旅の力
すべての旅は巡礼 神聖な気配を身にまとい 俗世の風を祓いのけ 孤独の中を先へ進もう 語りかける過去たちを 今だけは幻に変え 絡みつく縁の糸を 軽やかにほどき給へ すべての旅は果てなる彼岸 あな…
すべての旅は巡礼 神聖な気配を身にまとい 俗世の風を祓いのけ 孤独の中を先へ進もう 語りかける過去たちを 今だけは幻に変え 絡みつく縁の糸を 軽やかにほどき給へ すべての旅は果てなる彼岸 あな…
お父さまにはるか導かれて 幼い頃よく深い山を歩いた 途上で疲れ果てて妹とふたり どうしてそんなに山が好きなのと問い詰めた お父さまはひどく怒り それは尋ねてはいけない質問だと知った 自分の好き…
ぼくの根源には死がある 死が生という水の中に沈んでいる 生の水を費やすための遊びを あなたならどのように働かせる ぼくたちは根源へ帰ってゆく 誰も皆同じように帰ってゆく 例外はゆるされないこと…
燦々と青く輝くあの山々は 厳かな壁のようにぼくに立ちはだかるけれど 今ならわかるあの山脈は 新たなる旅への入り口だ ユーラシア大陸の東の端から西の端へ シベリヤの鉄道はぼくを運んだけれど 広い…
どこからが朝で どこからが夜か わからなくなります どこからが本当で どこからが嘘か わからなくなります ここは北の極み ムルマンスクの土地 冬の光も届かない異国 朝焼けがそのまま 夕焼けにな…
清らかな雨に降り注がれて 前が見えない ぼくたちは一体どこにいるの はるかなる海の闇が聞こえる 眩い光に目をくらまされ 時が見えない ここは絶海の孤島・宮古の島 遠い昔の安寧が胸に響く 海はぼ…
ちょうちょをこの指でつかんだとき その羽根があまりに薄すぎるあまりに 自らの指の体温が 羽根を伝ってお互いに伝わり合う まさにそのようにして 夢と現つは重なり合った それはロシヤの朝の森 ふた…
創造をしてください 出会えるはずのないものと 巡り会うための幻の岸辺へ はるかぼくを運んでください 維持をしてください 変わりゆくはずの浮世の 時をすべて凍りつかせたような ありえない次元へい…
スイスで見つけた青い宝石 それは高く天へと舞い上がり 人の手には届かない宝石 神様の白い山脈を行き来する あるのかないのかわからない点滅 どちらにせよ知らされる澄明 有象と無象を旅するための透…
過去が時に押し流されたなら そのまま消え去ると思いましたか ぼくは何度でも呼び覚ます 過去を捨て去り今を生きるわけじゃない あらゆる過去は燃え盛る今の残像 誰もがそれを見捨てて明日へと急ぐけれ…