とてもとても素敵なお店でした。
釧路のレトロで素敵な「仏蘭西茶館」でチョコレートパフェを食べてきた
・シメパフェへの憧れ
・仏蘭西茶館のレトロで素敵な店内
・パフェは4次元の複雑構造
・仏蘭西茶館写真集
・シメパフェへの憧れ
北海道には“シメパフェ”という文化があるらしい。お酒を飲んだ後など、最後のシメにパフェを食べるというのだ。最初それを北海道の旅行雑誌で見た時、そんなの見たことも聞いたこともないし、どうせまた流行っていると言って無理矢理に流行らせたいという、いつもの大きな権力の戦略なだけだろうとあまり気にしていなかったが、北海道の友達の話によると本当に盛んな文化なのだそうだ。
やはりそのような文化的なものは札幌に多く、札幌では本当にたくさんの種類のパフェを食べられるようだが、ぼくは道東の釧路にいるときに偶然グーグルマップでパフェの食べられそうなお店を発見した。「仏蘭西茶館」というお店だが、それをグーグルマップで発見した夏の旅行時には時間がなくて行くことができなかった。
今回冬の北海道旅行で、釧路で宿泊する時間もあったので、ぜひ仏蘭西茶館へ行ってみようと友人のてらちゃんに提案し、夕食を食べた後にふたりでそこを訪れた。昨日記事を書いたスープカレーの奥芝商店も地下にあったが、こちらの仏蘭西茶館も地下深くの隠れ家のような場所だった。
地下へ潜っていくと同時に、時間から取り残されたようなとても懐かしいような気持ちを生じさせる。なんだか昭和の地下の街並みというものはこのような感じだったのではないかと思わせられる。それがとても心地よいように自然と感じられた。
「仏蘭西茶館と」いう看板もさまざまな濃厚な色彩が入り混じっており、昔的なレトロな雰囲気を感じさせる。そしてそのときに感じられたそこはかとないレトロな雰囲気は、店内に入っても引き継がれていくのである。
・仏蘭西茶館のレトロで素敵な店内
店内は本当に何かの映画の中にでも出てきそうな、お洒落でレトロで趣深い空間が広がっていた。中は21時くらいだというのにほぼ満員で、観光客というよりは地元の人々で賑わっているような印象である。よその人間から聞くとちょっと不思議な北海道弁が店内に飛び交っていて、旅をしている情緒が心に広がってくる。
余談だが、北海道出身の中島みゆきもラジオやコンサートなどで聞く限り不思議な訛りをしており、ぼくはそれが北海道弁だと思い込んでいたが、北海道に中島みゆきのような話し方をする人を全然見かけない。いったい中島みゆきの喋り方はどこの訛りなのだろうか。謎である。一時東北にも住んだりしていたらしいが、ほとんど北海度に住んでいたわけだし、北海道の中でも訛りが違ったりするのだろうか。帯広などに行くとあのような訛りなのだろうか。
お店のおばちゃんも可愛らしい北海道訛りで素敵だった。このおばちゃんはとても親切で、忙しそうなのにぼくたちの写真を撮ってくれた。おばちゃんの服装もとても懐かしいレトロな感じがして、その優しさとその親切さに感動さえした。前掛けのエプロンが昭和っぽくてとても素敵だった。お店のおじちゃんも人柄のよさが滲み出ている。夫婦でずっとこの店を昔から営んできたのだろうか。
後ろの席の40〜50歳くらいのお客のおじさんが、高校の時代からこの店に通っていたという話が聞こえてきたので、この店はきっとものすごく歴史の長い店なのだろう。レトロな内装でレトロさを演出しているわけではなく、本当に歴史がある古き良きレトロな店が出来上がっているなんてとても素敵だ。
この店だけに限らず、釧路の街はレトロな雰囲気であふれている。街自体は非常に整然としていて美しく、むしろ最近になってできたのだろうという雰囲気を感じさせるが、その街自体はレトロなものであふれているというのが、なんだか面白い違和感やギャップを感じさせる。
この店も置いているものから、照明、内装まで、どこか懐かしくむしろ生まれる前を思い起こさせるようでもある。たまにあることだが、生まれてからの時代のものよりも生まれる前の時代のものの方が懐かしくとてつもない親しみを覚えてしまうのはどうしてだろううか。
ぼくたちはこの店で700円のパフェを注文した。
・パフェは4次元の複雑構造
このパフェもなんとも昔懐かしいという感じで情緒深かった。外見も味もレトロで「いとをかし」と思わず言ってしまいそうになる。このパフェは底の方までバニラのアイスクリームがぎっしりと詰まっていてとても濃厚だった。この下まで濃厚に詰まっているというのもなんだか古風な感じがする。
パフェというものは4次元構造の非常に複雑な食べ物だと感じる。ただ単なるこの物質世界の3次元とは別に、食べて行くに従って移り変わるという時間の中での芸術性も併せ持っているからだ。3次元的には縦長の構造であるから、上から下へと食べて行くにあたりその味の推移にも注目が集まる。
ぼくの中では、上の部分が濃厚なバランスで保たれており、下に行けば行くほどにあっさりとしてさやわかな味付けになっていくのが好みだ。上の濃厚な部分を食べている間に糖分は十分に摂取されるので、時間的に下を食べる頃になるとさっぱりとしたものが食べたくなる。そしてそのような情緒を分かっているパフェこそ極上だと感じるが、残念ながらそのように情緒深い洗練されたパフェは世の中に数少ないように感じる。
ぼくの中の少ないパフェの経験からすると、そのように洗練されているパフェは京都に多い気がする。そのような種類のパフェはきちんと若者の感性に合わせた作り方をされており、時代に敏感な印象も受ける。逆にこの茶館のパフェは昔ながらの果てしなく濃厚なものだったので、ぼくの感性からはややズレていたが、そのような濃厚なものが好きな人はとても気にいるだろうと思う。
ともかくこのレトロな空間で時の流れと歴史に想いを馳せながら、お店のおばちゃんとおじちゃんとお話するだけでもなんだか幸せな気分になれる、とても素敵で稀有なカフェだった。釧路に来たらぜひまた立ち寄りたいと思う。
・仏蘭西茶館写真集