向こうに見えるのはロシヤだらうか
どこからどこまでロシヤだらうか
なにからなにまでロシヤだらうか
果てから果てまでロシヤだらうか
厚い外套を脱ぎ捨てたその先に
わたしとロシヤの近隣があった
外套といふ一枚のその中に
数え切れないほどの隔てがあった
わたしの心は隔てを失ひ
やがては緑の町を歩き出した
青ざめた海が心を失ひ
わたしの中に真空を呼び込む
なんといふ透明だろう
青ざめてこそ透明だ
澄んだ心はロシヤのように
陰鬱の鍵で隠さねばならない
開け放たれたドアだけが
わたしにとっての救いであるとは限らない
間違いやすい浮世の果てに
ロシヤは浮かぶ幻影のやうに
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