日本一周の最後の最後に、ペルシア的感性に出会った。
ラスター彩とは何か?人間国宝加藤卓男とは?岐阜県多治見市「幸兵衛窯」で美しきペルシャの感性に出会った
・ぼくの「日本海沿いを北上する旅」+「太平洋沿いを南下する旅」=日本一周の旅
・岐阜県下呂温泉で出会った青く美しい「幸兵衛窯」の作品
・日本一周の旅の最終目的地は、岐阜県多治見市の「幸兵衛窯」
・岐阜県「幸兵衛窯」で、まさかのペルシア的感性に出会った
・「幸兵衛窯」の博物館が国際的で見応えがありすぎた
・「幸兵衛窯」の迷路のような古民家に世界中の古代芸術が並んでいた
・ラスター彩とは何か?ラスター彩と人間国宝・加藤卓男との関係とは?
・人間国宝・加藤卓男さんはシルクロードをゆく旅人でもあった
・七代目加藤幸兵衛さんの異国情緒あふれる斬新な作品群
・「幸兵衛窯」の巨大窯と大量の薪の風景
・祖国を究極的に深めれば、矛盾するように異国へと辿り着く
目次
- ・ぼくの「日本海沿いを北上する旅」+「太平洋沿いを南下する旅」=日本一周の旅
- ・岐阜県下呂温泉で出会った青く美しい「幸兵衛窯」の作品
- ・日本一周の旅の最終目的地は、岐阜県多治見市の「幸兵衛窯」
- ・岐阜県「幸兵衛窯」で、まさかのペルシア的感性に出会った
- ・「幸兵衛窯」の博物館が国際的で見応えがありすぎた
- ・「幸兵衛窯」の迷路のような古民家に世界中の古代芸術が並んでいた
- ・ラスター彩とは何か?ラスター彩と人間国宝・加藤卓男との関係とは?
- ・人間国宝・加藤卓男さんはシルクロードをゆく旅人でもあった
- ・七代目加藤幸兵衛さんの異国情緒あふれる斬新な作品群
- ・「幸兵衛窯」の巨大窯と大量の薪の風景
- ・祖国を究極的に深めれば、矛盾するように異国へと辿り着く
- ・神秘的なイランの旅の記事はこちら!
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- ・岐阜県の宿をオンライン検索してみる!
・ぼくの「日本海沿いを北上する旅」+「太平洋沿いを南下する旅」=日本一周の旅
こんにちは!世界一周+日本一周の旅を続けている水色です。
ぼくは今までの人生で日本海沿いの地域をほとんど旅したことがなかったので、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外国にも行けず旅人としてはこのまま日本を深めるしかないという絶好の機会に、日本海沿いを北上する車中泊の旅を決行した!
岡山県、広島県、山口県、佐賀県、長崎県、福岡県、大分県、熊本県、島根県、鳥取県、兵庫県、京都府、福井県、石川県、富山県、新潟県、山形県、秋田県、青森県、フェリーに車ごと乗り込んで北海道函館まで渡り、そのまま北海道の最北の離島、礼文島の澄海岬を「日本海沿いを北上する旅」の最終目的地とした。
そのまま北海道をぐるっと一周し、再びフェリーに乗って青森県へ!青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、長野県、岐阜県、山梨県、静岡県と「太平洋沿いを南下する旅」を完遂した。
結果的にぼくは7月〜11月までの間ほぼ4ヶ月かけて「日本海沿いを北上する旅」+「太平洋沿いを南下する旅」=日本一周の旅を達成したことになる。この旅ブログ「ミズイロノタビ」では、あまりに感動的で素晴らしすぎた日本一周の旅の一部始終を公開しようと思う。
・岐阜県下呂温泉で出会った青く美しい「幸兵衛窯」の作品
岐阜県の下呂温泉を歩いていると、美濃焼きを取り扱っている「TOKAI GALLERY JAPAN」という焼き物屋さんがを見かけた。「TOKAI GALLERY JAPAN」の店の前には、勃起した男根から勃起した男根が生えているという不思議な男根神「チムチムゴッド」のガチャポンが置かれていたことが深く思い出に残っているが、肝心の「TOKAI GALLERY JAPAN」の店内もそれはそれは面白い内容だった。
「TOKAI GALLERY JAPAN」の中には岐阜県のさまざまな作家さんの作品が展示されていたが、特に印象深かったのはエジプト神の焼き物だった。店に入った途端に目の前に飛び込んでくる鮮やかで美しい濃厚で爽やか且つ美しい青色のエジプト神の置物たちは、まさかmade in Japanではないだろうと思ってしまうくらい異国情緒に満ち溢れていた。しかしこれらの幻想的なエジプト神の焼き物も、岐阜県で製作されたれっきとした美濃焼きであるという。
