湯治という不思議な日本の文化に出会った。
湯治とは何か?秋田県小安峡温泉「旅館 多郎兵衛」で3食付きの格安滞在が可能だった
・毎週東京から東北の温泉旅行に出かけよう
・秋田県小安峡温泉「旅館 多郎兵衛」の湯治プランを予約した
・秘境にある「旅館 多郎兵衛」までの長い道のり
・「旅館 多郎兵衛」の中はこけしだらけ!
・「旅館 多郎兵衛」は落ち着いた和室
・湯治とは何かを「旅館 多郎兵衛」の食事から理解した
・特徴的な「旅館 多郎兵衛」の温泉たち
目次
・毎週東京から東北の温泉旅行に出かけよう
ぼくは今どこの病院にも組織にも属さないフリーランスの医師として、日本全国でコロナワクチンのスポットバイトをしながら生計を立てている。2021年6月末から大阪市でコロナワクチンバイトを開始し、そこからいくつかの医師派遣サイトに登録しスポットバイト案件を手に入れる術を身につけ、コロナワクチンバイトに従事しながら日本各地をさながら旅するように渡り歩き、もはや3年以上の月日が流れ去ってしまった。
この3年間を振り返ると、西日本は大阪を中心として兵庫県、奈良県、京都府、さらには広島県までコロナワクチンバイトをするために渡り歩いた、東日本は東京を中心として周辺の千葉県、埼玉県、神奈川県、茨城県はもちろんのこと、北関東の群馬県や栃木県、さらには静岡県の富士山の絶景が見える街で1か月暮らしてみたり、愛知県では訪問のコロナワクチンバイトに挑戦したり、もはや本州に別れを告げ北海道の東の果て・釧路まで飛び出したこともあった。まるで労働をしながら日本一周の旅でもしているようだった。
そんなぼくのコロナワクチンバイトの最後の会場は東京都庁45階展望台、まさに東京の中心・日本の真ん中の最上階と呼ぶべき場所で行われることが決まった。しかし最後まで残った日本で唯一の大規模接種会場ということもあり、都庁のワクチンは水曜日~土曜日しか開催されなかった。関西在住で東京に家がないぼくは空白の日曜日~火曜日をどうしようかと迷ったが、どうせなら東京を拠点に暮らしている今しかできないことをやろうと思い立ち、毎週日曜日~火曜日は2泊3日の東北温泉旅行に出かけることにした。
関西に住んでいると東北地方の温泉は遠くてなかなか行けないので非常にいい機会だと思ったのだ。しかも1~3月の真冬の東北の秘湯なんて、日本人のぼくにとっては何となく憧れだった。こうして3か月に及ぶ、毎週東北温泉の旅が始まった。宿を選ぶ際には「秘湯を守る会」や「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」を大いに参考にした。
・秋田県小安峡温泉「旅館 多郎兵衛」の湯治プランを予約した
今回ぼくが旅に出たのは秋田県小安峡温泉にある「旅館 多郎兵衛」という旅館だった。じゃらんから予約し、朝食・昼食・夕食付きの2泊3日で18000円だったところを割引クーポンを駆使して3000円引きの15000円で泊まることができた。3食付きで15000円というのはかなりお得だったのではないだろうか。というか朝食・夕食付きという温泉宿は数多くあれど、3食付きというのはかなり珍しい。実際にぼくも3食付きなんて人生で初めて見た気がする。
この「旅館 多郎兵衛」は「秘湯を守る会」や「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に載っていたわけでもなかったが、じゃらんでたまたま格安な旅館を見つけてしかもレビューもかなり高評価だったので行ってみることにした。気になるのはぼくの格安滞在には「☆ゆったり湯治プラン☆」という文言が付け加えられていたことだった。湯治って一体何だろうと心の中で気になってはいたが、別にそんなに重要なことではないだろうと思い、その疑問を放置したまま小安峡温泉へと旅立った。
小安峡温泉と言えばぼくの日本一周・車中泊の旅の中でも上位トップに入るくらいに思い出深い場所だ。なぜなら流れ落ちて来る滝の水が全部温泉のお湯であるという信じられないくらいダイナミックなスケールの素晴らしすぎる無料温泉「河原毛大湯滝」に巡り会えたからだ。車中泊の旅だったので当時は小安峡温泉に宿泊することはなかったが、真横から激しく噴き出してくる珍しい間欠泉とか道の駅で買った秋の味覚が美味しい格安のスイートポテトなどいい思い出しかない場所だった。
