ろへ退くこともゆるされない
わたしは車輪を運ぶ労働の水牛
いつまでも いつまでも車輪は廻る
人間たちはあれを進歩だと誇示した
またある人々はそれを退化だと罵った
しかし水牛のわたしは知っている
それはただ車輪の上にあるだけのこと
前も後ろもありはせぬ
上も下も見渡せぬ
命は真空を進む迷路
やがてたどり着く外れた車輪
聡明なものはこの世の理を輪廻と感じるという
輪廻とはなんだろうか
おろかな水牛には存じ上げませぬ
今日も廻る車輪の姿だけをわたしは知っている