地獄のようにつらい登山、その先にある神秘の青い炎の絶景!!
青い溶岩のイジェン火山体験記!地獄のようにつらく危険な登山の後に現れる神秘の絶景
・イジェン火山の神秘的な青い溶岩を見に行こう
・バニュワンギからイジェン火山行きツアーの詳細
・地獄1:車が揺れる地獄
・地獄2:寒さに凍える地獄
・地獄3:他人に合わせなければならない地獄
・地獄4:深夜の登山は普通に眠い地獄
・地獄5:硫黄ガス吹き荒れる地獄
・地球の神秘!美しい青の炎
・地獄6:滑り落ちる地獄
・番外編:カメラが壊れる地獄
目次
・イジェン火山の神秘的な青い溶岩を見に行こう
ぼくはバリ島からフェリーに乗って、ジャワ島のバニュワンギという小さな町にやってきた。この町へとやって来た目的はただひとつ、イジェン火山へ行くツアーに参加するためである。美しい青い溶岩を見られる世界で唯一の場所として知られるイジェン火山へ行くツアーは、多くがこの町から出発している。
正直に言うと、ぼくはあまり何も調べずに、青い火山?フォトジェニックだなー!綺麗だなー!行ってみようかなー!というとてつもなくゆるふわな気持ちでこのツアーに参加したのだが、そのような心構えでは後で地獄を見る過酷なツアーであったことを先に述べておこうと思う。とにかくつらくきつい過酷なツアーだった。これほどまでに気力体力を奪われたツアーは後にも先にも現れないのではないか。
ここではそのようなつらく苦しい体験談を、六道の地獄になぞらえて、六つの地獄としてその全貌を報告してみよう。ここで地獄として紹介するのは、本当に地獄のようにつらかったというのもあるし、硫黄ガス吹き荒れるイジェン火山の光景が、日本の温泉地によくある「地獄」の雰囲気によく似ていたからである。
・バニュワンギからイジェン火山行きツアーの詳細
フェリーに乗ってバリ島からジャワ島へとたどりついたぼくは、港からの乗合バスに乗り、予約していたmango tree homestayへとやって来た。このホテルで、イジェン山へのツアーを予約できるのだ。イジェン山へのツアーの値段は250000~300000ルピア(日本円では2000円くらい)であり、その中にはガスマスクなどの貸し出しも含まれていた。
出発は真夜中の0時~1時。青い溶岩が流れるこの世のものとは思えない美しい風景は夜中にしか見られないために、それを見るためには真夜中に出発する必要があると言うのだ。しかも、その青い溶岩を見に行くまでに、3時間の登山をすると言うではないか。ぼくはこの時点で何か嫌な予感が心の中に湧き上がって来たのだが、人気のツアーで多くの人々が参加しているのに、まさかそんなに険しい山道ではあるまいと、自分を無理矢理納得させてツアーへの申し込みを行なった。
帰ってくるのは朝の8時前後だという。「帰って来てから眠るのでもいいし、事前にきちんと休むのもいいかもしれないね」というホテルのおじさんのアドバイスにしたがって、出発までには2時間ほどの仮眠をとった。きちんと休息もとり、体調も整え、準備は万端である。
・地獄1:車が揺れる地獄
さて、予定通りに真夜中の0時にぼくたちはホテルを出発した。この日はホテルからのツアー参加者が6人と多かったために、ホテルのおじさんの運転で山の麓まで行くことになった。真っ暗な田舎道を、どんどんと車は進む。真夜中なのでもちろん道も空いていた。と思っていたその矢先に、突如渋滞が発生した。不穏な空気が流れる。
おじさんがインドネシア語で道の警備員に尋ねたところ、いつもの道がなんらかの理由で通行止になっているという。果たしていジェン火山までたどり着けるのだろうかと心配する暇もなく、ホテルのおじさんは大丈夫大丈夫!と言い放ちながら、そばにあった砂利道を突っ走り始めた。この道が揺れること揺れること!ぼくたちは自分の体のバランスを保つのに必死で、イジェン火山のふもとに到着するまでに疲弊してしまいそうだった。
・地獄2:寒さに凍える地獄
なんとか辿り着いたイジェン火山の麓!車から降りた瞬間にまず感じたのは、昼間のインドネシアの気温からは想像もつかないほどの寒さだった。なんて寒いのだろう!ぼくは昼間と同じくらいの気温だと思い込んで半袖しか着て来なかった。周囲を見回すと、みんなきちんと長袖を用意してきている。どうやら高度の関係で、夜のイジェン火山がかなり冷え込むというのは常識のようだ。仕方なくぼくだけ500円ほどを支払って上着をレンタルした。ぼくのように事前に寒いという情報を得られていない人のために、きちんと商売人がたくさんのコートを準備して待ってくれているのだ。しかしお金がもったいないのでこれからイジェン火山に行こうとする方は、長袖の上着を持っていくことを強くお勧めする。
