秘境中の秘境、トカラ列島の旅って難しすぎるんだけど!!!!!

トカラ列島の旅(ミズイロノタビ版)
難易度高すぎ!トカラ列島7島を一気に最短で回る予定の立て方と民宿の予約方法を徹底解説
・ミズイロノタビは、日本の離島を巡る旅を始めよう
・ぼくがトカラ列島を訪れたい理由は、小宝島の絶景露天風呂
・トカラ列島の旅の難易度が極めて高い理由
・トカラ列島を合理的に一気に回る旅程の組み立て方を徹底解説
・トカラ列島の民宿を予約する方法を詳しく解説
・トカラ列島を巡る旅は、人事を尽くして天命を待つのみ
目次
・ミズイロノタビは、日本の離島を巡る旅を始めよう

ぼくは最近になって、日本の離島を巡る旅を始めた。沖縄に10年間ほど住んでいたので世界一周の旅の始まりは琉球諸島を巡る旅に定めるなど離島には親和性の高い人生を送ってきたが、自分の車で実際に日本を一周してみると、この国には有名ではない無数の離島が存在していることに気付かされた。日本には何と14125もの離島があるとされ、その中でも有人島は417島だという。もはや一生をかけても全てを回ることはできなさそうだが、今後も日本一周の旅を幾度もやり遂げていく中で可能な限り多くの離島を巡りたいと考えている。
本土から隔離されている分独特の文化が保存されて残っていたり、隣同士の島であっても全く異なる地形や人々に出会うことができたり、雄大な火山や壮大な絶景温泉などこれまでに見たこともないような大自然に触れられたり、なかなか辿り着けないので秘境を旅するような冒険感があったりして、たとえ有名ではなくとも日本の離島の魅力は計り知れないほどに奥深い。むしろ有名ではない離島こそ、一体何があるのかわからないような場所で自分だけが知っている宝物を発見するような達成感を味わうことができる。
飛行機も通わずにフェリーでしか辿り着けない絶景の孤島への冒険を今、始めよう。
・ぼくがトカラ列島を訪れたい理由は、小宝島の絶景露天風呂

ぼくが以前より絶対に行きたいと熱望していたのは、鹿児島県のトカラ列島(吐噶喇列島)だ。トカラ列島は鹿児島県本土と奄美大島の間に並ぶ小さな離島の集合で、その中でも有人島は宝島、小宝島、悪石島、平島、諏訪之瀬島、中之島、口之島の7つで構成されている。以前JALの機内誌でどこまでも広がる大海原に面して開放的に作られた乳白色の温泉の写真を見て、日本にはこんな見たこともないような絶景露天風呂がまだ隠されていたのかと衝撃を受けた。まさに北海道知床半島の東の最果てにある野湯の相泊温泉を発見したときのような感動だ。
調べてみるとその海に面した絶景露天風呂はトカラ列島の小宝島にあるそうで、ぼくはこの一生のうちで絶対いつかここに行かなければならないという旅の情熱に燃えていた。さらに調べていくとトカラ列島は7つの有人島で成り立っていることを知り、どうせ小宝島に行くなら他の6つの離島も同時に訪れてトカラ列島を一気に全制覇したいと考えるようになった。しかし実際に旅の計画を立ててみるとトカラ列島全制覇の旅は思った以上に困難を極め、もしかしたらアフリカ縦断の旅なんかよりも難易度が高かった。この記事ではなぜトカラ列島の旅の難易度が高いのか、その理由を解説しようと思う。
・トカラ列島の旅の難易度が極めて高い理由

先進国の日本ではたとえ離島であっても毎日フェリーが行き来していて便利なことが多いようだが、このトカラ列島はそんな日本の中でも秘境中の秘境なので、何と週に2回しかフェリーが出ていないのだという。具体的には鹿児島港からトカラ列島を通って奄美大島へ下るフェリーが月曜日と金曜日の深夜に(トカラ列島を通るのは翌日の火曜日と土曜日)、奄美大島からトカラ列島を通って鹿児島港まで上るフェリーが水曜日と日曜日に出ている。