ぼくはこれらのエジプト神の焼き物のあまりにも美しすぎる色彩と神秘的な佇まいに心が惹きつけられ、魅了されてしまった。「TOKAI GALLERY JAPAN」はセレクトショップなのでこの作家さんの作品も少ししか置かれていなかったが、ぜひこの旅の中でこれらの焼き物が作られている岐阜県の窯元を訪れて、数ある作品の中から旅の思い出に何かを買って帰りたいという衝動に駆られた。
しかし調べてみたところによると、これらのエジプト神の焼き物が作られている「幸兵衛窯」は岐阜県多治見市というはるか南の愛知県に近い場所にあるという。ぼくはこれから岐阜県を東に抜けて山梨県に入り、静岡県をめぐってから関西に帰る予定だったので、それならば最後の最後、静岡県からの旅の帰り道に「幸兵衛窯」を訪れようと計画した。
・日本一周の旅の最終目的地は、岐阜県多治見市の「幸兵衛窯」
旅路は計画通りに進行し、山梨県の旅と静岡県の旅を無事に終えて、ついに北海道から始まった「太平洋沿いを南下する旅」、そして日本一周の旅の帰路へと辿り着いた。あとはもう静岡県から関西に帰るだけ!そしてその帰路の途中に、ちょうど岐阜県の「幸兵衛窯」があった。「幸兵衛窯」はぼくの日本一周の旅の最終目的地となった。
しかし下呂温泉でたまたま見つけて気になっていただけだし、ガイドブックにも載っているわけでもないので、ちょっと見てちょっと買い物してすぐ帰れるようなスポットだろうとぼくは思い込んでいた。けれど意外なことにこの「幸兵衛窯」は見応えがありすぎて、この旅最後で最大の衝撃的で嬉しい発見となったのだった!「幸兵衛窯」はただの焼き物屋さんではなく、美術館でもあり、博物館でもあり、岐阜県に訪れたぼくを中東の世界へと迷い込ませ、そしてぼくの大好きな日本の伝統的古民家を探検することができるという夢のような場所だった。
・岐阜県「幸兵衛窯」で、まさかのペルシア的感性に出会った
下呂温泉で見かけたエジプト神の焼き物からして、日本の伝統的な焼き物というよりは異国趣味的な印象の強い「幸兵衛窯」だったが、実際に「幸兵衛窯」を訪れてみるとその印象がより顕著に表現されているエキゾチックな作品群を目の当たりにすることになった。
ぼくがまず「幸兵衛窯」で訪れたのは焼き物のショップだったが、そこに並んでいた焼き物の作品たちを見て、ぼくはすぐにイラン、すなわちペルシアの感性を思い出した。店員さんと会話していて「すごいイランっぽい作品ですねー!」と興奮して感想を伝えると「よく知っていますね、まさにイランに影響を受けた作品です」と教えてくれた。ぼくはイランを旅したことがあり、イランの優しい人々や奥深い文化、美しい芸術作品が大好きで強く心に残っていたので、すぐにイランのことを思い出せたのだった。
なぜ岐阜県の焼き物なのにこんなに異国情緒に溢れているのか、そしてなぜそれがこんなにもペルシア的で美しいのか、その理由はこの時点ではわからなかったが、「幸兵衛窯」を見学していくと徐々にその秘密が明らかになっていった。
・「幸兵衛窯」の博物館が国際的で見応えがありすぎた
ショップを見終わると店員さんが「上の階が小さな博物館になっているのでぜひ見ていってください」と教えてくれた。焼き物を作る場所なのに博物館まであるのかーすごいなーと思いつつ、すぐ見終わる感じの岐阜県の焼き物の展示室なのだろうと呑気に構えていたら、意外なことにかなり見応えのある国際的で文化的な博物館だった!
ガンダーラの仏像や、ロシアのイコン、キリスト協会のような美しいステンドグラスに、「幸兵衛窯」の六代目にあたる人間国宝の加藤卓男さんの異国的な作品など、時間を忘れて興味深く見入ってしまうほどに充実した内容になっていた。
さらにショップの上で博物館だけではなく、ショップの前の情緒ある日本の伝統的古民家までもが博物館になっているという。こんなん展示が充実しすぎて全然帰られへんやんと思いつつ、面白すぎてどんどん「幸兵衛窯」の古民家の中を探検し始めた。
・「幸兵衛窯」の迷路のような古民家に世界中の古代芸術が並んでいた
「幸兵衛窯」の古民家博物館は、こっちの方が本気の博物館だったのかと感じられるほど数々のシルクロードの古代芸術と現在の「幸兵衛窯」の美しくて斬新な作品群でひしめき合っていた。本当に何この面白すぎる空間!!!!!
