スペイン巡礼18日目!パンをふんだ娘のトラウマとキリストの肉体

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パンを踏んだ娘は地獄へ落ちました…。

スペイン巡礼18日目!パンをふんだ娘のトラウマとキリストの肉体

・スペイン巡礼のマイナー路線を行く
・「パンをふんだ娘」は地獄へ落ちた
・パンというキリストの肉体
・スペイン巡礼18日目記録

・スペイン巡礼のマイナー路線を行く

 

ぼくは今800kmの距離を歩いて巡礼するという、北スペインにあるキリスト教の巡礼の道「カミーノ」を歩いて旅している最中だ。毎日毎日約30kmずつ歩き続けて今日でついに18日目!

期せずしてたどり着いた素敵なスペイン巡礼のマイナーな横道の町、Calzadilla de los Hermanillosを早朝の6時半に去って次なる町Mansilla de Las Mulaへと出発した。このMansilla de Las Mulaという町に到着すると、メインのスペイン巡礼の道へと合流する。

 

 

ここで心配だったのは、CalzadillaからMansilla de Las Mulaまでの町の間、ひとつの町も村も存在しないかもしれないということだった。さすがはメインから外れたマイナーな巡礼路!迷い込んでしまったらしまったで冒険のようで楽しいものの、やはり不便さは残るようだ。本当に町も村も出現せずに、ただひたすらに畑と荒野だけの道をゆく。巡礼路は石がコロコロ転がっているので、サンダルで巡礼しているぼくとしては、サンダルの穴から小さな石が入り込んできて歩き心地が悪かった。

 

15kmほど歩いた時点で、たったひとつだけ立ち寄れるくらいの大きな村が出現した。ぼくたちはここで休憩し、いつも通り生搾りのオレンジジュースを飲んだり軽食を取ったりして楽しんだ。この日は曇天であり水分補給の必要性はさほどなくて助かったが、この村の給水所でこれからの巡礼路を歩くために十分な水分を調達しておく。スペイン巡礼において、途中の村や町の役割として最も大切なことは、水分を調達することだと言っていいだろう。逆に言えば途中の村々でその都度水分を調達することを見越しておけば、出発する村で大量の重たい水をペットボトルに入れて1日中持ち運ぶ必要性はなくなる。

 

 

・「パンをふんだ娘」は地獄へ落ちた

 

ぼくはこの日の巡礼路の途中で、なぜか小学校の1年生の道徳の授業の時間に見た「パンをふんだ娘」という西洋の物語を思い出した。「パンをふんだ娘」はNHK教育の「こども にんぎょう劇場」でやっていた影絵の物語のひとつである。ぼくたちの小学校では、毎回道徳の時間にNHK教育の番組を15分間ほど見る時間が設けられていたような気がする。そのような時間に偶然見た「パンを踏んだ娘」はぼくにとって、そしてきっとそこにいたすべての小学1年生にとっての大きなトラウマになったに違いない。それくらいインパクトの強い衝撃的な番組で、今でもこうしてスペインの巡礼路でさえ思い出すくらいだ。

「パンをふんだ娘」は北ヨーロッパのお話。美しくて性悪の女の子インゲルが主人公だ。容姿には恵まれていたものの性格が最悪に悪いこの少女は、いつも虫をいじめたり親にわがままを言ったりして暮らしていた。性格は最悪であるものの、見た目はとても美しいので、子供のいない都会のお金持ちの夫婦からインゲルを養子に欲しいとの申し入れがあった。インゲルのお母さんは悲しがったが、性格の悪いインゲルはこんな貧乏な家はいやだと常々思っていたので、お母さんの意見を無視してあっさりとそのお金持ちの家に養子に行ってしまった。

お金持ちの家で裕福に暮らし、ますます美しさに磨きのかかったインゲル。着せてもらう洋服も上質なものばかりで見違えるように華やかな娘になった。お金持ちの夫婦は、こんなにも垢抜けた姿をお母さんに見せておやりと、もとの家を訪れることを提案した。そして、お土産にと大きな白いパンをインゲルに持たせた。

インゲルは帰宅することに気乗りしなかったが、お金持ちの夫婦に従った。しかし、家に帰る途中の道に大きな泥水の水たまりが横たわり、インゲルが歩くことを邪魔していた。こんな汚い水たまりに入ったら高級なお洋服や靴が汚れてしまうわと嫌悪感を抱いたインゲルは、あることを思いついた。それは、お土産にもらった白いパンを水の中に沈めてその上を渡り、靴が汚れないように水たまりを通ろうという計画だった。

せっかくもらったお土産のパンを、戸惑いもなく投げ捨て水の中に沈めたインゲル。そしてその上を渡ろうと靴でパンを踏みつけたその瞬間、おそろしいことが起こった。

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!!!」

なんとインゲルは水の奥深くに沈み込み、やがてはどこまでもどこまでも底へと落ちて行った。落ちた先は、地獄だった。「どこまでもどこまでも落ちて行ったんだよ…」という低い男性のナレーションの声がまた格別におそろしい。落ちていくインゲルの背景がユラユラと揺らめきより一層不気味さを引き立たせている。かと思えば甲高い女の声でいきなりおぞましい歌が流れ出した。その歌を小学校1年生で見たぼくは、未だに忘れることができない。

♪パンを踏んだ娘 パンを踏んだ娘
パンを踏んだ罪で地獄へ落ちた
神様に背いたインゲル 神様に背いたインゲル
地獄へ落ちた♪

こんなおそろしい歌がこの世にあるだろうかと疑うほどの衝撃だった。

 

 

・パンというキリストの肉体

しかしよく考えてみればおかしなことである。いくら日頃の行いが悪いからと言って、パンを踏んだだけで地獄へと落とされるのだろうか。日本では地獄へ落とされるといえば、なんだか殺人でも犯したとか、ものすごい強盗などの犯罪を犯した極悪人というイメージがあるが、インゲルがそれほどまでに悪いことをしたようにはどうしても思えない。踏んだと言ってもたかがパンである。まさか親を踏んだわけでもあるまい。それでもパンを踏んだことを「神様に背いた娘」とまで歌の中で罵られる原因は、いったいどこにあるのだろうか。

ぼくがスペイン巡礼の道でなぜかこの物語を思い出し、一緒に歩いていたてらちゃんに話して聞かせたのにはそれなりの意味や思し召しがあるのだろう。ここはカミーノ、キリストの聖なる巡礼の道だ。ぼくたちは毎日、ワインを飲みパンをいただく。そう、キリストの祈りの道の途上では、ワインはキリストの血であり、パンはキリストの肉体なのだ。

この「パンを踏んだ娘」という西洋の物語には、キリスト教的な観念が多大に含まれていたのだろう。「パンを踏んだ娘」とはすなわち、キリストの肉体を踏みにじったキリストに背いた人間の象徴であり、そのような種類の人間は最後の審判で地獄へと落ちてしまうのだという、キリスト教への信心深さの重要性を説こうとした物語なのではあるまいか。

小学校1年生では理解できなかった謎が、このように悠久の時を経て、スペイン巡礼の道の途上でキリスト教という宗教を通じて解決し、そしてそれらはすべて巡礼の祈りの道へと結果的につながっていくとは、なんと数奇で必然的な運命だろうか。

 

 

 

・スペイン巡礼18日目記録

出発6時半 到着14時00分
消費カロリー870kcal 歩数38115歩
移動距離24km

 

 

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