トカラ列島のフェリーの時刻表
ぼくはどうせはるばるトカラ列島へ行くなら7つの島全てを制覇したいと考えていた。しかし週に2回しかフェリーが来ないということは、奄美大島から上りのフェリーで宝島→小宝島→悪石島→平島→諏訪之瀬島→中之島→口之島→鹿児島港と順番に進んだら、単純に考えて2つの島を訪れるのに1週間かかることになるので、7つの島を回って鹿児島港に辿り着くのに合計で1ヶ月もかかってしまう計算になる。鹿児島から下りのフェリーで順番に奄美大島へ向かってトカラ列島を巡った場合も同様だ。いくら何でも1ヶ月というのは時間がかかりすぎだ。
時間がかかるというのもそうだが、宿泊費だってバカにならない。トカラ列島の7つの有人島は全てがとても小さな島なので安くて便利なチェーン店のホテルがあるはずもなく、絶対に民宿に泊まることになる。レストランや食堂や商店もほとんどないので、民宿に泊まるなら必ず3食付きにしないと食べるものがなくて旅の最中に飢えてしまうことになる。インフレの波が押し寄せる今の世の中では離島といえども民宿3食付きだと値段は大体8000円〜10000円ほどすることになるので、トカラ列島だけで1ヶ月も旅をしていたら膨大な出費を強いられることになる。
この民宿の予約というのも大変で、調べてもらえばわかると思うがじゃらんや楽天トラベルなどのオンライン宿泊予約サイトにトカラ列島の民宿は一切掲載されていないので、何と地道に一件一件電話をかけて民宿が空いていて予約可能か、3食付きはいくらかかるか、送迎はあるのかをひたすらに尋ね続けなければならない。まるで昭和時代のようだ。しかも1つの島だけならばまだいいものの、それを7つの島全てで実行しなければならないので途方もない労力と時間と電話代が費やされることになる。トカラ列島の有人島は規模が小さいので民宿の数も限られており、民宿を予約してから旅を始めないと泊まるところも食べる場所もなくて大変なことになる。全制覇したいなら7つの全ての島の民宿を電話で予約完了するところから、トカラ列島の旅は始まる。
さらにたとえ全ての民宿の予約が完了してもフェリーが欠航になる可能性がまだ残っているので、フェリーが欠航すると全ての予定が後に後にズレていくことになるので自分の民宿の予約が一体どうなってしまうのか見当も付かない。ぼくのようにFIRE後に自由に世界一周の旅をしている旅人ならまだいいが、社会人で夏休みなどを取ってトカラ列島全制覇の旅をしようと計画している人はかなりのリスクを背負うことになるのではないだろうか。
このように数々の困難が立ちはだかっているトカラ列島全制覇の旅だが、それぞれの問題に対してどのように対処していけばいいのだろうか、実際にぼくが試行錯誤して実行した解決策を紹介していこうと思う。
・トカラ列島を合理的に一気に回る旅程の組み立て方を徹底解説
まずはトカラ列島7つの島を回るのに1ヶ月も回ってしまう問題だが、これには明確な解決策が存在する。それは鹿児島港から奄美大島に、もしくは奄美大島から鹿児島港に向かって7つの島を順番に回っていくのではなく、上りのフェリーと下りのフェリーを交互に利用していくというやり方だ。
わかりにくいので具体的な例を出していくと、普通ならば順番に回っていこうと考えて宝島→小宝島→悪石島→平島→諏訪之瀬島→中之島→口之島→鹿児島港もしくは鹿児島港→口之島→中之島→諏訪之瀬島→平島→悪石島→小宝島→宝島→奄美大島という計画を立ててしまいそうになる。しかし既述したようにこれだと1ヶ月かかってしまうので、もっと合理的にトカラ列島の全島を巡ろうとすると次のような方法がある。

上りと下りのフェリーを交互に乗り継いでトカラ列島を巡る方法(北から南へ)

