しっかりと法律的知識を身につけて定められた休業手当をもらおう!
・休業手当は本来の給料の何割もらえるの?
・休業手当を出してもらえない場合の対策法
・休業手当を出してもらえない条件とは?
フリーランス医師が知るべきお金の法律知識!労働基準法第26条を活用して休業手当を6割以上しっかりもらおう
・フリーランス医師も法律の知識を備えておくことが重要
・労働基準法第26条で休業手当は6割以上と定められていることを知った大阪市案件の一例
・労働基準法第26条を活用して休業手当6割以上を受け取ることに成功した兵庫県案件の一例
・労働基準法第26条を活用して不当な休業手当を増額させた八王子市の一例
・自分のために徹底的に生きることが、やがて他人を救済することにつながる
目次
・フリーランス医師も法律の知識を備えておくことが重要
医師は医学の専門家であって、法律の専門家ではない。それゆえに法律の知識については疎いのが現実である。しかし病院にも医局にも属さないフリーランスの医師としてスポットバイトのみで生計を立てることを通して、ぼくはたとえ医師であっても法律的知識を熟知しておく重要性を痛感させられた。法律について知っておくことは、自分とお金を守ることに直接つながるからだ。
今回の記事ではぼくが医師としてコロナワクチンバイトに従事し、法律的な知識を知っていて本当によかったと感じた具体的な事例を見ていこう。
・労働基準法第26条で休業手当は6割以上と定められていることを知った大阪市案件の一例
まず最初の事例は、ぼくが大阪市のコロナワクチンバイトに従事していた時の出来事だ。大阪市の2021年7月のコロナワクチンバイト案件が15日間確定していたにも関わらず、ワクチンの供給が遅れているという理由で、15日間のうち7日間のシフトが直前で強制的に削られてしまった。しかもそれによる休業手当は一切支払われないという。
医師としてのスポットバイトをしたことがなかったぼくはそういうこともあるのか、バイトなんて不安定だから仕方ないのかと一旦は諦めていた。しかしよくよく考えてみたらこれはおかしなことだ。ぼくたち医師は大阪市の勤務のためにわざわざその日に他の予定を入れずに待っていたというのに、急に仕事がなくなったからと言って何のお金も支払われることなく勝手にシフトカットされることなんてあってもいいのだろうか。もしもそんな無法が許されるとしたならばアルバイトをしている人はいつでも無料でシフトカットされ放題となり、社会は混乱に陥るだろう。
調べてみると休業手当に関することは、きちんと法律で定められているということだった。労働基準法第26条には休業手当について次のように定められている。
つまり勤務が確定した後であれば直前にシフトカットされることがあっても、本来もらえるはずだった給料の6割以上は休業手当としてきちんと支払ってもらえると法律で定められているということだ。そうするとシフトカットしたにも関わらず医師に1円の休業手当も支払わない大阪市の対応には違法性があると判断せざるを得ない。ぼくは労働基準監督署へと赴き、大阪市が労働基準法第26条に違反している可能性を相談し、結果的にはきちんと休業手当を支払うよう労働基準監督署から大阪市に指導してくれることになった。
しかし結局大阪市はぼくに休業手当を支払うことはなかった。大阪市の言い分としては、医師のコロナワクチンバイトは雇用契約ではなく業務委託契約だから労働基準法第26条は適応されず、6割以上の休業手当も支払う必要はないということだった。労働基準法とは雇用契約が締結された場合のみに機能する法律であり、業務委託契約の場合には効力を発揮しないのだという。その業務が雇用契約か業務委託契約かを判断する基準には複数の項目があり、すべての項目を吟味した上で総合的に判断される。ぼくが大阪市のコロナワクチンバイトの業務内容をそれらの項目に照らし合わせて判断したところ、どう考えても業務委託契約ではなく雇用契約だと思うのだが、労働基準監督署の上位組織である大阪労働局が、大阪市の医師コロナワクチンバイトは業務委託契約的だと判断したことにより労働基準法は適応されず、休業手当は支払われないことになった。
休業手当が支払われることはなかったが、この大阪市の休業手当未払い事件はぼくに大きな意味と痕跡を残した。ひとつは労働基準法第26条という法律的知識を得られたことだ。今回は業務委託契約的だということで労働基準法第26条は適応されず休業手当をもらうことはできなかったが、今後のコロナワクチンバイトで雇用契約として雇われた際にシフトカットされたならば、間違いなく労働基準法第26条の知識が役立つだろう。また大阪市が医師のコロナワクチンバイトを業務委託契約だと言い、大阪労働局という権威ある機関もそれを公的に認めたことから、ぼくが大阪市からもらう賃金は「給与」ではなく「報酬」となり、開業届を出せば確定申告時に青色申告ができるので、青色申告特別控除や経費を使った節税が可能となった。もしかしたらこちらの節税効果の方が、休業手当でもらう金額よりも大きかったかもしれない。
