ぼくは10月30日から11月25日までの約1ヶ月間、シベリア鉄道でロシア横断の旅をした。
衝撃!シベリア鉄道は2等車よりも3等車の方が快適だった
・ぼくの旅の経路
・1等車2等車3等車
・2等車の風景
・3等車の風景
・車両の中の小さな倫理とロシアの恵み
・まとめ/総じて3等車が快適だった
目次
・ぼくの旅の経路
ぼくのロシアの旅の経路は日本→ウラジオストク→(シベリア鉄道3泊)→イルクツーク→(シベリア鉄道4泊)→モスクワ→サンクトペテルブルク→(24時間列車の旅)→ムルマンスクという行程であった。
ウラジオストクからモスクワまでのシベリア鉄道の旅はノンストップで行くならば7泊の列車の旅であるが、ぼくはバイカル湖も見たかったのでイルクツークで途中下車してその街で3泊した。したがってウラジオストクからイルクツークまでの3泊と、イルクツークからモスクワまでの4泊のシベリア鉄道の列車の旅をしたことになる。
・1等車2等車3等車
シベリア鉄道は1等車、2等車、3等車にわかれている。1等車が最も高級であり、2等車は中間、3等車は最も安価な車両とされる。内容としては、1等車は2人部屋、2等車は4人部屋、3等車は部屋がなく、お互いの仕切りがないオープンな車両空間という事前情報だった。
インターネットのページには、外国人旅行者は2等車が無難とよく書かれている。1等車は高すぎるし、3等車は仕切りがなくロシアの庶民の人々も多いので盗難面で不安があるだろうと書かれているのだ。しかしそのようにインターネットに書いている人々も、3等車に乗ってから文章を書いているわけではなく、実際には2等車に乗りつつ3等車に関しては憶測で記事を書いているようだ。それではあまり説得力がない。
3等車は2等車に比べて約半額ほどであり、安全面が確保されており可能ならばぜひ3等車に乗りたいという方々も多いのではないだろうか。そこでぼくが今回のシベリア鉄道の旅で、実際に、2等車と3等車の両方に乗ってきたのでその比較を行いたいと思う。
・2等車の風景
ぼくはウラジオストクからイルクツークまでは2等車の車両に乗り込んだ。ひとつひとつの部屋がドアで仕切られており、確かに盗難面では安心できる設計にあると言えよう。
ひとつの部屋にはベッドが4つ、下に2つ上に2つという並びである。机は下のベッドの間の窓に近いところにひとつある。この机を自由に使えるという点から言えば、下のベッドの方が上のベッドよりも便利であり、それゆえに下のベッドは上よりも少々値段が高い。ぼくは安いので上のベッドを予約したが、それでは机を自由に使えないのかと言われればそういうわけでもない。一部屋にひとつの机はその部屋の4人の共有物であるという観念が、ロシア人の乗客の間には浸透しており、机を使っていいですか?などと聞いて、下のベッドに座らせてもらって机に食事を置いて食べることはもちろん自然と可能だった。
2等車の上のベッドは比較的空間が広く、普通にその上で座ることくらいはできるので、その上で本を読んだり動画を見たりして快適に過ごすことができた。
車両にはひとつの大きな給湯器が設置されており、そのお湯でお茶を作ったりカップラーメンを作ることができた。お茶好きの日本人ならお茶のパックと魔法瓶の水筒などを持って行くと非常に重宝するであろう。実際にぼくがシベリア鉄道の旅に最も持ってきてよかったと感じたのは魔法瓶の水筒である。
トイレは車両にひとつあり、このトイレは非常に寒かった。ぼくのシベリア鉄道の旅は秋〜冬にかけてだったが、車両の中は20℃前後に保たれており非常に快適だった。たまに暖かすぎると思ったこともあるくらいである。しかしトイレだけは、便器の下が外に繋がっているからかなんなのか非常に寒かったのを記憶している。そしてシャワーはなく、3日間シャワーなしで暮らさなければならないというのは少々苦痛だった。