さらに「河原毛大湯滝」を堪能した後で立ち寄った秋田県湯沢市のとんかつ屋さんで何とおじちゃんとおばちゃんの家に泊めてもらったりして、そんな出来事は長かった日本一周の旅の中でここだけだったのでいい意味でかなり印象に残っている。今回は行ったことのない真冬の小安峡温泉と出向くことになるが、前回訪れた秋の始まりとはやはりかなり様子が異なるのだろうか。
・秘境にある「旅館 多郎兵衛」までの長い道のり
「旅館 多郎兵衛」の無料送迎バスは湯沢駅から発着することになっていた。まずは東京駅から新幹線のつばさに乗って新庄駅まで行き、そこからJR奥羽本線に乗って湯沢駅へと向かった。これまでの人生で乗ったこともない路線で、新庄駅から湯沢駅までの小さなワンマン電車の窓からは一面の雪景色が見えたりして、まさに不思議な辺境に迷い込んだという感じで冒険心が駆り立てられた。
湯沢駅から「旅館 多郎兵衛」までは送迎バスで40分ほどかかった。やはり小安峡は秘境なのだ。真冬の小安峡温泉はやはり雪深くその白銀の世界に圧倒されたが、地元の人によると今年はかなり雪が少ないのだという。これで雪が少ないだなんて東北地方の通常の雪の量はどうなっているのだろう。この前に来た秋とは全く違った風景が広がっていたので驚きを隠すことができなかった。
散歩をしていると雪かきをするために屋根に上っているおじさんを見かけたりして、雪国に住んでいるとやらなければならない危険な仕事が増えて大変なのかなと思ったりした。
真横から噴き出す珍しい間欠泉を今回も見られるかと思ったが、雪深い真冬には間欠泉への階段が雪で閉ざされているのではるか橋の上からその湯気を見下ろすしかなかった。真冬に小安峡にやって来てもできることは限られているようだ。実際に雪の中を散歩していても何もできることがなかったので、冬は温かな温泉でゆっくりするのが一番いいようだ。
・「旅館 多郎兵衛」の中はこけしだらけ!
「旅館 多郎兵衛」はレトロな内装の中に無数にある、大小様々なこけしが何と言っても印象的だった。白銀の雪に染められた東北地方の中でこけしに囲まれると秘湯にやって来たという雰囲気が高まった。
・「旅館 多郎兵衛」は落ち着いた和室
「旅館 多郎兵衛」はこんな感じで落ち着いた和室だった。
・湯治とは何かを「旅館 多郎兵衛」の食事から理解した
「旅館 多郎兵衛」の朝食、昼食、夕食はこんな感じだった。
夕食は満腹になるというよりも腹八分になる量だった。しかしここが重要で、旅館のおばちゃんによると湯治というものはこういうものらしい。湯治とはその名の通り、ゆっくりと温泉に入ることにより体の疲れや病気などを癒そうという趣旨なのだが、その治療という観点から体に負担をかけないようにするために食事が控えめになっているということが多いそうだ。温泉旅館の食事といえば豪華な料理をイメージしてしまいがちになるが、湯治プランでは質素な料理となっていた。湯治とは基本的に長期間行うものらしく、金銭的負担をかけないために食事を控えめにして宿泊費を安く設定し、経済的に長く滞在しやすいようにするという側面もあるらしい。また深い雪に閉ざされる小安峡は訪れる人も少なくなるので、値段を安くして人を呼び込もうとする狙いもあるのだという。
湯治プランであっても品数は多く適度な量だったのでぼく的には満足だった。ご飯を固めたような冬のきりたんぽが秋田県らしい素敵な思い出になった。翌日の昼食には秋田名物の稲庭うどんが出てきたので、夕食が控えめでも空腹になるということはなかった。
・特徴的な「旅館 多郎兵衛」の温泉たち
「旅館 多郎兵衛」の温泉は大浴場が1つと、内湯が1つ、貸切風呂が1つと、露天風呂が1つあった。
特に大浴場は窓の形も美しく、不思議で神秘的な空間になっていた。泊まっている人が少ないのか大浴場であっても1人でゆっくりと過ごすことができた。
露天風呂は小さめだけれど、雪見もできて雪国の温泉ならではの体験が思い出に残った。
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