しかも展示されている古代の芸術作品が興味深いだけではなく。この古民家の建物自体もものすごく見応えがあって、博物館を見回っているだけなのい古民家の中を大冒険しているみたいで興奮した。日本の古民家ってやっぱり味わい深いし面白すぎる!!!
柵もついていない狭い階段を恐る恐る上がっていくと、小さな2階の部屋も博物館になっていて、しかもその2階の小さな部屋の先にも、さらに小さな階段がついていて、さらに小さな3階の部屋にもシルクロードの古代美術たちが並んでいるので、もはや何が何だかわからない不思議な世界に迷い込んでしまったような感覚に陥った。
・ラスター彩とは何か?ラスター彩と人間国宝・加藤卓男との関係とは?
この古民家の博物館を見学していて、なぜこの「幸兵衛窯」がこんなにも異国情緒的なのか、どうしてこんなにもペルシア的な美しい感性に満たされているのか次第に明らかになっていた。その理由を解く鍵は、人間国宝の六代目加藤卓男さんとラスター彩の関係にあるようだ。
ラスター彩とは何だろうか?ラスター彩とは、遠くオリエントの地で生まれた気品の高い陶器で、独自の装飾技法を用いる。鉛を含んだ錫釉で整えた白い器面の上に、特殊な酸化金属(銀・銅)に還元促進剤を混入した絵の具で描写して、強還元焔にて焼成したもの。
その特色は「光沢」や「きらめき」を意味するラスター(英語Luster)の名の通り、光を吸収してキラキラと玉虫色のように微妙で蠱惑な輝きを発散する。
発祥は9世紀のメソポタミア文明といわれる。当時贅沢の風習が流行し、貴金属器の使用が制限または規制されたため、科学と芸術を愛する王様や工人達が貴金属器の代用品を作り出そうと全力を傾けた結果、貴金属の持つ美しい光沢を表現したラスター彩陶器が誕生したと言われている。
その後11〜13世紀に至って、ラスター彩陶器はイランの当時の最高峰の窯業地(カシャーン・レイ・サヴェ)で絢爛たる貴族的な焼き物“ペルシアの華“と呼ばれ隆盛を極めた。しかし華やかで魅力的なラスター彩の隆盛の期間は短く、13世紀のモンゴルの侵入、破壊以降衰微の一途を辿ることとなった。
その後15〜16世紀には、イスラム文化の影響を受けたスペインのイスパノ・モレスク陶器にその流れを見出すことができたが、18世紀にはそれすらも途絶えてしまい、この気品に満ちたラスター彩陶器は、ここに歴史の終焉を見ることになった。そして人々からは技法の途絶えた“幻の名陶”と呼ばれていた。
故・加藤卓男は昭和36年頃よりこの不思議な光沢と数奇な運命を持つラスター彩に魅せられて技法の再現に取り組んだ。そして約25年間にわたる現地の発掘調査と胎土、釉顔料(絵の具)の研究及び千数百回の焼成によって、ラスター彩陶器を現代に蘇らせることができた。そしてラスター彩技法の継承を受けた七代加藤幸兵衛により、新たなラスター彩として生まれ変わることになったという。この古民家の博物館には、故・加藤卓男が生涯の情熱を注いだラスター彩技法再現の過程の中で巡り会ったラスター彩古陶を展示している。
・人間国宝・加藤卓男さんはシルクロードをゆく旅人でもあった
加藤卓男さんがラスター彩の研究に熱心であり、しばしばイランを訪れ砂漠の中で発掘作業を行なっていた様子を示す文章も展示されていた。彼は陶芸家だっただけではなく、シルクロードを冒険する旅人だったのではないだろうか。
私の友人にアバディンプーアというイラン人がいる。イラン高原、南部イラン、カヴィール砂漠など30数カ所にわたって発掘や調査ができたのも彼のお蔭である。私が10何回目かにテヘラン空港に降りた時、彼は迎えに来て息を弾ませながら「砂漠の中に珍しい陶片が出る」という情報を話してくれた。そこはテヘランから約600km、カヴィール砂漠の南部の小さなオアシスである。
気の早い私は早速行こうということになり、彼は骨董店を閉め、2週間の予定で砂漠を踏破、遠征することになった。7月初めの最も暑い盛りだったが、準備万端の上、テヘランを出発した。途中3、4日オアシスで泊まらねば現地に行けない僻地である。エルプレス山脈を越えると、早くも茶褐色の広大な砂漠が開けてくる。前方にはギラギラと眩しい塩湖が見え、ゆるいスロープを描いて果てしなく広がる。遠くはるかな地平線は、赤みを帯びた黄色い陽炎に揺れて、灼熱の太陽がジリジリと大地を焦がす。焼けつくような砂の波にタイヤが滑る。外に出ると50度である。砂漠の中のスピードは35km以上出すことができない。約8時間も走ったが、陽が次第に傾いてようやく小さなオアシス部落に着いた。