・労働基準法第26条を活用して休業手当6割以上を受け取ることに成功した兵庫県案件の一例
大阪市案件で得た労働基準法第26条の法律的知識が活用されるのに、そう長く時間はかからなかった。フリーランス医師のコロナワクチンバイトには、シフトカット事件がつきものなのだ。しかしそのような場合でも、きちんとした労働基準法第26条の知識を備えておけば慌てることなく適切に対処できる。
次のコロナワクチンバイトのシフトカットは兵庫県西宮会場で起こった。大阪市の時と同様に、確定していた勤務が直前になって急にキャンセルとなったのだ。その理由は会場が休館日だったのに医師を募集してしまったという何とも間抜けなものだったが、この時も休業手当は支払われないことが明記されていた。しかし今回の兵庫県案件の場合は「雇用契約」であることが案件の文章の中にはっきりと書かれていたので、大阪市のように「業務委託契約」だからという無茶苦茶な理由で労働基準法第26条が適応されないなんてことはあり得ない。ぼくは早速メッセージで、労働基準法第26条に則りきちんと6割以上の休業手当を支払ってもらえるよう要求した。
紆余曲折あったが結果的には労働基準法第26条がそのパワーを発揮し、兵庫県案件ではきちんと6割以上の休業手当を受け取ることができた。やっぱり法律的知識は自分とお金を守る強力なツールになるんだと再認識させられた。もしも大阪市での休業手当未払い事件がなかったら、ぼくは労働基準法第26条の知識を全く知らずに泣き寝入りするか途方に暮れていただろう。そう考えれば休業手当はもらえなかったものの大阪市でのトラブルも全く無駄だということはなく、むしろ恵みだったという前向きな考え方も可能だった。
・労働基準法第26条を活用して不当な休業手当を増額させた八王子市の一例
労働基準法第26条の知識はまだまだ役に立った。最後は東京都八王子市のコロナワクチンバイトに関する事例だ。例によって勤務が確定していたのに直前になってシフトのキャンセルの連絡が入った。今回の場合は「5割の休業手当を支払う」ことが明記されていたので、1円も休業手当を支払わなかった厚顔無恥な大阪市や、最終的には休業手当を支払ってくれたものの最初は全く払うつもりのなかった兵庫県に比べれば格段にマシなレベルだった。
もしもぼくに法律的知識がなかったならば「働きもしないのにお給料の5割も支払ってくれるなんてなんとありがたいことだろう!」と八王子市に感謝したに違いない。しかし今のぼくはしっかりとした労働基準法第26条の知識を持ち合わせているので、油断することなく「労働基準法第26条で6割以上の休業手当を支払うことが決まっているのできちんと6割支払ってください」と返信し、結果的に6割の休業手当を受け取ることに成功した。
・自分のために徹底的に生きることが、やがて他人を救済することにつながる
東京都八王子市では医師だけではなく看護師も、休業手当がきちんと支払われないトラブルで悩んでいた。コロナワクチンバイトで看護師が大量にシフトカットされたが、その休業手当は本来もらうべき給料の6割には到底届かない金額だというのだった。看護師さんたちは労働基準法について何も知らず、どうすればいいのかわからないのでほぼ泣き寝入りという状態だった。
ぼくは法律の伝道師として看護師さんたちに労働基準法第26条の知識を伝授し、法律の知識に基づいてきちんと抗議すること、それでももしも相手が休業手当を支払う気がなさそうだったら労働基準監督署に相談すると明言することも効果的であるとアドバイスした。
ぼくのアドバイスは功を奏し、シフトカットされた看護師さんたちは全員6割以上の休業手当をもらえることになったと、後から聞かされて非常に感謝された。ぼくは自分自身とお金を守るためにただ法律的知識を身につけただけだったが、徹底的に自分のために生き抜いていると、回り回ってやがては他人の役に立ち、多くの人々を救うことになるのだという悟りを得た。情けは人のためならずというが、その逆もまた真である。
このように考えると労働基準法第26条の知識はスポットバイトで活躍するフリーランス医師のみならず、アルバイトをするすべての人々にとっての必須知識と言えるだろう。日本というこの法治国家において法律がぼくたちを適切に守ってくれるというのなら、躊躇することなく法律を利用し、自分自身がそして全ての人々が快適に生きるための手段とすべきである。
・休業手当を出してもらえない場合には法律に則った論理的な主張を展開すべき。「労働基準法第26条」という具体的な法律名を出すことで説得力は高まる。もしも相手が聞き入れる様子がないようなら「労働基準監督署に相談するつもりがある」というワードを出すと非常に効果的。聞き入れられなければ実際に労働基準監督署へ相談しに行く度胸と行動力も必要。
・雇用契約ではなく業務委託契約を締結している場合、労働基準法第26条は適応されないので休業手当をもらうのは難しい。
・フリーランス医師にとって重要な法律知識に関するその他の記事はこちら!
・フリーランス医師に関するその他の記事はこちら!
休業手当はきちんと支払われるのかな?