まさかのリクエスト当たってしまったー!!!!!マジで一生忘れられない最高のコンサート!!!!!
セットリスト付き徹底レポート!谷山浩子コンサート〜奈良でオールリクエスト〜で奇跡的に「恋人の種」をリクエストできた【2020年2月11日公演】
・谷山浩子の「奈良でオールリクエスト」コンサートに行こう
・谷山浩子コンサート”オールリクエスト”の驚くべき仕組み
・奇跡が起こった!見事に当選して「恋人の種」をリクエストできた
・今日のコンサートの谷山浩子の驚くべき表現力と歌唱力
・ガラス張りが美しかったモダンな印象のなら100年会館
・2020年2月11日谷山浩子コンサート〜奈良でオールリクエスト〜のセットリスト
・「電報配達人がやってくる」の水族の風景
目次
・谷山浩子の「奈良でオールリクエスト」コンサートに行こう
東南アジア一周からの、中国大陸横断からの、船で台湾など世界一周の旅の途中だったぼくだったが、中島みゆきのラスト・コンサートの東京新宿公演に参加するために日本へと帰国した。せっかく日本にいるのだからいろんなコンサートも見てみようと思い、たまたま実家の近くの奈良で公演をするという谷山浩子さんの2020年2月11日「奈良でオールリクエスト」というコンサートに行ってきた。
ぼくが谷山浩子という人を知ったのは、中島みゆきのオールナイトニッポンで共演している音源を聞いたことがきっかけだった。中島みゆきと谷山浩子が日本放送の地下でお風呂に入っているというかなり謎?な設定の番組の進行だったが、中島みゆきとの仲のよさが垣間見られて印象的だった。
そこからちょっとずつ谷山浩子の曲を聞き始め、有名なヒット曲はおそらくそんなにないもののその楽曲の多様性と神秘性と奥深さに大きな魅力を感じていった。今でも彼女の全ての歌を網羅して知っているという段階まで至ってはいないが、この一生をかけて少しずつ全楽曲を聞いていこうと思う次第だ。なんだか小学校の音楽の先生のような声で、不思議な歌やおかしな歌や恐ろしい歌や神秘的な歌を作って歌うというギャップがなんとも面白い。
しかし彼女の最大の魅力は彼女の作り出す「物語」にあるのではないかとぼくは段々感じ始めた。インターネット上に落ちている昔のラジオドラマで「悲しみの時計少女」と「電報配達人がやってくる」という物語を聞いたが、なんとも不思議で奥深く真理を追求しているようなその物語にぼくは夢中になり、毎日眠る前に聞いてしまうほどだった。そのラジオドラマには谷山浩子自身も出演しており、物語の随所随所にかかる彼女の音楽も物語とマッチしていてとても神秘的だった。なんだかよくわからない、わからないからこそまた聞きたくなる芸術的な抽象的なそのラジオドラマはぼくの心をつかんで離さなかった。
そんなわけでぼくは谷山浩子の楽曲をそんなにたくさん知っているわけではない素人のファンだが、彼女に夢中になっていることに間違いはないという変な立ち位置のファンだった。コンサートも去年東京で1回だけ行ったことがあるだけだったが、それは普通のコンサートだったので、今回の”オールリクエスト”という形式がどのようなものか全くの謎だった。
・谷山浩子コンサート”オールリクエスト”の驚くべき仕組み
谷山浩子コンサートの”オールリクエスト”の仕組みとは、一体どのようなものだったのだろうか。
ぼくは最初「リクエスト」と名付けられたくらいだから客にリクエストを募るのだろうから、コンサート開始前に紙でも配られてそこに聞きたい楽曲でも書いて、その中で一番多いものから順にやっていくのかなぁと予想していた。それなら歌う側の人も前もって準備できるから便利そうだ。しかし実際に今日行ってみると全然そんな形式ではなくて、公演中に谷山浩子がくじ引きのように座席の半券を箱の中からひき、当たった座制の人が直接その場で谷山浩子本人にリクエストできるという形式だったのだ!
