フリーランス医師や看護師が絶対知っておくべきお金の法律知識3選
・フリーランス医師も法律の知識を備えておくことが重要
・労働基準法第26条を知り、休業手当を6割以上しっかりもらおう
・労働基準法第37条第1項を知り、8時間以降は割増された時給をもらおう
・民法第623条を知り、雇用契約が結ばれる条件を把握しよう
目次
・フリーランス医師も法律の知識を備えておくことが重要
医師は医学の専門家であって、法律の専門家ではない。それゆえに法律の知識については疎いのが現実である。しかし病院にも医局にも属さないフリーランスの医師としてコロナワクチンのスポットバイトのみで生計を立てることを通して、ぼくはたとえ医師であっても法律的知識を熟知しておく重要性を痛感させられた。法律について知っておくことは、自分とお金を守ることに直接つながるからだ。
今回の記事ではぼくがフリーランスの医師として働いていて、実際にこれは絶対に知っておくべきだとか非常に便利で有用だったと感じた法律を3つ紹介しようと思う。医師が専門外である法律についてあらゆる知識を習得することは困難だとしても、自分が働いたり生きていく上で重要になってくる法律くらいはしっかりと把握しておきたい。
・労働基準法第26条を知り、休業手当を6割以上しっかりもらおう
まず最初に紹介するのは「労働基準法第26条」だ。これは休業手当という、スポットバイトを駆使して生き抜くフリーランス医師にとって最も重要な項目について定めた法律だ。この法律を知っているか知らないかでQOVL(Quolity Of Vaccine Life=ワクチンバイト生活の質)は大きく違ってくることだろう。なぜならコロナワクチンバイトはその性質上、案件が確定していても直前にキャンセルされることが多々あるからだ。そのようなシフトカットの災難に遭ってしまった時、ぼくたちがどのように対処すべきかは労働基準法第26条が教えてくれる。労働基準法第26条の具体的な内容は以下の通りだ。
つまり確定していた案件が雇用主側の都合で勝手にキャンセルされてしまった場合には、雇用主は本来出すはずだった給与の6割以上を休業手当としてきっちり支払わなければならないと、この法律で定められているのだ。フリーランス医師の労働スタイルでは直前のシフトカットが決して珍しいことではないので、そんな時に労働基準法第26条はぼくたちをしっかり守ってくれ6割以上の休業手当を支払うよう雇用主に命じてくれる。
しかし以下の記事でも紹介している通り、大阪市や兵庫県、八王子市などのように労働基準法第26条を無視して医師に6割以上の休業手当を支払おうとしない雇用主に出くわすことは決して稀ではない。行政でさえ法律通りの休業手当を支払わないとは、どうせ医師は法律のことなど知らないだろうと見くびられているのだろうか。しかしそのような場合でも労働基準法第26条という具体的な法律名を明確に提示しながら地道に交渉すれば、きちんと6割以上の休業手当を支払ってくれるようになることがほとんどだ。労働基準法第26条はまさにぼくたちが適切な金額の休業手当をもらい受けるための頼りになる印籠だったのだ。
・労働基準法第37条第1項を知り、8時間以降は割増された時給をもらおう
次に紹介するのもお金に関する重要な法律だ。「労働基準法第37条第1項」では8時間を超える労働に関して、本来の金額の25〜50%が割増された時給を支払わなければならないと定められている。労働基準法第37条第1項の内容は以下の通りだ。
ぼくたちフリーランス医師のコロナワクチンバイトは長時間に及ぶ場合があり、1日に8時間以上となることも決して珍しい話ではない。そんな時には8時間を超えた分の時給がきちんと労働基準法第37条第1項に即した割増賃金になっているかを必ず確認しよう。メディカル・コンシェルジュのようにしっかりと法律を守った時給を医師に支払おうと意識している医師派遣会社ならば問題ないが、たまに8時間を超えても同じ時給で働かせようとする違法なクリニックを紹介してくる会社も存在するので注意が必要だ。
ぼくたちが法律について何も知らない無知な医師ならば、8時間を超えて同じ時給で働かされていたとしても何の疑問も問題も感じることなく、違法に搾取されていることすら気づかずに労働を続けるだろう。しかし労働基準法第37条第1項の知識を得たぼくたちは法律を守った時給を支払うように雇用主に要求することもできるし、それによって法的にふさわしい自分の時給を守り抜くことができる。法律は思った以上にぼくたち自身とぼくたちのお金をしっかり守ってくれるのだと、ぼくはフリーランスの医師として働いて初めて気がついた。
・民法第623条を知り、雇用契約が結ばれる条件を把握しよう
ぼくがコロナワクチンバイトを直前にシフトカットされた時に、まだ契約書にサインしていないから雇用契約を結んでいることにはならないので、休業手当は支払わないと言われたことがあった。しかし勤務は確定していたのに、雇用契約が成立していないなんてそんな理屈が通るのだろうか。大きな違和感を覚えたぼくは雇用契約締結の条件が記された法律を探し出した。それが以下の民法第623条だ。
これはすなわち契約書なんか交わしていなくても、口約束でも文章でも何でもいいから“雇用の約束”をした時点で、きちんと雇用契約は成立しているということだ。
上記で紹介した2つの労働基準法が適応されるためには、雇用契約が結ばれている必要がある。もしも雇用主から契約書にサインする前だから雇用契約はまだ成立しておらず、休業手当を支払わないと主張されても泣き寝りする必要はない。民法第623条が言う通り、契約書なんて交わしていなくても勤務が確定している時点で、そこにはもう立派な雇用契約が締結されているのだ。このように雇用契約が結ばれる条件をしっかりと把握し、労働基準法を的確に適応させることで、より一層自分と自分のお金を守ることに繋がるだろう。