上りと下りのフェリーを交互に乗り継いでトカラ列島を巡る方法(南から北へ)
このように数字の順番通りに上りと下りのフェリーを乗り継いでいくと、最短で2週間ほどで一気にトカラ列島7つの島を全て回ることが可能となる。例えばこの方法で鹿児島港から奄美大島へ向かうのにどれくらいの期間がかかるのか数えると、月曜日の深夜に鹿児島港を出たとして火曜日に中之島着(下り便)、1泊して水曜日に中之島発・口之島着(上り便)、3泊して土曜日に口之島発・平島着(下り便)、1泊して日曜日に平島発・諏訪之瀬島着(上り便)、2泊して火曜日に諏訪之瀬島発・小宝島着(下り便)、1泊して水曜日に小宝島発・悪石島着(上り便)、3泊して土曜日に悪石島発・宝島着(下り便)、3泊して火曜日に宝島発・奄美大島着(下り便)となり、合計で14泊(初日にフェリーで寝るのを合わせると15泊)でトカラ列島7つの島をすべて回り切ることができる。
逆に奄美大島から鹿児島港へ向かう方法を想定すると、水曜日深夜に奄美大島を出発すれば水曜日に小宝島着(上り便)、3泊して土曜日に小宝島発・宝島着(下り便)、1泊して日曜日に宝島発・平島着(上り便)、2泊して火曜日に平島発・悪石島着(下り便)、1泊して水曜日に悪石島発・中之島着(上り便)、3泊して土曜日に中之島発・諏訪之瀬着(下り便)、1泊して日曜日に諏訪之瀬発・口之島着(上り便)、3泊して水曜日に口之島発・鹿児島港着(上り便)となり、合計で14泊(初日にフェリーで寝るのを合わせると15泊)となる。
ややこしい話になるがこのように見ていくと、上りと下りのフェリーを交互に乗っていくという合理的な方法を取る場合、7つの島に平等な時間滞在できるわけではなく3泊もしくは2泊してゆっくり観光できる島とたった1泊しかできない島が出てきてしまう。これはフェリーの運行スタイルを把握すれば理解できるが、トカラ列島のフェリーは週に2回鹿児島港から(トカラ列島経由で)奄美大島に出て、奄美大島に着くとそのまますぐに引き返して(トカラ列島経由で)鹿児島港へ帰るという運行を繰り返しているので、たとえばぼくたちが下りの便に乗る場合翌日には上りの便に乗ってその島を出なければならないのは、1日前と全く同じフェリーに乗ることになるからだ。重要なのは下りのフェリーに乗るとその島には1泊の短期滞在しかできず、上りのフェリーに乗るとその島には3泊もしくは2泊の長期滞在ができるという視点を覚えておくことだ。
そしてぼくたちはトカラ列島の旅の計画を立てる上で、どの島に3泊もしくは2泊して長期滞在したいか、どの島が1泊だけの短期滞在になるのか、自分自身で旅程を調整しなければならないことになる(フェリーの予定を立てるだけでもパズルを組み立てるみたいでかなり頭を使うのに、その上泊まる日数のことまで追加で考え出したら目眩がしそうだ)。別にこの島には絶対に長く滞在したいというこだわりがない人は上記のような単純なフェリー上下ピストン方式でトカラ列島を回れば問題ないと思われるが、ぼくには絶景露天風呂のある小宝島に長く滞在したいという信念があったのでそれだけは譲れない。また悪石島も来訪神であるボゼという見たことも聞いたこともない不思議な神様がいるらしく興味深いので長期滞在してみたい。また中之島はトカラ列島最大の島で人口も多く、博物館などもあるらしいのでここも長くいられれば嬉しい。
ということでぼくの希望としては小宝島、悪石島、中之島に3泊もしくは2泊の長期滞在をしたいのだが、残念ながら上記2つの最も単純なピストン運行の中にはそのような旅程は見当たらなかったので、自力で再度自分に合った旅行プランを練り直さなければならなかった。下りのフェリーに乗って辿り着く島では1泊となり、上りのフェリーに乗って辿り着く島だと3泊もしくは2泊になるという重要事項を念頭に置きつつ、自分に合ったトカラ列島の旅の計画を何とか作り上げると以下の通りとなった。

トカラ列島の旅(ミズイロノタビ版)
この計画だと小宝島に3泊、悪石島に3泊、中之島に3泊できるので完璧だ。トカラ列島の旅を計画する際には、上りのフェリー移動の後に自分の長期滞在したい島を設置するのがポイントだ。逆に下りのフェリー移動の後の島では1泊して翌日すぐにその島を出て行かなくてはならなくなるので注意が必要となる。具合的にはミズイロノタビでは以下のような旅程でトカラ列島を巡ることになった。
大阪
→(飛行機)→奄美大島
→(水曜日上り便)→小宝島3泊
→(土曜日下り便)→宝島1泊
→(日曜日上り便)→悪石島3泊
→(水曜日上り便)→中之島3泊
→(土曜日下り便)→平島1泊
→(日曜日上り便)→口之島2泊
→(火曜日下り便)→諏訪之瀬島1泊
→(水曜日上り便)→鹿児島港
→(飛行機)→大阪
合計14泊、初日のフェリーの中の宿泊も加えると15泊のトカラ列島を巡る船旅となる。デメリットとしては島と島の距離が長くなる移動があるところではフェリー料金がやや高くなってしまうが、好きな島に長く滞在するためならば仕方ない出費だと言えるだろう。さてこんなに試行錯誤して頭を使って色々考えたのに、これでもまだ旅程をようやく決められたという段階になっただけで、ここから民宿を予約しなければならないという試練がぼくを待ち構えていた。トカラ列島という秘境中の秘境へと向かう旅がどれほどエネルギーを使うものか少しは伝わっただろうか。
・トカラ列島の民宿を予約する方法を詳しく解説