それでいきなり練習なしで即興でピアノを演奏して歌えてしまうのがすごい!!!今回はヴァイオリニストの斎藤ネコさんも参加していて、彼との即興のコラボレーションも彼女の歌の世界観の魅力を最大限に引き出していて最高に上質なコンサートだった!プロってすごいんだなぁって当たり前かもしれないけれどそう素直に感じてしまった。
客席からリクエストが来ると、その楽譜をスタッフさん2人が探し出して谷山浩子と斎藤ネコさんに運んで来る。時々斎藤ネコさんのための楽譜がない楽曲があったりして、それでも慌てずに谷山浩子に合わせて美しい演奏をするから聞き惚れてしまった。
・奇跡が起こった!見事に当選して「恋人の種」をリクエストできた
そしてオールリクエストの仕組みも全く知らなかった、谷山浩子ど素人のぼくが初めて谷山浩子のオールリクエストコンサートに参加して、その結果奇跡が起きてしまった!なんと谷山浩子にリクエストできる人に当たってしまったのだ!!!!!
ぼくの座席はソの1番だった。こんなにいっぱい人がいるからどうせ当たらないだろうと当然思っていたので「セブンイレブンでお買い求めの…ソの1番の方!」と呼ばれた時には、あれ?夢かな?と思ってしまった。こんなに座席がいっぱいあるのに、まさか呼ばれるなんて!!!!!
ぼくがリクエストしたのは「冷たい水の中をきみと歩いていく」のアルバムに入っている「恋人の種」という歌だった。もしも万が一リクエストが当たった時は「恋人の種」をお願いしようと一応事前に考えていて本当によかったと思う。どうせ当たらないだろうと何も考えていなかったら呼ばれた途端に思考がショートしていただろう。
既述したようにぼくはネット上で見つけた谷山浩子のラジオドラマが好きだった。その中でも特に「電報配達人がやってくる」の中の「変な水族館」のシーンが好きだった。その変な水族館のシーンでバックに流れている彼女の楽曲が「恋人の種」という2億年の壮大な地球の歴史を感じさせる不思議で幻想的な歌だ。
”2億年 生きてきた 恋人の種
2億年 まどろみの 夢の中
ひたすらに 待ち続け 今ここにいる
今日生まれ 明日死ぬ わたしの前に
その人は 知っている 原始の空を
岩石に 降り注ぐ あたたかい雨
繰り返す 昼と夜 無限の闇の
寂しさに 冷え切った 長い明け方”
ずっとずっとずっと好きで聞いていた「恋人の種」を、ぼくのリクエストで谷山浩子が目の前で歌ってくれるなんて、マジで”夢のよう”としか表現のしようもなかった。リクエストできるってこんな感情なんだって初めて知った。自分のために歌ってくれているような気がして、本当に神聖な気持ちになる。ぼくは思わず物販コーナーで記念に「電報配達人がやってくる」を買ってしまった。
・今日のコンサートの谷山浩子の驚くべき表現力と歌唱力
今日の谷山浩子の歌声は、本当に迫力があって、表現力豊かで、繊細で、それでいて奥深さもありものすごく聞き応えがあった。歌手「谷山浩子」の底力を見せつけられたような衝撃だった。今日の彼女の歌声の調子は絶好調だったのだろうか?それともこの迫力が彼女の通常???谷山浩子ど素人なのでそこのところがわからなかったが、彼女の能力に圧倒されて、ますます彼女の過去の作品を辿ると同時に、未来でも彼女の創造を追いかけていこうと誓った次第だった。
ちなみに今日のリクエストの楽曲は相当ハードな構成となったようで、こんなに体力を使うのは第一回のオールリクエスト以来かもしれないとMCで彼女が語っていた。やっぱり今日は魂を削って歌うような楽曲が多かったのだろうか。
・ガラス張りが美しかったモダンな印象のなら100年会館
谷山浩子の歌唱も素晴らしかったが、初めて来たこの「なら100年会館」という会場自体がモダンな作りで素敵だった。今回のコンサートは中ホールで開催されたが、外が透けて見えるようなガラス張りになっていて、そこに照明が当たるといたるところが反射したりして幻想的な雰囲気を醸し出していた。今まで行った日本の会場で一番面白かったかも!いつも普通の「会場」っていう感じの典型的なホールしか言ったことがなかったので。こういう独創的なモダンな会場も日本にはまだいくつかあるのかなぁ。いつかまた感動する”会場”に巡り会って見たいな。
・2020年2月11日谷山浩子コンサート〜奈良でオールリクエスト〜のセットリスト一覧
本日の奈良でオールリクエストの曲目は以下のようになった。
〜第一部〜
同じ月を見ている
岸を離れる日
ボクハ・キミガ・スキ
