あれは絶対ぼったくりだったんだと思うんです…。
中国人との激しいバトル!イルクーツクの中華料理レストランでぼったくられた話
・イルクーツクの街の中華料理レストランへ
・謎の葉はゆでられた野菜と化して
・ゆでられた葉の驚愕のぼったくり価格!
・高すぎる野菜に対して中国語で応戦!
・お勘定の写真を消去せよ!
・イルクーツクの街の中華料理レストランへ
バイカル湖の近く、シベリアの真ん中のイルクーツクの街で夕食をとることにした。なんとなく歩いていると中華料理レストランであることを示しながら、赤い提灯が煌々とロシアの街の中に輝いていた。ロシアのヨーロッパ的な街並みとそのアジア的な提灯のギャップが、シベリアの果てまでやってきたぼくの心には懐かしく、深く考えることもなくその中華料理レストランに入った。
店の名前は「マニチジュリヤ」。地下への階段を下っていくと、そこにはまさに中華的な空間が広がっていた。混雑もしていないし、とてもリラックスできる空間だ。レジでは中年のアジア顔の男性がウェイターとして待ち構えていた。彼はロシアに住んでいる中国人らしく、中国語とロシア語しか話せなかった。
しかし写真付きのメニューもあるし、食事をオーダーするだけならば英語を話さなくても問題ないだろう。ぼくはメニューを一通り眺めてみる。メニューには1000ルーブル以下のものが並んでおり、ものすごく高いわけでもない。ぼくは写真を指差しながら、酢豚のようなものをオーダーした。
そして中国語で「お茶はありますか?」と聞くと、「緑茶があります」と中年の中国人のウェイターは返したのでそれを注文した。少しするとそのウェイターが緑の葉っぱを持ってきて「これはいるか?」と尋ねてくる。ぼくはその葉が何かわからなかったが、さっき緑茶を頼んだので、それはお茶っぱでこれでいいか確認してくれているのだと思い、「これはお茶ですか?」と中国語で尋ねると、「そうだ」と彼は答えた。「じゃあこれをください」とぼくが言うと、彼は去って行った。
・謎の葉はゆでられた野菜と化して
しばらくして酢豚と、ライスと、緑茶が提供された。ここまではよかった。しばらくするとものすごく大盛りの野菜のゆでられたものが出てきたのである!これはさっき見せられた葉っぱに違いない!ぼくはこれがお茶かと聞いて、そうだと言われたからお茶を頼んだつもりでいたのに、なぜかその葉っぱは野菜として提供されてしまったのだ。拙い中国語で会話していたが、伝わっていなかったようだ。
さて、どうしよう。こんなもの頼んでいないし食べたくもない。ほうれん草のような茹でられた野菜だけが皿の上に大量にあり、まるで美味しそうでもない。しかし調理されて出てきてしまったものは仕方がないので、どうせそんなに高いものでもないだろうと思ってウェイターに何も言わないでいた。
そして酢豚とライスでおなかいっぱいになったぼくは、間違って出てきた野菜には手をつけずにいた。ウェイターにお勘定をお願いする。するとそこには驚愕の値段設定が示されていた!
・ゆでられた葉の驚愕のぼったくり価格!
酢豚は450ルーブル、これはメニューに書いていたので問題はない。次は緑茶500ルーブル。これでややおかしいと思った。これまでロシアでいろんな店でお茶を飲んできたけれど、こんなに高いお茶を見た覚えはない。メニューにも緑茶の値段は書かれていない。けれどまあ仕方ないだろう。しかし、意味不明の野菜の茹でられたものの値段を見たときにぼくは目を疑った!
1680ルーブル!約3000円くらいだと書いている!
え!ほんとに?!こんなに高いの?!この値段だけ明らかにおかしかった。メニューに書いてある他の高級そうな料理も500ルーブル行かないくらいなのに、どうしてこの変な野菜だけこんなに高いのだろう!もしかして日本人観光客だから騙されているのではあるまいか。
もちろんこの奇妙な野菜もメニューには書かれていないものである。どうしても納得がいかなかったし、あまりにも高かったので、ぼくと中国人とのバトルが中国語で始まった。
・高すぎる野菜に対して中国語で応戦!
