知らぬ間にカミーノのメインの道を大幅に外れていました!
スペイン巡礼17日目!大いに道を間違った事と、カミーノと熊野古道のつながり
・スペイン巡礼でもたまに道に迷う
・スペイン巡礼はヨーロッパ旅行で最も安価で楽しめる
・カミーノと熊野古道のつながり
・スペイン巡礼17日目記録
・スペイン巡礼でもたまに道に迷う
今日もぼくたちはいつも通り6時半にアルベルゲを出発した。もはや日常となってしまったカミーノのフランス人の道を、10kgの荷物を背負いながら前進していく。今日の目的地はBercianos del real caminoという町。もはや1日ごとに町の名前が変わってしまうのでなかなかすべての町の名前を覚えることも、ままならなくなってきてしまった。とにかくBercianos del real caminoという町を目指して、25kmくらいの行程だ。
スペイン巡礼の道は迷うことが少ない。カミーノの道の上には、常に貝殻のマークや黄色の矢印が記されており、間違いやすい道にさしかかるときにはいつでも、貝殻マークや矢印がぼくたちを正しくふさわしい道へと導いてくれるからだ。したがってよほどの方向音痴の人でも、カミーノの道の途上で迷うことは稀だろう。
しかしそのはずなのに、たまに軌道から外れてしまったりすることがある。例えば集中しておしゃべりをしている時などがそうだ。ぼくとてらちゃんで、どうしてナメクジが塩をかけたら縮んでしまうのかを、ぼくが細胞膜と浸透圧の関係性を用いて予測した理論を詳細に説明していたところ、まったく思いもよらない、外れのルートを歩いていたことがあったので驚いたことがある。どんなに集中して道を歩いていても、カミーノではきちんと道しるべにだけは気を使うべきである。たどる道を間違ってしまったら最後、ただでさえ重き荷を背負いながらえっちらおっちら歩かなければ険しい道を、間違った分の距離だけ引き返さなければならず、間違った距離の2倍分の無駄なエネルギーを費やすことになってしまう。買い物しようと町まで出かけて道を間違えてしまうような、気軽なサザエさんとはわけが違うのだ。
そしてたとえ集中していない時ですら、ふたりともぼーっとしていたから間違ってしまうことがたまにある。ほとんどは前後に人がいたりして間違わないものなのだが、ごくたまに前後に無人の場合があり、そのようなときには道を間違える可能性が高い。そして今日もメインのルートから外れて、なんと最後の最後まで気づかなかったのだ!もうそろそろBercianos del real caminoに到着するだろうと地図のアプリを広げてみたところ、Bercianos del real caminoとはまったく違うルートに入っていることに気がついた!
なんとこのカミーノの道は大きく2つに分かれているらしく、メインのルートはBercianos del real caminoを通る方なのだが、ぼくたちはどこでどう間違えたのか、もうひとつの北のルートを辿ってしまっていたらしいのだ。もはやここからでは遠すぎてBercianos del real caminoへと行く道へと戻ることはできない。目の前に現れた見知らぬ謎の町で宿泊するしかない。町の名前はCalzadilla de los Hermanillos。思いもよらずたどり着いた町だった。しかしこの町、予想外にとても素敵な町だった。
・スペイン巡礼はヨーロッパ旅行で最も安価で楽しめる
まず昼ごはんに、巡礼者メニューが用意されている素敵なレストランがあり、この旅で最も満足する昼食を食べることができた。前菜とメインとデザートとワインがついて、10ユーロ!なんと前菜には、メロンと生ハムを選ぶことができた。メロンが大好きなぼくには、大きなメロンと生ハムがまず出てきただけで大満足だった。その後のポテトと豚肉のメインも美味しかったし、デザートもたくさんある中から選ぶことができて、ぼくはプリンを食べた。ほんとうにこれで10ユーロだなんて信じられない。