コートをレンタルすると同時に、ガスマスクも支給された。ここイジェン火山では、火山からのガスが非常に体に悪いのでガスマスクは必須であるらしく、ガスマスクの料金はレンタル料に含まれていた。ガイドさんを紹介されて、いざ出発!イジェン火山の青く燃えたぎる溶岩の絶景を見ることはできるのだろうか。
・地獄3:他人に合わせなければならない地獄
イジェン山を登り始めて、ぼくは初めて気がついた。険しい!なんて険しい道なんだ!!ぼくが写真映えする青い溶岩を撮りたいなーなんてゆるふわな頭で考えていた以上の10倍の険しさはある。こんなに急峻な道のりを行かないと、神秘的な青い火山は見られないのか!やはり神秘というものはそう易々と到達できるものではないらしい。
どんなに険しくても、自分一人ならば、自分のペースを見ながらゆっくりゆっくり休憩しつつ進んでいくことができるので、そこまでしんどさは感じないだろう。しかしこのツアーはグループ行動は。ぼくを含めて6人のメンバーがガイドと一緒に登山しており、しかも彼らは登っていくのが速かった。フランス人の女の子2人、イギリス人の夫婦、マレーシア人の男性、そして日本人のぼく。体格もあるのか、白人の人々は歩くのも速く、必死について行かなければならない状況に陥った。
他人に合わせて歩くというのは本当につらいということを、この時身を以て感じた。自分のペースでなく他人のペースで歩いていると、疲労がいつもの何倍にもなってのしかかってくるような気がした。しかしこれはチーム行動。誰か一人が遅くなるとチームに迷惑をかけることになるかもしれないと心配し、必死になって速く歩く白人の人々についていった。深夜の闇の山道を、ライトの光を頼りにして辿っていく。
・地獄4:深夜の登山は普通に眠い地獄
疲労が重くのしかかるのは、他人のペースに巻き込まれるからだけではない。眠い!普通に眠いのだ!深夜の1時〜4時の時間帯に登山するのがこんなにもつらいものなのだとは知らなかった。肉体はこんな時間なのだから頼むから登山なんかしないでくれと必死に訴えてくるのだが、身勝手な心が青い火山を見たいのだと言って肉体の要求を無理矢理に退けるものだから、肉体と心のバランスが乱れて、矛盾するような引き裂かれるような状態になって、そんな状況下で疲労が増大するのも当然と言えるだろう。
とにかく必死に白人たちについていこうとして険しい山道の道中を頑張っているのに、それが深夜の暗闇の山道で、しかも普通なら眠っている時間帯に無理矢理肉体を叩き起こして不自然に登山しているのだから、その疲労度合いは想像するに難くないだろう。それもこれもすべて、美しい神秘的な青い火山を見たいがためなのだが、こんなにもつらく苦しいものだとは思いもよらなかった。ガイドブックに書かれている文章も、インターネットの記事も、この火山の稀有なことをばかりを強調し、それまでの登山の苦しさを全く伝えていてはくれなかった。
・地獄5:硫黄ガス吹き荒れる地獄
それでも2時間くらい歩いてなんとか登り切った後は(このものすごく大変だった登山を”なんとか登り切った”という単純な短い言葉で終わらせられるなんて、言葉ってなんて簡単で罪深いのだろう!)、なんと崖のように急な砂にまみれた山道を下るというステージが用意されていた。
砂でサラサラで油断すれば滑り落ちてしまいそうな下り坂を、慎重に慎重におりていく。先程までの険しい登り坂に比べたら、みんながゆっくりと下りていくのでどちらかというと肉体的にはこちらの方が楽ではあるものの、眠さと暗さの中、滑落しないように気を遣って砂の道を下って行く行為は、それはそれで神経をすり減らす大変な道のりではあった。
この下り坂の始まりのあたりから、徐々に硫黄ガスの匂いが立ち込め始め、ぼくたちはガスマスクをつけなければならなかった。ガスマスク、なんだか普段使わない道具を使うことに最初はワクワクしていたが、普通に顔にへばりつくのが邪魔で、ものすごく息がしにくい!そして暑い!それでも硫黄ガスはとても肺に悪いということでもちろん装着せざるを得なかった。
ガスマスクのあまりの鬱陶しさに試しにマスクを取り除いて歩いてみると、硫黄の匂いの気持ち悪さで気分が悪くなり、さらには呼吸がものすごくしづらくなって苦しくて大変だったので、どんなに鬱陶しくてもガスマスクは付けたままにしておいて方が絶対にいいと思う。
途中では硫黄の黄色い鉱物を運ぶ不思議な鉱山労働者とすれ違い、なんだか本当に別世界にきてしまったような感覚に襲われる。この崖のように急峻な砂道を、下って、今度は上って、また下ってを何度か繰り返した後に、ついに青い溶岩が姿を現した。
・地球の神秘!美しい青の炎
青い!本当に青い炎だ!!!こんな神秘的な光景があるなんて信じられない…!