というかフェリーの旅程を組み立てるだけであれば机上の計算で済むのでまだ気楽なのだが、問題なのはこの旅程に沿って7つ全ての離島の民宿を予約しなければならないということだ。ここからは頭脳や計算とは全く無関係の宿が空いているかどうかの運の世界となってくるので、ようやく完成させた自分のトカラ列島の旅程を達成させるために空いている宿を何が何でも探し出さなければならないという根性論の世界になってくる。
ぼくはトカラ列島なんてマイナーな辺境の民宿なんてどこも空いていて簡単に予約が取れるだろうと気軽に考えていたが、実際は全くそんなことはなかった。ぼくがトカラ列島を旅すると予定していた2月は年度末になるので、業者の人が民宿を占領していて予約がいっぱいになる傾向があるのだそうだ。ぼくは何度も断られながらも、自分が作り出したトカラ列島の旅路を辿るためにしがみつくような思いで島中の民宿に電話をかけまくった。1つでも泊まれない島が出てくると苦労して作り上げた自分の旅程を根底から変えなければならなくなるので、こちらも必死だ。
島の民宿を見つけ出す方法は簡単で、グーグルマップを開いて自分の行きたい離島を画面上に表示し「民宿」と検索すれば、その島の民宿一覧を見つけ出すことができる。既述したようにトカラ列島の民宿は、じゃらんや楽天トラベルなどオンライン予約サイトには一切登録されていないので、グーグルマップから電話番号をタップしてその島の民宿に電話をかけまくろう。最初はレビューの高い民宿に泊まりたい、星の評価が低い民宿なんて嫌だと思っていたのだが、いざ予約を開始するとどこの民宿も満員御礼状態で、最後にはたとえレビューが低くてもその島に泊まらせてもらえるだけありがたいという謙虚な心境に変化していた。
小宝島には民宿が2つしかないらしく、レビューの高い方は満員だったがもう一つの民宿には空きがあるということだったので安心した。宝島は全て断られた挙句に素泊まりならばOKという返事をもらい、食堂もないし物価も高いので本土でカップラーメンでも買って持ってくるといいというアドバイスを受けた。トカラ列島の旅で素泊まりは辛いが、宝島には1泊だけなので甘んじで受け入れよう。悪石島、中之島、平島でも全て断られたが、最後の最後で空いている宿を見つけられて安堵した(このパターンが多すぎて心臓に悪い)。一方で口之島、諏訪之瀬島は最初に電話をかけた民宿ですんなり予約が決まって拍子抜けした。トカラ列島の旅をするために一体どれほどの民宿に電話をかけたのだろう、誇張抜きで数え切れないほど鬼電したので7つ全ての島の宿を抑えられた後には疲労困憊だった。
・トカラ列島を巡る旅は、人事を尽くして天命を待つのみ

このようにルート、民宿を抑えることができ旅の計画は着実に進んでいったが、トカラ列島の旅は最後の最後は運任せになるという点が辛くもありエキサイティングでもある。なぜならぼくが自らの旅程を達成できるかどうかは海次第、波次第となってくるからだ。
どんなに合理的で完璧な計画を練っていたとしても、海が荒れてフェリーが欠航になってしまえば全てが頓挫してしまう。そして聞くところによるとぼくが行く2月の冬はフェリーの欠航が多い季節らしい。トカラ列島の民宿はほとんど常に満員状態だったのに、予定が狂って翌日の民宿の宿を新しく抑えなければならなくなった時などはどうすればいいか見当も付かない。しかしそれは起こるかもしれないし起こらないかもしれない未来の空想の出来事の話なので、考えるに値しないことなのかもしれない。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるが、トカラ列島の旅に出る前のぼくの心境はまさにそんな感じだった。これほどまでに苦労して考え抜いて行動しまくったのだから、もはやトカラ列島の旅がどのような結末を迎えようとも後悔することはないだろう。