意外だったのが、充電の差込口が車両に2箇所しかなくとても不便だった。部屋に2箇所ではなく、車両に2箇所である。2等車ならば少なくとも部屋にひとつはあると思ったのだ。
Wi-Fiはもちろんなく、ぼくはSIMカードを使ってネットワークを繋げるということもしていなかったので、まったくのインターネット環境なしの3日間を過ごすことになった。しかし本を持ち込んだり、動画をダウンロードしたり、ロシア人や韓国人とおしゃべりしながら楽しく過ごせたので苦痛はなかった。
嬉しかったのが、2等車のチケットには1回分の食事が付いていたらしく、食堂車で1食分無料で食べることができた。ぼくはこの食堂車が好きでよく足を運んでいた。この清潔で快適な食堂車で安いお茶やボルシチなどを頼めば何時間でも居座れるので、そこでよく本を読んだり韓国人の大学生と話したりしていた。よく食堂車は値段が高いと書かれているが、ぼくはそれほどでもない感じた。街よりちょい高いくらいだろうか。
また2等車には歯磨きやスリッパなどの基本駅なアメニティが付属していたのも嬉しかった。それに加え赤い弁当箱?のようなものの中にパンやお菓子や水が入っているものがそれぞれにひとつずつ手渡されていた。
こんな感じで2等車の三日間は過ぎ去っていった。
・3等車の風景
さて、肝心の3等車である。ぼくはイルクツークからモスクワまでの4泊を3等車で過ごした。
3等車に入ってまず驚いたのは、車両が新しく綺麗だったことだ。おそらく3等車の方がロシア人に使われる頻度が高く、重点的に車両を新しくしているのかなんなのかわからないが、非常に快適だった。
しかし、次に驚いたのは上のベッドの高さがほとんどないことだった。この3等車も2等車同様、ベッドが上下にわかれており、ぼくは今回も安いので上のベッドを予約したのだが、2等車の上のベッドとは全然違った。3等車は上のベッドのすぐ上に荷物置きがあり、人間は上のベッドでは座ることさえできないのだ。これは2等車との大きな違いであると言えよう。2等車の場合はベッドが上でも下でもどちらでも問題ないと感じたが、3等車では間違いなく、少し値段が高くても下のベッドを予約することをオススメする。上のベッドでは座って本を読むことすらできない。ただ眠るためだけの空間だ。とは言っても、長いイルクツークからモスクワの道のりの中で席が常に満員ということはなく、乗客が頻回に入れ替わって行くので空いているベッドも多く出てくる。下のベッドの空いているところを陣取れば快適に過ごすことができ、ぼくは上のベッドを予約しつつも下のベッドで穏やかに過ごしていた。
そしてベッドで驚いたことは、各ベッドにひとつずつ充電差込口が用意されていることだった!なんということだろう!値段の高い2等車では車両に2箇所しかなかった充電器差込口が3等車ではすべての人々に満遍なく行き渡っているのだ!これは画期的であり、すべては車両が新しいことに起因すると言えるだろう。
そしてなんとこの3等車のトイレも暖かで快適だった。2等車のように寒くないのだ。そして新しくて広々としており清潔な雰囲気もあり使いやすい。トイレに関しても3等車の圧勝だった。これも新しい車両のおかげだろう。
机の位置や使い方は2等車と変わりはない。給湯器も同様だが、3等車の方が新しく使いやすかったが、給湯器なんて使いやすかろうが使いにくかろうがお湯が出ればそれでよかろう。Wi-Fiがない点も、シャワーがない点も同じである。
そしてこの3等車、ドアがないので気持ち的に開放感がある。ドアがあり安全性が高いという点が我々外国人が2等車に乗るのが無難と言われている所以であるようだが、ぼくにとってはこのドアが閉鎖的でやや重苦しい雰囲気を醸し出していた。3等車では開放的に車両全体で空気よく通っており、また乗客たちのコミュニケーションも盛んである。ちょっと軽く話しかけたり話しかけられたりして、ロシア語しか話さないロシアを生きる庶民の人々と憩いの時を過ごすことこそがよい経験であり、シベリア鉄道の旅の醍醐味であると言えよう。もちろん2等車でもそのような素晴らしい経験をたくさんしたが、どうしてもドアがある分、接することのできる人々が限られてくる傾向があったのだ。