風が吹いている
再会
DOOR
裸足のきみを僕が知ってる
恋人の種
おやすみ
〜第二部〜
夢の逆流
手品師の心臓
花さかニャンコ
ごめんね
ブルーブルーブルー
ねむの花咲けばジャックはせつない
パズル
〜アンコール〜
沙羅双樹
・「電報配達人がやってくる」の水族の風景
せっかくなのでぼくがリクエストした「恋人の種」が、ラジオドラマ「電報配達人がやってくる」の中の変な水族館のシーンにおいて、どのように印象的に使われていたのかここに書いておこうと思う。以下の水族館のシーンで全体に渡って、「恋人の種」がバック音楽として流れていた。
物語の中で主人公のワイチは、電報配達人に導かれて変な水族館を訪れる。そこにあったのは、硝子箱の水中摩天楼。その変な水族館には、青白いランプを灯した四角い硝子の箱が海の底にいくつもいくつも積み上げてあった。大きな水槽、小さな水槽、立方体、直方体。驚いたことに水槽の中にいるのは魚ではなかった。壊れかかった椅子や机、鉛筆自動車、その他大きさも種類のまちまちの日用品の類、そしてそういうものに混じって人間がいる。ひとつの水槽にひとつずつ、身動きもせずに目を閉じて静かにうずくまっている。
ワイチ「あれれ、おかしいな、どうもこの人たちに見覚えがあるぞ。人間だけじゃない、机にも椅子にも、ほかの何もかもに見覚えがあるような気がする。とっても微かな、さわれば消えてしまいそうな微かな記憶。多分ずっとずっと昔の…ああだめだ、どうしても思い出せない!」
水族1「やあ、元気かね。ここだよ、君の後ろの水槽の中」
ワイチ「ああ、驚いた!口を聞けるんですか?」
水族1「当然さ。君と同じ人間だからな。まあ同じと言っても、まるで同じというわけじゃない。君は単なる人間だが、私たちは少し違うのだ」
ワイチ「単なる人間じゃないとしたら、なんなんです?」
水族1「我々は、水族じゃ。失われた思い出の水族だ」
水族2「人間が誰かの記憶の底に沈んで、すっかり忘れられてしまった時、初めて水族になれるのです。わたくしのことも、あなたはお忘れでしょうね」
ワイチ「どこかでお会いしましたか?」
水族2「この水族館に入れられたものは、忘れられる定めなのです。」
ワイチ「名前を!名前を教えてくれたら思い出すかもしれない!」
水族2「無駄です。水族は思い出されることがないから水族なのです。顔を見ても名前を聞いても、たとえどんな話をしてもあなたは私を思い出すことはできません。」
ワイチ「教えてください!いつ頃ですか?」
水族2「それを申し上げても、あなたにはわかりません。」
ワイチ「そんなぁ。」
水族1「そもそも水族とは何か。君は知っているかね?」
ワイチ「いいえ。なんなんですか?」
水族1「君は、なぜ自分が自分なんだろうと考えたことはないかね?人間は誰でも、その人が忘れてしまったものでできているんだ。水族はいわば、人間の存在の材料なんだ。」
ワイチ「存在の材料??」
水族3「そうです。人間が自分というものに執着するのは、海の底にすっかり忘れてしまった水族館を持っているからなのです。」
水族2「ある日の黄昏時、わけもなく寂しくなったり、憂鬱な気分になることがあったら、それは思い出の水族がほんのひと時目を覚ましたから。」
水族3「初めて会った人に妙な懐かしさを覚えたり、自分の分身のように感じることがあれば、それはお互いの水族がどこかで出会っているから。」
水族1「思い出せない思い出が、君の人生を目に見えない力で支配しているのじゃ。」
水族3「水族になってしまったものは、永遠に思い出されることがないのです。」
水族2「あなたもどこかの海の底で、誰かのための水族になっているはず。」
ワイチ「ぼくが、誰かの水族に?」
水族2「誰かがあなたのことをさがしているわ。あなたのことをどうしても思い出せない、でも胸が締め付けられるように懐かしい、そんな思いを持て余して、どこか遠くの街でひとりため息をついている」
ワイチ「それは誰です?!誰なんですか?!…そうだ、ぼくをこんなところに呼び出したイチコって人は、一体どこにいるんだ?」
水族2「その人もきっとあなたをさがしているわ」
結局、ワイチはイチコの水族で、イチコはワイチの水族だった。ふたりは運命的に、水族を共有し分かち合い、水族を取られた片方が水族になってしまうことを永遠に繰り返しながら深い結びつきの縁のもとで夢の輪廻の中を暮らしているのだった。
↑このふたつは「電報配達人がやってくる」の考察記事になります!