ライン川ってこんなに澄んでいて綺麗だったかなぁ。
スイスの美しい村スタイン・アム・ラインへの日帰り小旅行
・チューリッヒからスタイン・アム・ラインへ日帰り旅行
・スイスのフリーWi-Fi事情と鉄道チケット
・1時間半の電車の小旅行
・美しき緑のライン川との再会
・美しき壁画の旧市街とホーエンクリンゲン城への散策
・プロテスタントと偶像崇拝
・スタイン・アム・ラインのチョコレート屋さんZuckerbackerei Ermatinger
・スタイン・アム・ライン写真集
目次
・チューリッヒからスタイン・アム・ラインへ日帰り旅行
ベルンの滞在を終えてぼくはチューリッヒへやってきた。ベルンからチューリッヒまでは幸いなことにバスが走っており、値段は約10ユーロ。スイスの物価の高さに感覚が麻痺していたぼくは、なんと安いのだろうと、改めてバスのありがたさを思い知るに至った。
チューリッヒはベルンと同じく、水辺に浮かぶ美しい街である。しかしベルンと異なっていることは、街中のスピードが圧倒的に速いということだ。人の動きや歩くのも速いし、車もなんだかせわしなく、先を急いでいるのだと言わんばかりに人の間をすり抜けていく。これまでに訪れたサンモリッツ、ツェルマット、ベルンで感じられたスイスらしいのどかさは薄れ、時間の流れが最も都会的な印象だ。さすがに人口がスイスで最も大きいだけのことはある。
そのチューリッヒから日帰りで行ける美しい村があるという情報を、twitter上でヨーロッパ旅行情報部さん(@euro_tour)さんから得ることができた。スタイン・アム・ライン(Stein am Rhein)という村で、チューリッヒから電車を乗り継ぎ1時間半ほどでいけるという。写真を見ても素敵な感じがするし、チューリッヒで受けた時間の加速の洗礼から、スイスの飾らないのどかな時間感覚がなつかしくなったぼくは、ぜひこの村を訪れようと決めた。
チューリッヒの中央駅からスタイン・アム・ラインまでの乗り換えをスマートフォンのアプリケーションでチェックする。ヨーロッパ内の細かい電車の乗り換えに関しては、専用のアプリケーションRail Plannerが便利だ。日本の乗り換えアプリと同様に、出発地と目的地を入れるだけで簡単に乗り換えを案内してくれる。無料なのでぜひスマートフォンにダウンロードしておきたい。
チューリッヒ中央駅からスタイン・アム・ラインまでは頻繁に電車が出ているようだったので、自分の都合のよい時間で簡単に行くことができそうだ。乗り換えは1回で、時間は1時間半くらい。とても気軽な日帰り旅行になりそうだ。ぼくは1時間半くらいの小旅行なのだから、わざわざオンライン上で電車のチケットを買う必要もあるまいと思い、チケットを買わないままでチューリッヒ中央駅へと到着した。
・スイスのフリーWi-Fi事情と鉄道チケット
しかしこれがとんだ誤算だった。なんとチケット売場が見当たらないのだ。チケット販売気はあるにはあるものの、インターネット上で調べた値段の2倍以上の値段しか出てこない。インターネット上ではチューリッヒ中央駅からスタイン・アム・ラインまで往復5000円くらいだったのに(これでも十分高いが、もう慣れた)、駅の自動販売機だと13000円くらいする。これはさすがにありえないだろうという感じで歩き回って見るものの、人間のいるチケット売場がなかなか見つからない。仕方なくその場でオンラインチケットを購入することに決めた。
ぼくはこの旅行でSimカードを一切購入しておらず、ホテル内のWi-Fiだけで乗り越えている。お金を節約したいという意図ももちろんあるが、そもそもSimカードなんて必要ないだろうというのがぼくの見解である。しかしこういう時にだけは、やはりSimカードがあると便利である。
ぼくは駅のフリーWi-Fiに接続しようと試みた。これはスイス全土で言えることだが、街中のフリーWi-Fiには簡単に繋がせてはくれない。電話番号を入力し、そこにメッセージを送るからそこに書かれた暗証番号4桁を入力しろという仕組みである。この仕組みは非常にめんどくさいが、国によってこの方針を取っている場所もあるらしく、ロシアもこの種類の手続きが必要だった。
まずはフライトモードをオフにし、スマートフォンをスイスのどこかしらの電話会社に自動的に接続させ、電波を得る。次に、電話番号の入力をする。電話番号は日本のものなので+81に自分の電話番号の最初の0を抜いたものを入力する。するとメッセージで暗証番号が送られてくるので、それを入力すればWi-Fiに接続完了だ。慣れればなんてことない完結な作業であるが、やはり電話番語を入力しうんぬんの手続きは、しなければいいのに比べて格段にめんどくさい。
