琉球諸島に身を置いて、この春で十年目にさしかかろうとしていた。
深山幽谷に存在する美しい仏教都市、高野山の麓の町で生まれ育ったぼくは十年前、学問の為に沖縄本島へと移り住んだのだった。そしてその十年間のうち最後の一年を、離れ島の宮古島で過ごした。
旅して通り過ぎるだけでは、わからないことがある。実際にじっくり住んでみなければ、わからないことがある。それは人でも、街でも、土地でも同じことなのかもしれない。琉球諸島の広大さ、そして奥深さを知ったのはだいぶ後になってからだった。
旅する炎が内側に燃えていたぼくは、常に旅するように生きることを望んでいた。そして幸運にも、宮古島で三ヶ月、その後与那国島で一ヶ月働く機会を得た。
旅するように生きる光の中で
海流の中の宝石のような碧く小さな島々
そこに根をおろし生きる人々
思いがけず出会う心たち
そして見たこともない自然が
ぼくを琉球諸島の奥深くへ誘(いざな)っていった。
そしてその日々が、次の年に
ぼくが宮古島へ移り住むことへと導いた。