もちろん燃え盛る溶岩なので近くへ行くことはできないが、遠くから眺めているだけでも、地表から青い炎が絶え間なく現れ出てくる光景は、息を飲むほどに感動的だった。ぼくは地球という惑星に生命と神秘を感じ、たくさんの美しい大自然の不思議をいつも見せてくれるぼくたちの地球に感謝した。ぼくの根源に炎が燃え盛っているのと同様に、地球もその核に抑えようのない炎を蓄えて、定まった聖地においてこのようのその神秘と秘密を出現させてくれているのだ。
青い溶岩に限りなく近づいた写真を撮るためにガイドさんがぼくたちのカメラを預かって、なんと果敢にも青い溶岩の近くまで接近し、美しく燃え盛る青い炎の写真を撮影してくれた!ガイドさんってすごいな、命がけで仕事してるんだなととても感心した。ガイドさんが命がけで撮影してくれた青い炎の写真を、大切にしようと心に誓った。
夜の暗闇が終わり、次第にイジェン火山がその全貌をぼくたちに見せ始めた。ぼくたちが歩んできた険しい山の斜面も、生命を感じさせない地獄のような砂の山肌も、硫黄の鉱物を運ぶ労働のおじさんも、今となっては全てが明らかになり、それと同時に青い火山は日の明るさで見えなくなった。深夜の険しい登山で辿りついた者だけが見ることを許される、イジェン火山はまさに試練の山だった。
・地獄6:滑り落ちる地獄
帰りの道は行きの険しい上り坂を逆に下るだけだから、楽だろうと思っていたが、さすが地獄のような試練を与えるイジェン火山、そうは問屋が卸さなかった。急峻な上り坂を歩いてきたということは、急峻な下り坂を同じ距離進まなければならないということである。しかも上りの時には全く気づかなかったが、この道は砂まみれで、ちょっと小走りに走って下ったものならば、砂によりツルーーーっとどこまでも滑り落ちてしまう非常に危険な坂道だった。
せっかく無事に青い溶岩を見られたのに、最後の最後に滑り落ちて怪我をしないように、ゆっくりゆっくり下山していくのは逆に疲れるものがあった。本当ならば下りの山道は、駆け下りてとっとと休みたかったのだが、砂まみれの坂道を爆走するわけにもいかず、最後の最後まで披露する登山だった。
・番外編:カメラが壊れる地獄
後日談だがこのインドネシア横断中に、ぼくのカメラが完全に壊れた!液晶が真っ暗になり、もはや写真を撮ることはできなかった。今まで何の不具合もなく普通に動いていたし、ぶつけたり落としたりもしていないし、買ってからまだ3年くらいしか経っていないし、一体どうしてしまったのだろうと不思議だった。
これは断定はできないが、ガイドさんが火山にものすごく接近して青い炎の写真を撮ってくれた時に、火山の熱にやられたのではないかと考えるのが自然なように思われた。別に仕方のないことではあるものの、イジェン火山で青い炎に接近して写真を撮ってやるとガイドさんに言われた時には、自分のカメラが急に壊れる可能性がないこともないということを、念頭に置いていてもいいかもしれない。