チューリッヒ中央駅でフリーWi-Fiを接続したところで、スイスの国鉄のSBBのホームページへと接続し、英語を使ってチケットを入手する。購入すればスマートフォン上にチケットの画面が出てくるので、これをスクリーンショットして持っておけば大丈夫だ。わざわざ印刷する必要はまったくない。スイスの鉄道内で、係員がチケットの見回りにやってきたときにスマートフォンのスクリーンショットを見せればそれでオッケーである。
チューリッヒ中央駅にももちろんどこかにチケット売場があるのだろうが、非常に見つけにくかったのでぼくは駅の中でオンライン上のチケットを購入してしまった。可能ならば、事前にインターネット上でチケットを購入した方がめんどくさくなくてよいだろう。宿などのネット環境の整った場所で快適に予約し、スムーズに小旅行が楽しめるように自分自身で手配することがおすすめである。
・1時間半の電車の小旅行
チケットも入手したところで電車に乗り込んだ。
スタイン・アム・ラインまで行くためには、ぼくの乗り込んだ電車ではWinterthurという駅で乗り換える必要があるようだ。これは先ほども紹介したRial Plannnerというアプリケーションで簡単に検索可能である。Winterthurで降りて、今度はスタイン・アム・ラインまでの電車に乗り換える。スタイン・アム・ラインは終着駅であるらしく、駅の電子掲示板にもスタイン・アム・ライン(Stein am Rhein)という文字が出てくるので非常にわかりやすい。
余談だが、ドイツ語ではeiをアイと発音することを覚えておけば、ドイツ語圏の旅行中にもなにかと便利である。アイスはeisだし、このスイスの村の名前Stein am Rheinもスタインアムラインとすぐに読むことができるだろう。ちょっとしたドイツ語のコツである。
難なくスタイン・アム・ラインまで到着した。降りる人も少なく、あまり有名な観光地ではないのだろうか。それとも平日だからだろうか。日本人にはあまり知られていないが、ヨーロッパでの人には人気だとインターネット上には書いていたが、ヨーロッパ人の観光客のような人々も見当たらず、見かけるのは地元の人らしき人ばかりである。とにかく村の旧市街(Altstadt、アルトシュタット、old town)まで向かう。
・美しき緑のライン川との再会
スタイン・アム・ラインの旧市街までの道のりも静かで閑散としている。途中で川を渡るのだが、これはライン川だろう。ライン川の水ってこんなに綺麗だったっけと目を疑った。10年前にドイツ語研修でドイツに住んでいた時には、頻繁にライン川を眺めていたものだが、こんな澄んだ色彩ではなかったように思われた。ドイツのデュッセルドルフなどで見たライン川は、もうちょっと淀んだ濁った印象があったのだ。しかしこのライン川の色は美しい澄んだ緑色をしている。
10年ぶりに再会したライン川の色彩は、なんて澄明で美しいのだろう。川水の色も、たとえ同じライン川であったとしても、どの街のほとりを流れるかで変わるということだろうか。それにしても感動的なライン川の色彩である。ぼくの中でスイスという国のイメージもこのような水の色に等しかった。はるかに透明で澄んで美しい。「スイス」という音の発音すら澄み切った水の清らかさを連想させる。本当に素敵で不思議な国だ。
川の向こうにはスタイン・アム・ラインの旧市街の街並みが広がっている様子が見渡せる。ドイツとの境界の村らしく、木組みの家づくりの様子も垣間見え、これから訪れる旧市街が素敵な街であるということを予感させてくれる。スタイン・アム・ラインは別名“ラインの宝石”とも言われているらしい。
そしてその旧市街の向こうの丘の上には古城の姿が!それはホーエンクリンゲン城というらしく13世紀に作られたということだった。ホーエンクリンゲン城までは徒歩でも行けるらしく、そこからはスタイン・アム・ラインの様子が一望できるという。ぼくの足の歩みは自然と早まっていた。
・美しき壁画の旧市街とホーエンクリンゲン城までの散策
スタイン・アム・ラインは、これまでに見たこともないような不思議なおとぎの村だった。村の中心部には美しく壮大な家の壁画がどこまでも続いており、訪れるものを圧倒する。この壁画は16〜18世紀にかけて描かれたもののようで、まさに中世ヨーロッパの街並みを体現している。壁画にはおそらく宗教的な物語の一部が描かれているのだろう。もしくはその中に、この地方独自の民話の場面も混じっているかもしれなかった。
