スペイン巡礼の素朴な道で募金詐欺に遭遇して20ユーロ巻き上げられそうになった話

 

スペイン巡礼の途中でも詐欺が?!

スペイン巡礼の素朴な道で募金詐欺に遭遇して20ユーロ巻き上げられそうになった話

・スペイン巡礼の素朴な道にも詐欺師はいる!
・車椅子の人々のために署名活動をしている集団
・集団は寄付金を要求してくる
・外国で募金詐欺に騙されないようにする方法
・スペイン巡礼における犯罪

・スペイン巡礼の素朴な道にも詐欺師はいる!

スペイン巡礼は素朴な道だ。いくつかの大きな都会を通り過ぎることもあるが、ほとんどは畑や荒野や小さな村々の中を歩いていく静かな巡礼路だ。出会うのもほとんどがあたたかな心を持っている人ばかりであふれている。そんな素朴で神聖なキリスト教の道の上では、ローマやバルセロナの有名な大都会のように、外国人を狙った悪質な詐欺など起こらないように思える。

しかしぼくは10kgの重い荷物を背負って何もないものすごく素朴な巡礼路を歩いているときに、巡礼者たちを呼び止めて明らかに詐欺を働いているような集団を目撃し、自分自身も実際に被害に遭ったので、注意喚起の意味でもここでご報告しようと思う。

 

 

・車椅子の人々のために署名活動をしている集団

それは800kmのスペイン巡礼も終盤に差し掛かったガリシア地方の、本当になんの特徴もない素朴な道を歩いているときに起こった。道の上では、その日も多くの巡礼者たちが聖地サンティアゴに向かって自らの足を進めていた。そんな巡礼者たちに話しかけて立ち止まらて手に持った紙を見せ、その場で署名させている数人の集団を目撃した。

ああすごくめんどくさそうだなぁ、足止めさせられたくないなぁと思う暇もなく、あろうことかぼくも足止めされてしまった。呼び止めた女性は笑顔で挨拶をしたのち、手に持った紙を見せてくる。紙には英語で何やら書かれていて、その横には大きな車椅子のマークが。ぼくは歩くのに疲れていたのでその英語の長い文章を読む気にもならなかったが、そのマークで障がい者の支援をしているような雰囲気だけは伝わってきた。

そして署名をお願いしますと言われる。この人たちが頑張っているのなら署名くらいいいかと思って、快く署名した。そして早く済ませて巡礼の道を歩くことを再開したかった。署名には日付や名前や国籍を書く欄があり、そして最後にはお金の額を書き込む欄が用意されていた。

 

・集団は寄付金を要求してくる

え…と一瞬思考回路が止まったが、これは何?と聞くと、ここにはドネーション(寄付)の額を書いてねという答えが返ってきた。

なんということだろう!ぼくは徐々に怒りがこみ上げてきた。せっせと歩いて巡礼をしていることを足止めされるのも、結構迷惑な話なのだ。ぼくだけではなく他の巡礼者たちにとってもそうだろう。肩に背負った荷物は10kgで肉体にのめり込むように重く、できることなら休むことなくさっさと歩き続けて早いところこの荷物を宿に放り投げて、この重さから解放され自由になりたいのだ。ぼくは重い荷物を背負って必死に歩いて巡礼している途中に、呼び止められて足止めされてかなり迷惑だったが、障がい者のための署名を頑張っているということなので心に広がるめんどくささを押し殺してわざわざ署名したのに、その上現金まで要求するなんてなんと欲張りなのだろうかと感じられた。

しかもこの署名の寄付金の欄は明らかにおかしい。その署名欄には7〜8人の人が署名していたが、みんながみんな20ユーロを寄付したと書かれている。そんなことがあるだろうか!いくらこのスペイン巡礼の道が神聖なキリスト教徒の道で全ての巡礼者が敬虔なキリスト教徒で与えるという尊い気持ちを忘れていなかったとしても、こんな素朴な道でわけのわからない証明すらない集団に呼び止められて、全ての人が20ユーロも彼らに支払うだろうか。いや、決してそんなことはありえない。

ぼくはその瞬間にピンときた。これはおそらく騙しの一環で、すべての人が20ユーロを寄付しているのだよという紙をぼくに見せることによって、みんなと同じようにしなければいけないという心理を働かせ20ユーロを支払わせるという巧みな計画なのではあるまいか。

大人しそうな日本人だから空気を読んで他人に合わせて20ユーロを支払うと書くと思われたのかもしれないがそうはいかない。はっきり言ってぼくは疲れているのだ。重い荷物を背負って長時間歩き続け、そこを呼びかけられ足止めされ署名までさせられて、さらにはここに金額を書いたならば、わざわざポケットから財布を取り出して、そこからお金を引き抜いてこの人に渡さなければならない。想像しただけでもなんとめんどくさい作業だろう!考えただけでも疲労感が増してくる。お願いだから自分の都合で必死に巡礼している人々の邪魔をしないでいただきたい。

ぼくはそのような思いを込めて、寄付金の欄に思いっきり大きく0(ゼロ)と書いてその場を立ち去った。呼び止めた女性は何かを言い放っていたが、無視した。

 

 

・外国で募金詐欺に騙されないようにする方法

あの時は知らなかったが、調べてみるとこのような募金詐欺はヨーロッパの都会では有名なものらしい。今思ってもあれは明らかに詐欺だったように思うが、もしも本当に車椅子の人を助けるために頑張っている人々だったらどうなのだろうか。本物の募金と偽物の募金はどのようにして見分けるのだろう。

何にしても騙されることを未然に防ぐためには、街中であちらから話しかけてくるような人々に決して財布を出さないという気持ちを徹底することが重要であるように思う。

 

 

・スペイン巡礼における犯罪

事の顛末を巡礼者の友人たちに話すと、それは絶対詐欺だよ、払わなくてよかったねと教えてくれた。そして彼らはスペイン巡礼のような素朴な道で詐欺があるなんて悲しいと心から嘆き悲しんでいた。そうなのだろうか、とぼくは純粋に疑問に思った。

素朴で神聖な道だろうが、大都会であろうが、人間の悪というものは世界の随所随所に出現するものなのではないだろうか。ましてや人々の多く行き交うスペイン巡礼の道の途上ではなおさらだ。人間の悪意には際限がない。どのような片田舎にでも、人間の悪意というものは密やかに巣食うことだろう。何もなさそうな静寂で素朴さにあふれた場所でこそ、油断して人間の悪意に絡め取られないように注意すべきである。

そのような思いを抱きながら、久々にパウロコエーリョの「星の巡礼」を読んでいると次のような文章に出会った。「星の巡礼」はまさに作者のスペイン巡礼の体験を文章にした、精神的で不思議な物語である。

「サンチャゴへの巡礼が始まってから数世紀の間、巡礼者として僧侶や貴族、国王までがヨーロッパ中から聖ヤコブを参拝しにやってきた。そのために、強盗や泥棒もこの道に押し寄せたのだ。歴史をみると、巡礼の一団がことごとく盗難に遭ったとか、一人旅の旅人に対して恐ろしい犯行が行われた例が、数知れないほど記録されている」

スペイン巡礼路はそのほとんどが危険を全く感じない美しい道である。しかし心のどこかに、危険を察知する気持ちは残しておきたい。

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