ぼくはとりあえず、この変な野菜を注文していないことを主張し。実際にそうだったのだから主張したまでである。中国語で「あなたはこれをお茶だと言った。だからぼくはそれを注文した。しかしこれはお茶ではなかった。あなたがお茶だと言ったからぼくは注文したけれど、これでは話が違う」と、勉強して知っている限りの中国語の知識を総動員させて中国人に説明した。
中国人は中国人で、これをお茶だと言ったことは認めるものの「あなたがこれを要ると言ったのだから払うべきだ」と言う主張を決して曲げようとしない。ぼくは「あなたが茶だと言ったからぼくは頼んだのだ。しかしこれは茶ではなかった、しかもこの値段は高すぎる!あまりに高い!」とぼくも一歩も引かなかった。
そのうちに中国人は怒り出し、他の客がいる前で大きな声で叫び出したが、そのような威嚇にひるんだら負けなので、ぼくは同じ主張を繰り返した。と言っても、ぼくの中国語能力では、この主張以上はすることができなかったのだ。騒ぎを聞きつけて、店員と思われる若い女性と男性の店員もやってきた。しかし彼らも英語を話さず、彼らが来たところで何ひとつ変わるものはなかった。
ぼくは彼らにも状況が伝わるように、中国語の会話ではなく今度は筆談を試してみた。この方がより的確に伝わるのだと思ったのだ。彼らはぼくの言いたいことを理解はしているようだが、ふたりの主張は永遠に平行線で変わることはなかった。そのまま虚しく時だけが流れた。
・お勘定の写真を消去せよ!
転機が訪れたのは、ぼくがお勘定の紙を写真に撮ってからである。ぼくはこの面白い体験を、ぜひブログに書いたりtwitterにあげたりしようと思ってお勘定を写真に撮った。もちろんこれを悪いことだとはつゆほども思っていない。これが正当な値段なら、いくら写真を撮られても困ることはないはずだ。
しかし、ぼくは写真を撮るやいなや、さっきまでは一歩もひかなかった中年中国人が突如値引きを開始した。最終的には合計で2000ルーブルまで落とすというのだ。その代わりお勘定の写真を消せと命令してきた。
この時、ぼくはボッタクリをされていたのだと確信した。どうして正当な値段が書いてあるお勘定の写真を撮られて困ることがあるのだろうか。この値段は明らかに法外であり、それをインターネット上に広められたら困るから、今までは全くするつもりのなかった値引きを突如開始し、その代わりにぼくに写真を消去するように命令してきているのだ。
そうはいかない。ぼったくられた上に時間まで無駄にしたのだから、こんな面白いことの証拠を決して消去されるわけにはいかない。ぼくはこの時、2000ルーブルだけ支払い、そして写真も消去せずに店を出ていくことを決めた。そして先ほどまでは中国語をちょっとは喋っていたのに、突如としてぼくは中国語のわからない日本人になりすました。写真を消せと中国語で言われているのを完全にわからないふりをしたのだ。
中年中国人はそれはもう苛立ち、ぼくのカメラを勝手に奪っては先ほどの写真を探そうと努力していたが、ぼくは液晶を回転させてそれができないように仕組み、さらにファインダーを見ないと写真は見えないんだよと言いながら、ファインダー越しにはるか昔の写真だけを見せつけ、彼を混乱させた。彼はぼくが写真を消去していないことに気づいていたようだが、ぼくはもう帰りたかったので、2000ルーブルだけ支払ってさっさと退散した。
マニチジュリヤでかなり時間を無駄にして宿に帰り、twitterに今日の顛末をお勘定の写真と共に書き上げ、さらに人生で初めてGoogleマップのレビューを書き込み、星はもちろん1にし、そこにお勘定の写真を貼り付けて、一応ぼくの気は済んだ。
ものすごく体力を消耗したが。中国語を勉強してきたことが今日ほど役立った日はなかった、中国語を勉強してきてよかったと、なぜかロシアのシベリアの地で中国語の自分の努力を噛み締めていた。そして語学というものは、外国人とのほほんと会話するだけでは伸びず、このように議論や喧嘩のような感じで真剣に使うからこそ能力を発展させることができるのだということを感じ、ぼくの中国語能力の発展に協力してくれたレストランの中国人のおじさんに心から感謝した。