さて、気になる盗難面の心配であるが、まったくそのような心配はなかったとぼくは感じた。それゆえにトイレに行く時などは、カメラやiPadやiPhoneをベッドに置き去りにしていたが、まったく問題はなかった。というのも、ベッドの周りの人々と適度に会話し、そこに交友関係が生まれていたので、おかしなことをする人がいても彼らが見守っていてくれるだろうという信頼感があったのだ。そして同様に多くの乗客は、自分の電子機器などを置きっぱなしにしている傾向があった。
・車両の中の小さな倫理とロシアの恵み
海外で自分の大切なものを置きっぱなしにするなんて平和ボケした日本人らしい間抜けな行動だと批判めいた意見もあるかもしれないが、ぼくは自然とロシアの大地に生きる人々を信用してしまったのだ。そうとしか言いようがない。たしかに異国の地でそのような行動を起こすとは自分でも意外だったが、言葉にできない何かあたたかな信頼感を彼らに抱いたことは否定できなかった。その信頼感はシベリア鉄道の旅の中で、シベリアに生きる多くのロシアの人々の素朴な心に触れたからこそ生まれたものに他ならない。
その車両の中には、厳しい寒さを超えて生きる大地の人々の倫理があった。その人々と会話し、コミュニケーションを取り、与えられ与え合い、その先に車両の中は小さな倫理で満たされていた。それは人間ならば本来誰もが心の中に保っているものであり、そこには盗むという悪や奪うという欲望が入り込む余地はなかった。もしも車両という小さな倫理の空間でそのような無法が生じたならば、誰かが咎めてくれるだろう、誰かが守ってくれるだろう、そう思って疑わない確信がぼくの心に広がっていた。
異国の地にて、自分のものを奪われないようにすることは何より重要である。そのためにはなるべく疑わなくてはならない。本当は善良なものでさえ、少しでも疑わしいならば突き放さなければならない。怯えなければならない。本来のそのような環境の中で、ロシアの大地の人々はぼくに信じるということをゆるしてくれた。これはロシアの旅の恵みであり、ぼくはそれを受け取ったことを誇りに思う。
・まとめ/総じて3等車が快適だった
このように書いたが、普通に心配な人はベッドを離れるときにきちんと大切なものを全部持っていけば問題ないだろう。ぼくの場合は置いていっても全然盗られなかったし、他の乗客も置いていっていたからそんな“雰囲気”だったよという話である。置いていっても盗られないのだから、きちんと自分の身に携帯していれば盗難なんて起こるはずもないというのが、ぼくの感じた3等車の雰囲気である。
そしてぼくの中では、3等車の方が断然快適だったと言えよう。これは新しい車両だったというのが大きかったかもしれない。広々とした新しく綺麗なあたたかいトイレ、すべての人々に設けられた充電、開放的でリラックスできる雰囲気、人々との気軽な交流、そして何より安価な点で3等車は非常にコストパフォーマンスのよい経験だった。
本来ならば、2等車は3等車の2倍ほどの値段がするのだから、2等車の方が総じて快適だったという話でないと困るのだ。2等車の方が断然快適だ、だけど値段が高い、さて安いけどあんまり快適じゃない3等車とどちらにしようといって悩むのが通常なのに、3等車の方が快適でさらに半額というならば迷いようもなくなってしまうだろう。ぼくは次にシベリア鉄道の旅をする際もきっと3等車を選ぶに違いない。しかし、今度は極度に狭い上のベッドではなく、快適な下のベッドを予約して。
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