どこまでも続く壁画に感銘を受けながら、旧市街のメイン通りを進んでいくと、大きな時計台へと突き当たる。この時計台は旧市街の門の役割も果たしているらしかった。そこを出ていくと、ホーエンクリンゲン城までの遊歩道の始まりである。ホーエンクリンゲン城までの道のりは、看板によって示されているので簡単に見つけることができる。看板には距離ではなく徒歩でどれくらいの時間がかかるのかが示されているので便利だ。「Burg Hohenklingen」という文字をたどりながら、遊歩道を歩いていく。
丘の上のホーエンクリンゲン城までの道のりであるから、さすがに登り道が続く。健常な人にとっては、休み休みならば決して苦しい道のりではないだろう。足の悪いお年寄りだと少しきついかもしれない。歩いて登っていくと段々とスタイン・アム・ラインの街並みが小さくなっておもちゃの街のようになっていく。この日は少し粉雪が舞って降り、街の屋根も薄く雪化粧をまとっている。まるで粉砂糖をふりかけられたお菓子のような街並みで、ぼくはなんだか食べたくなった。
徒歩で40分くらいでホーエンクリンゲン城までたどり着く。ホーエンクリンゲン城は冬は閉まっているようだった。12月23日から3月1日までは閉まっていますよとおそらく書いているドイツ語の看板が入り口に掲げられている。しかしぼくは城からのスタイン・アム・ラインの眺めを見るだけのつもりで登ってきただったので、そうか閉まっているのかと平常の気持ちでまた街まで下りていった。もしもホーエンクリンゲン城に入りたいという方で冬季に行かれる方は注意してください。
・プロテスタントと偶像崇拝
再びスタイン・アム・ラインの街並みの中へと迷い込んでいく。冬だからかあまり店も開いていない。ぼくはパン屋さんでモンブランを食べたり、教会にお邪魔したりして時間を過ごした。
この街の教会もチューリッヒの教会もそうだが、祭壇の上には一切の宗教的なものが置かれていない。キリストの彫刻や、宗教画を見つけることもなく、ただステンドグラスが輝いているのみだ。これをチューリッヒのお店の店員さんに言うと、それはここがプロテスタントだからだという。なるほどプロテスタントといえば偶像崇拝を禁止しているキリスト教の宗派だ。地理で習ったところによれば、カトリックはヨーロッパの南の方で、プロテスタントはヨーロッパの北の方に分布していたはずだ。しかし、ぼくははるかシベリア鉄道に乗り、欧州の北の方から南下してきたにも関わらず、すべての教会には偶像を配置していたのはどうしたことだろう。どうしてこのスイスの一部においてだけ、急に偶像が消去されたのだろうか。疑問が残る。
フィンランドのヘルシンキのkamppi chapelの中にもなにもなかったことを紹介したが、もしかしてあれもプロテスタントだったからだったのだろうか。しかしその他のヘルシンキの教会が偶像で満ちあふれていたことも考えると、そういう宗派の地域だったわけではなく、やはりあれは創造者のコンセプトだったのだろうか。
・スタイン・アム・ラインのチョコレート屋さんZuckerbackerei Ermatinger
チューリッヒの旧市街ではものすごくお洒落なチョコレート屋さんを見つけて、カカオが何パーセントとかいう説明も面白いし、箱も洗練されているし、思わず買いそうになってしまったが、100g2000円くらいだったので、騙された思いがして買うのをやめてしまった。そのチョコレートにはそれほどの価値はないにもかかわらず、お洒落さだけで値段を釣り上げられているように感じてならなかったのだ。チョコレートなんてどうせすぐになくなる消耗品なのだから、お洒落さよりも味が大切である。お洒落であって値段も普通なら問題ないが、今スイスの物価に思い悩んでいるこの状態で、虚栄のために使用するお金などないのだ。
しかし、このスタイン・アム・ラインの旧市街のメイン通りの素敵なお菓子屋さんZuckerbackerei Ermatingerのチョコレートは100g1000円ほどであり、ぼくはスイスフランを消費するという意味でも、チョコレート100gを買って帰った。ドイツ語標記しかなかったが、店員さんが懇切丁寧に説明してくださり、明日スイスを発つのでスイスフランを消費したいのだという事情を説明すると、実際はチョコレートはぼくの持っている現金よりも多い値段だったのだが、少しおまけしてくれてぼくの現金をすっかり消費するのを手助けしてくれた。とても優しくていい感じのお店だった。チューリッヒではここの2倍のチョコレートの値段だったと話すと、納得して笑っていた。
帰りの電車の中でそのチョコレートを食べたが、これがまた本当に美味しかった。スタイン・アム・ラインの旧市街のメイン通りにあるZuckerbackerei Ermatingerお店は本当におすすめである。
・スタイン・アム・ライン写真集