スペイン巡礼、カミーノほど安くヨーロッパを安く旅できる方法が、ほかにあるのだろうか。宿は5ユーロや寄付制だったり、巡礼者のご飯のメニューは安くて大量に出てくる。宿にキッチンがついていれば、夕食だって自分で作ることが可能だ。ただひたすらに歩かなければならないものの、カミーノこそもっとも安いヨーロッパの旅行方法ではあるまいか。
Calzadillaでは寄付制のアルベルゲPilrrims Hostel municipalに宿泊した。寄付制なので、何円で宿泊することもゆるされる。ここで働いているスペイン人のおじちゃんは、ぼくたちが日本人だということを知るなり熊野古道のことについて深く興味がある風に尋ねてきたので、ぼくは自分自身の紀伊山脈、車中泊の旅の体験を彼に語って聞かせた。
この日の夕食はとても素敵であり、たまたまアルベルゲに一緒に宿泊していたフランス人の男性が、みんなの分の夕食を作ってくれて、アルベルゲのみんなで楽しく会話しながら美味しいバスタを食べることができた。こんな風な気遣いをできるなんてほんとうに素敵だなと思うとともに、フランス人の作るパスタはとても素朴な味付けで、素材本来の味を引き立たせるような自然な味わいであり、ぼくはとてもそれが好きだった。やっぱりフランスの料理はヨーロッパで一番美味しい。
・カミーノと熊野古道のつながり
その素敵な夕食の際に、ぼくはアルベルゲのおじちゃんと熊野古道の話をした。ぼくのブログの写真を見せながら、熊野古道のことや、日本人の信仰、精神のことについて語った。おじちゃんはスペイン語オンリーだったので、主に写真を見せ合いながら、たどたどしくも心は通じ合い、心で語り合った。
このような会話がぼくは好きだ。言葉が通じ合わないときほど、人は本来の言葉の意味を知る。それは、相手になんとかして伝えたいという思いやりの精神に他ならない。言葉や言霊の源流に触れるとき、ぼくたちはいつもたどたどしい言語のただ中にいる。そして通じ合わない言語を超越して通じ合ったことの喜びが、人の心と心が触れ合えたという喜びなのだ。
おじちゃんは、将来の夢は熊野古道へ行くことなのだと教えてくれた。年齢の呪縛に大いに支配された日本の精神では感じにくいことだが、何歳になっても将来の夢を持ってもいいのだと、そんな当たり前のことをスペイン人のおじちゃんから感じ取った。
そしてぼくにお願いがあると英語を話せるフランス人を通訳にしてぼくに語ってきた。彼は熊野古道のクレデンシャル(巡礼手帳)が欲しいというのだ。ぼくは熊野古道の冒険はしたものの、車で見てまわったのがほとんどだったので、長距離を歩いたこともなければ、熊野古道に巡礼手帳があるのかどうかも知らなかった。
調べてみると、熊野古道にもスペイン巡礼と同様に、巡礼手帳があるらしい。そしてそれは無料でもらえるのだという。しかし、熊野古道のためだけの巡礼手帳は存在しておらず、なんとこのスペイン巡礼の巡礼手帳と、熊野古道の巡礼手帳が組み合わさったような巡礼手帳があるというのだ。そしてスペイン巡礼と熊野古道のどちらものある一定の距離を歩いた人だけが、記念のピンバッジをもらえるらしい。
さすが、世界にふたつしかない「巡礼の道」の世界遺産。ふたつは強くつながりを持っているらしいことが、この巡礼手帳の件を調査していてわかった。
ぼくはおじちゃんと、日本で熊野古道の巡礼手帳が手に入ったら、マドリードのおじちゃんの家に手紙とともに送ると約束した。スペイン巡礼のあとの「巡礼の道」をつなぐ約束が、ひとつできあがった。おじちゃんの将来の夢を叶える手助けをできればいいな。
・スペイン巡礼17日目記録
出発6時半 到着14時00分
消費カロリー922kcal 歩数41985歩
移動距離26.6km