富士宮市のタクシーの運転手さんに「男前証明書」をもらった!!!!!
男前証明書をゲット!静岡県富士宮市が富士山の見えない日にしてくれる木花咲耶姫にちなんだ計らいが粋だった
・富士山の見える富士宮市で静岡暮らしをしてみよう
・富士宮市から見える日々一刻と変わる富士山の美しい姿に畏怖の念を抱いた
・富士宮市では富士山の見えない日に「男前証明書」をもらうことができた
・絶世の美女コノハナサクヤヒメが富士山の守護神として祀られた理由
・「男前証明書」がもらえる条件ともらえる場所
目次
・富士山の見える富士宮市で静岡暮らしをしてみよう
ぼくは今どこの病院にも組織にも属さないフリーランスの医師として、コロナワクチンバイトをしながら生計を立てている。コロナワクチンバイトのいいところはスポットバイトの案件をゲットすれば日本全国どこでも自由に働けるということだ。案件の多い東京や大阪では交通費や宿泊費が出ないことも多いがコロナワクチンバイトは1日で10万円以上稼げることが普通なので、連勤すれば交通費と宿泊費を自分で払っても十分に利益が出る算段だった。
そんなコロナワクチンバイトに明け暮れる日々の中で、珍しいことに静岡県に泊まり込みで働かないかという提案のメールがメディカル・コンシェルジュ(MC)から送られてきた。なんと交通費も宿泊費も全額出すからぜひコロナワクチンバイトのために静岡県富士宮市に来てほしい、勤務のない日も宿泊費を普段してくれるので富士山の麓の町でまるで暮らすように働けるということだった。旅人のぼくは東京や大阪などの都会だけではなく、ぜひ日本各地のよく知らない土地へも赴き労働してみたいと熱望していたので、これは絶好の機会とばかりに静岡県富士宮市案件に応募した。
話はトントンと進み、結局2022年3月に富士宮市案件の3日連勤を4回、つまり12日間勤務することになった。時給は17000円で日給は10万円をちょっと超えるくらいだったが、富士山を毎日見られるし12日間も案件をまとめてくれたのでとてもいい契約だった。宿泊費は出してくれるらしいので仕事のない日は富士宮市に滞在して観光などしてもよかったが、せっかくコロナワクチンバイトの案件が他にもあるのに休むのは勿体ないと感じ、結局は案件があるその都度大阪や東京から新幹線で富士宮市まで移動することになった。3月は富士山を見ながら静岡暮らしができる!これこそ旅するように労働するフリーランス医師の醍醐味だと感じられた。
・富士宮市から見える日々一刻と変わる富士山の美しい姿に畏怖の念を抱いた
富士宮市案件のワクチン接種会場は車で行かないと辿り着けないような場所に位置していたので、毎日宿からタクシーで通うことになった。
毎日巨大な富士山を眺めながら通勤できるなんて、関西や沖縄で生まれ育ってきたぼくとしては異世界の風景だったのでとても新鮮で感動的だった。しかしやはり富士山は自然のものなので、見える日もあれば雲で見えない日もあり、ちょっとだけ見える日もあればその美しい全体像が見渡せる日もあり、天候や運によるところが大きかった。晴れているからといって見えるとは限らないし、どんより曇っていても富士山だけははっきり見える日もあったので、全く予想できないのが富士山鑑賞の面白さだと感じられた。毎日同じ富士山が単調に見えるのだろうと予想していたけれど、日によって見えている部分も違えば、山頂にある雪の量やそれによる姿形も異なるので、富士山とはなんて奥深く計り知れないものなのだろうと畏敬の念を抱いた。古代より自然崇拝の対象となり、またさまざまな芸術作品のテーマともなり、日本人のその厚い信仰心が富士山を世界遺産として認めさせたことも納得のいく成り行きだと感じられた。
通勤時にはいつもタクシーの窓から今日の富士山はどんな風かを確認し、運転手さんと富士山について話したりしていた。面白かったのは富士宮案件の最終勤務日、ワクチン接種会場から新幹線の新富士駅までタクシーを走らせていたときのことだった。その日は曇りで昼間のうちは富士山が朧げながらに全体が見渡せたのだが、ワクチン業務が終わった頃にはもうその姿が全く見えなくなってしまっていた。最後の最後には富士山が見られなかったなぁ、まぁ昼間は見えたからいいかなどとタクシーの後部座席でぼんやり考えていると、タクシーの運転手さんが何か不思議なものを手渡してくれた。
・富士宮市では富士山の見えない日に「男前証明書」をもらうことができた
美しい富士山の写真のプリントされたハガキの裏には「男前証明書」と大きく書かれていて、なんだろうこれはとおかしく思っていたが、その説明書きを読んで納得がいった。その説明書きには次のように書かれていた。
男前証明書
