シベリア鉄道の旅から帰ってきたぼくが夜会「リトル・トーキョー」を見て中島みゆきから受け取ったメッセージ

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さあ、旅立ちなさい。

シベリア鉄道の旅から帰ってきたぼくが夜会「リトル・トーキョー」を見て中島みゆきから受け取ったメッセージ

・世界一周中断のおしらせ
・夜会の新境地「リトル・トーキョー」
・「リトル・トーキョー」の挨拶文
・「リトル・トーキョー」のあらすじ
・「放生」の絶唱から新たなる旅立ちを心に誓う

・世界一周中断のおしらせ

ぼくは中島みゆきというアーティストが好きだ。どれくらい好きかと言うと、彼女の夜会「リトル・トーキョー」が東京で開催されるからと言ってそれを鑑賞するために、世界一周の旅を中断してアムステルダムから日本に帰ってくるくらい好きだ。

中島みゆきの夜会「リトル・トーキョー」が開催されていた時、ぼくはシベリア鉄道の旅の真っ最中だった。詳細に言うとロシアでのシベリア鉄道の旅を終えて、ヨーロッパを周遊している途中だった。本来ならばヨーロッパからさらにアフリカなどに行って旅を続けようと思っていたのだが、中島みゆきの新作の夜会が開催されるということで、世界一周なんてどうでもよくなって日本に戻ってきたのだった。

世界一周中断のおしらせ〜旅には2つがある

結局ぼくのシベリア鉄道の旅は、ロシア、フィンランド、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、チェコ、ポーランド、ハンガリー、オーストリア、スイス、フランス、ベルギー、オランダを周遊して幕を閉じた。その旅の日数は、奇跡的にちょうど100日間だった。

 

 

・夜会の新境地「リトル・トーキョー」

長い放浪の旅から帰ってきたぼくを、中島みゆきの夜会「リトル・トーキョー」は温かく迎えてくれた。今回の夜会は今までにない明るいミュージカル調の演出も取り入れられており、耳で聞いても目で見ても楽しめる作品で、わざわざオランダから帰ってきて本当によかったと心から思わせる新境地の名作だった。

 

・「リトル・トーキョー」の挨拶文

「リトル・トーキョー」のパンフレットの中島みゆきの挨拶文は、次のように書かれている。

”私は日本以外に住んだことも、住みたいと思ったこともありませんが、仕事のために短期滞在した程度なら、あちらこちらの国へ行きました。日本を懐かしむほど長期ではなくても、体調維持のために日本の水や食品を求めて、日本人町を探すことはよくあります。

ゆく先々の国で「リトル・トーキョー」という名はよく使われていて、それは時に地図にも載っていない、通称としての一区画を指していたり、スーパーマーケットの名だったり、食堂の名だったりもするのですが、いずれにせよ、初めて訪れた時からいつも私は、不思議な感覚に包まれるのでした。

日本直輸入の箪笥から、現地工場で日本のレシピ通りに作られた食品まで、ごちゃまぜになんでもあるのに、なにか不思議な国へ来たような、東京には決してないトーキョーが、そこに創り出されていて、独立して育っているような、眩しさ。彼らは一体、何を作ろうとしてきたのだろうか…。

この「東京にはないトーキョー」の不思議さに手を取られるようにして、夜会VOL.20は新しい物語へと踏み出しました。外国へ行ったことのあるお客様も、ないお客様も、ひととき、ありえない国への旅をお楽しみいただけましたら、幸いでございます。”

 

 

・「リトル・トーキョー」のあらすじ

夜会「リトル・トーキョー」の舞台は、北海道のクラシック・ホテル。いつも難解な多重構造を企ててくるこれまでの夜会に比べたら、今回の物語のあらすじはとてもシンプルなものに感じられた。1回しか見ていないので映像作品で見たらまた新しい発見があるのかもしれないが、ぼくが1回見た限りだとなんだか「日本昔ばなし」の話みたいだなと思った。

人間関係の複雑さはあるものの、物語の軸をものすごく簡単に説明すると次のようになる。

北海道のクラシックホテルに動物が大好きで山犬の親子ととても仲良しの女性がおりました。その山犬が密猟者に狙われているのを助けようとひどい吹雪の中に迷い込んだ女性は雪崩に巻き込まれ、山犬の親子と女性は死んでしまいました。しかし奇跡的に山犬の子供が1匹だけ生き残っていました。けれど傷ついた山犬の子供は幼すぎて自分だけで生きていく力はありません。かわいそうに思った死んだ女性は幽霊となって山犬の子供を助け出し、クラシックホテルへ連れて帰り、ホテルのみんなで傷ついた山犬の子供を治療し、やがて元気いっぱいになったところで山犬を山に返してやりましたとさ。

 

 

・「放生」の絶唱から新たなる旅立ちを心に誓う

この最後に山犬を山へと返してやる場面で歌われる絶唱の「放生」という歌に、ぼくはひどく心打たれた。というのも、放浪の旅をしているぼくの魂に、直接訴えかけてくるような力強さと説得力があったからだ。

傷が癒えて本来の目的は果たされたのだからと言っても、可愛がっていた山犬の子供と別れるというのは切なくて寂しいものがある。しかしそこで引き止めることはなく、山犬の子供を愛しているからこそ敢えて山へと帰りなさいと背中を押すこの場面は、人の心が抱く本当の慈愛に満ちている。

”命あるものすべて 終わりはある 別れはある
解き放て 解き放て 輝いてくれるように

さあ、旅立ちなさい もうすべて変わる時
さあ、悲しみをこえて 行くべき世界へ

さあ、旅立ちなさい もう歩いて行けるわ さあ!”

ぼくはまた旅立たなければならないのだ。シベリア鉄道の旅でこの人生の旅を終わらせてはならないのだと、この歌の絶唱を聞いて強く誓った。

中島みゆきの歌を人生の大変な苦境の時期やひどく心を傷つけられた時に聞いて、慰められた人も彼女のファンには多いのではないだろうか。しかし、いつまでも彼女の歌に慰められたまま、彼女のもとで立ち止まっていてはいられない。彼女の歌に傷ついた魂を慰められたからこそ、そして立ち直れ動き出すことができるようになったからこそ、今度は彼女から旅立って生まれ変わったように、新しい生を生きなければならない。そして中島みゆきがぼくたちにしてくれたように、今度はぼくたちが誰かの人生や魂を癒せるように努力する番なのかもしれない。

とめどなく創作意欲が溢れている彼女でも、やがて年をとってこの世を去ってしまう日が来るのだろう。ぼくよりもはるかに年上に彼女が、ぼくよりも先にこの世を旅立ってしまう可能性の方は十分に高い。やがて彼女がこの世を去ってしまうのを見届ける日が訪れたとしても、彼女はこの「放生」のように既に癒された魂たちを突き放すだろう。「もう私から旅立ちなさい」と背中を押すだろう。それは、憎まれているから突き放されるのではない。愛されているからこそぼくたちは彼女から「放生」されるのだ。

山犬の子供のように、彼女の歌にたくさんの魂を癒されたぼくにとって、この「放生」の歌は彼女の遺言のような、なんだか彼女が遠い場所へ行ってしまうような気がして、衝撃とともに少しばかりのさみしさを覚えた。しかし何が起ころうとも、ひどく傷つきすべてを失くし、そして癒された魂は旅立たなければならない。この世の本当の鏡を探して。

祝!中島みゆきの夜会「リトル・トーキョー」の映像作品が発売決定となりました!

 

 

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