銀河・鉄道

わたしがわたしでなかった頃を
この鉄道は呼び醒ます
あなたがあなたでなくなる日を
真空の胎内に宿してゆく

肉体が生まれたこと
精神が生まれたこと
心が生まれたこと
どれを境いになにを帰す

心が滅びること
精神が滅びること
肉体が滅びること
なにも知らないわたしたちの不思議

遠い昔に出会ったことも
忘れ果てて挨拶は繰り返される
はじめまして はじめましてと
けれどはじめからあなたの言葉を知っている

どこかでお会いしましたか
問いかけはあてもなく
なにかを約束しましたか
誰にもわかるはずがなく

繰り返される邂逅に
どこともしれない祖国が疼く
わたしたちがたどり着く祖国
その名を忘れても灯火は消えない

わたしたちは持っている
存在を消されても
心を消されても
決して消えない羅針盤の印し

やっとお会いできたのですね
このような極寒の鉄道の中で
ひとつの線路に揺られて
軌道はわたしたちそれぞれの中にある