今日は、日本一の美女である富士山が恥ずかしがり、その姿を隠してしまいました。ここにあなたが男前であることを証明いたします。しばらくすると、富士山のお化粧が仕上がります。またのお越しをお待ちしております。
なんとこの「男前証明書」は、せっかく富士宮市を訪れたというのに富士山を見ることができずに残念に思っている観光客に対して、「あなたが男前だから富士山の女神が恥ずかしがって姿を隠してしまったんだよ」と前向きに慰めてくれる証明書だったのだ!なんという発想の転換!確かに富士宮市の観光の最大の目玉といえば富士山なので、天候の関係で富士山が見えないとなると誰もがガッカリしてしまうことだろう。しかしその落胆の気持ちを「あなたが男前である」というポジティブな理由を押し付けることによって逆に嬉しい気持ちにしてしまおうとする心意気は無理矢理ながらも何となく粋な感じがする。この「男前証明書」をもらうことにより、富士宮で富士山が見えなかった残念な思い出が、ちょっとでも明るく前向きな記憶に変わるだろう。そしてまた富士宮市を訪れようと思わせるきっかけになるかもしれない。
・絶世の美女コノハナサクヤヒメが富士山の守護神として祀られた理由
富士山の守り神は「コノハナサクヤヒメ(木花咲耶姫)」だという。
コノハナサクヤヒメと言えば日本神話に出てくる絶世の美女だ。天皇のご先祖様のニニギノミコトは、神様の国である高天原から宮崎県の高千穂へ天下った際にコノハナサクヤヒメに巡り会う。絶世の美女であるコノハナサクヤヒメを見たニニギノミコトは「まぐわひせむ(性交しよう)」と結婚を申し込み、コノハナサクヤヒメのお父さんは結婚に賛成したものの、なんと美しいコノハナサクヤヒメだけではなく不細工な姉のイワナガヒメまで一緒に送り込まれてしまう。不細工は要らないとイワナガヒメをお父さんまで送り返すと、お父さんは「娘を2人も送ったのは、コノハナサクヤヒメと共にいればあなたの子孫が木の花が咲き誇るように栄えるように、そしてイワナガヒメと共にいればあなたの命が岩のように永遠に続くようにという理由だったのに、イワナガヒメを返してコノハナサクヤヒメだけを残した今、あなたの命は花のように短くなるだろう」とその経緯を語り、それ以降天皇の寿命は神様の子孫である割には短くなってしまったのだという。
そんなコノハナサクヤヒメだが、ニニギノミコトとたった一夜の交わりだけで子供を設けたので、ニニギノミコトが本当に自分の子供なのか疑ってしまった。そこでコノハナサクヤヒメは「お腹の中にいるのがあなたの子供でないなら、無事に産まれてこないでしょう」と言い、出入口を全て塞いだ産屋に入りそこに火を放った。火が勢いよく燃え盛っている時に生まれたのが火照命(ほでりのみこと=海幸彦)、次に産まれたのが火が衰えるという意味の火須勢理命(ほすせりのみこと)、最後に火が鎮まるという意味の火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦)と、無事3人を産み終えたのでニニギノミコトの疑いは晴れた。この山幸彦はやがて今の天皇の血筋へと繋がっていく。
この火中出産神話によってコノハナサクヤヒメは火の難を避けることができる火の神とされ、火山鎮火の祈りを込めて噴火を繰り返していた富士山に祀られたのだという。コノハナサクヤヒメの産んだ子の一人に火を制御する水神の性格を持つ海幸彦がいることも関係している可能性がある。山の神である父オオヤマツミノカミから富士山を譲られ、東日本一帯を守護するようになったという話も伝わっているという。この「男前証明書」に書いてある「日本一の美女である富士山」というのは、富士山の守護神であり絶世の美女だったコノハナサクヤヒメのことを指していたのだろう。
・「男前証明書」がもらえる条件ともらえる場所
この「男前証明書」はどのようにすればもらえるのか全く謎だったが、調べてみると富士山が見えなかった日に新富士駅観光案内所でもらえるらしい。ぼくはなぜかタクシーの車内でもらってしまったが、このようにタクシーの運転手がたまたま「男前証明書」を所持している場合、運よく新富士駅観光案内所以外でもらえることもあるのだろう。そもそもぼくは「男前証明書」の存在自体を知らなかったので、タクシーの車内でもらえて本当にラッキーだった。「男前証明書」の存在を知らなければ、新富士駅観光案内所で「男前証明書」をもらおうと思う気持ちすら当然起こるはずもない。きっとそのまま最後に富士山が見えなかったなぁと残念に思いながら富士宮市を去ってしまったに違いない。そう思うと「男前証明書」を持っているタクシーの運転手に当たったことは、12日間頑張って富士宮市で労働したぼくに対する富士山からの贈り物だったのかもしれない。
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