透明な絵具

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過去が時に押し流されたなら
そのまま消え去ると思いましたか
ぼくは何度でも呼び覚ます
過去を捨て去り今を生きるわけじゃない

あらゆる過去は燃え盛る今の残像
誰もがそれを見捨てて明日へと急ぐけれど
彼らの足元には確かに
通り過ぎた今たちがなお生きている

あらゆる時を捨てはしない
どのような時もぼくの一部
時を連ねて今を織り成そう
今という炎に過去が呼応する

生きることは失くしていくことだと
嘆くあなたをぼくは知らない
失くして老いて落ちぶれて
哀れむための未来なら要らない

時空の城を描いたならば
ぼくたちは得ることしかできない
構築される濃厚な記憶の柱
むしろその濃度に息がつまらないように

ぼくは自分に透明の絵の具を塗る
果てしなく追加される過去たちに
押しつぶされて生きられないような
無様な姿ではいられない

聡明な記憶と忘却の音楽
知らされる無限とゼロの焦点
安らかな命は易くない
されど必ず旅路の先にたどり着く

 

 

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