村の入り口にはポプラ並木があって、チャイハナと呼ばれる茶店があり、老人が5〜6人のんびりと私たち一行を眺めていた。小さな日干し煉瓦の宿で第一夜をしのぐことになった。砂漠を走って2日目、ようやく目的地のハッサン・コーラという部落に着いた。ここの村長は「日本人を初めて見た」とまるで月の世界から来た人間のように驚いた。それから10日余り、村を上げての大歓迎という極楽天地だった。発掘には村人15人ほどが協力してくれたが、そこから出た陶片はまさに驚くべきものだった。日本の桃山期の織部とそっくりではないか。はるか日本から10000kmも離れたところから織部と同じような陶片が発見されたことは、一体どういうことであろう。私は、込み上げてくる興奮を抑えることができなかった。
・七代目加藤幸兵衛さんの異国情緒あふれる斬新な作品群
古民家の博物館には、購入可能な七代目加藤幸兵衛さんの作品も並んでいた。この作品達がすごく面白い!まるで古代シルクロードから運んできたようなのに、どこか斬新で現代的でかっこいい、不思議な魅力の詰まった陶芸作品だった。値段はやっぱり数十万円〜数百万円と高価!ぼくがお金持ちだったなら、思わず買ってしまいそうになる心が惹きつけられる作品達だった。
・「幸兵衛窯」の巨大窯と大量の薪の風景
古民家の博物館を何時間も興味深く眺めながら、充実した気持ちで外へ出ると、焼き物を作るための窯と大量の薪が並んでいて迫力があった。この日本の窯と日本の薪で、異国情緒に溢れたあの焼き物達が仕上がるのだと思うととても不思議な感じがした。
・祖国を究極的に深めれば、矛盾するように異国へと辿り着く
「日本海沿いを北上する旅」+「太平洋沿いを南下する旅」=日本一周の旅の最後にたどり着いたのが、麗しいペルシア芸術だという事実は、ぼくにこの世の真理を突きつけていると思わずにはいられなかった。
ぼくは昔から、全ての概念は円環を描いていると直感している。人間は男と女とか、暑いと寒いとか、生と死とか、とかく物事を2つに分裂させて理解したがる。それゆえに男と女は正反対だとか、暑いと寒いは対義語だとか、生と死は最も隔絶された概念だと認識しがちだ。時には分け隔てられた2つを対立させ、憎み合い、妬み合い、殺し合うことだって珍しいことではない。それは人間の戦争の歴史が如実にしてしていることだろう。
しかしぼくには、対極の位置にある2つの概念によって世界が組み立てられているというこの発想が、あまりに浅はかで薄弱だと感じられてならない。ぼくの直感では、2つの対立した概念は結局のところ、円環の形をしてひとつにつながっているのだ。例えば男をものすごく男らしくしたならば、やがて逆に女らしくなってしまうのではないだろうか。同様に暑いという感覚の極致まで行ってしまえば、逆に寒く感じるのではないだろうか。生きるということを究極的に突き詰めていったならば、やがてその真逆の死へと転換されるのではないだろうか。これはもしかしたら東洋に伝統的に根付いている「禅」の思想に通じるものがあるのかもしれないが、そのような感性が幼い頃からぼくの中で育まれていた。
そして今回人生で初めて、日本一周の車中泊の旅をすることにより、ぼくはこれまでにないほどに祖国を深めた。それは世界一周という異国の旅が、コロナの影響で中止せざるを得なかったというだけの偶然の産物だったが、しかしこれも仕組まれた運命ではないだろうか。ぼくは日本一周の旅という、壮大な祖国を深める旅の極致へと達した時に、その旅の終わりで、思いがけず矛盾するように異国へと巡り会ったのだ。それが今回の美しいペルシア芸術だったのだろうとぼくは確信している。祖国を最も深めたその先には、異国が広がっているのだ。それは矛盾のように聞こえるが、常識を超越した真理である。
世界を見たいからといって、異国を知りたいからといって、異国の旅へ出るのはあまりにも単純だし浅はかだった。本当に異国を知りたければ、祖国を究極まで深めることだ。祖国を軽んじて、祖国を蔑んだままで、ただ洗脳されたように異国に憧れて、軽率に異国へと旅立つだけでは真理の瞳は開かれないだろう。真実の異国は、本当の世界は、究極的な祖国の深淵に広がっている。それが今回の日本一周の旅の先で、ぼくが日本の大地と日本の神々から受けた啓示だった。
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