日本列島の古層の神!宿神(ミシャクジ)と包茎の関係性について【中沢新一「精霊の王」より】

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「宿神」という日本の古い神を知っていますか?

日本列島の古層の神!宿神と包茎の関係性について【中沢新一「精霊の王」より】

・異国へと広がり 祖国へと深まれ
・石の神「宿神」「シャグジ」とは何者か?
・能の最重要演目「翁」とはこれすなわち宿神のこと
・「宿神」=「翁」=「胞衣」の方程式
・ミシャグチを示すものとしての男根的石棒と女性器的扇
・包皮をまとったペニスは人類最古の幸福の象徴

・異国へと広がり 祖国へと深まれ

ぼくは現在、世界一周と日本一周を同時に行う「ミズイロノタビ」を実行している。そのテーマは「異国へと広がり 祖国へと深まる」ということ。軽率に異国をさすらったとて、言葉も通じず生活も知らぬ異国に大いに詳しくなれるはずがない。ぼくたちができることといえば畢竟、異国という鏡を通して祖国を深めることくらいではないだろうか。

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異国を深めることは楽しい。それは日本だけに焦点を当てて視野を狭く見つめて一生を終えるという意味ではなく、限りなく祖国を深めたところの極限には宇宙が広がり、祖国だけを見つめて深めていたはずなのに、矛盾するように世界全体、人類全体を見通していたという境地に他ならない。

ぼくが祖国をよく知るにおいてどうしても深めたい必要な知識があったので、学び復習したことをここで共有したいと思う。この記事に書く文章はそのほとんどが中沢新一の著作「精霊の王」から学びまとめたものである。共に祖国へと深まり沈みゆく感覚を共有できれば幸いである。

 

・石の神「宿神」「シャグジ」とは何者か?

「シャグジ」という石の神をご存知だろうか。この石の神は、日本列島にまだ国家もなく神社もなく神々の体型すら存在しなかった時代の精神の息吹を伝える「古層の神」の活動の、今に残されるわずかな痕跡を示している。それは神というよりもむしろ”精霊”と呼んだ方がいいような、とてつもない古さを秘めている。

かつてその精霊は列島のいたるところに生息し、地域ごとに少しずつ違った呼び名で呼ばれていた。シャグジ、ミシャグジ、シャクジン、シュクジン、シュクノカミ、シクジノカミなどがこの精霊の呼び名の一部であるが、柳田國男はその呼称全てに「サ音+ク音」の結合を見出した。この形をした音の結合は極めて古い日本語でものごとや世界の「境界」を意味するものだった。

シャクジは国家の管理する神々の体型に組み込まれたことがない。この精霊は地球的規模の普遍性を備えながら、人々の具体的な暮らしに深く浸透した活動を行っていた。しかし時が経つにつれて忘れ去られていった「古層の神」たちは、神社の脇のささやかな祠や道端の祭場に放置されるようになってしまった。

けれど日本の芸能の世界において精霊は生き残っていた。芸能と技術を専門とする職人たちの世界ではこの精霊は「宿神」と呼ばれて、芸能に息を吹き込み、技術に物質を変成させる魔力を与える守護神として、大切に守り続けられてきた。つまり、今日「日本文化」の特性を示すものとして世界から賞賛されている芸能と技術の領域を守り、そこに創造力を吹き込んでいたのは、この列島上からすでに消え失せてしまったかと思われた、あのシャグジ=宿神というとてつもなく古い来歴を持つ精霊だったのだ。まさしくこの宿神なくしては、今日の「日本文化」などというものさえ存在できなかったかもしれないほどに、重大な意味を秘めた、あまりにも知られることのない神=宿神であった。

シャグジは「創造の空間」に棲むことによって制度や体系を維持する働きの側につくことはなかった。制度や体系を支える権力は「創造の空間」の内部から沸き立ち力を自らの生命力にしているけれども、自分自身では生命を持つことのできない幽霊である。ところが自分の力量によってひとつの世界を立ち上がらせていくことのできる「構成的権力」は、制度や体系の背後に潜んで、背後から秩序の世界を揺り動かし、励起し、停滞と安住に向かおうとするものを変化と創造へと駆り立てていくことができるのだ。

ぼくが人間であるというのは本当か?

秩序の神、体系の神の背後に潜んでいて、自分自身を激しく振動させ、励起させることによって、世界を力動的なものに作り変えていこうとする神=精霊の存在を、中世の日本の人々は「後戸(うしろど)の神」と呼んだ。

 

 

・能の最重要演目「翁」とはこれすなわち宿神のこと

あらゆる芸能や技術はそれぞれの道にふさわしい守宮神の護りを得る必要があった。それは単なる神頼みではなく、その神を通してそれぞれの芸がどこかで「へその緒」のようなものを通して揺れ動く「シャグジ空間」に繋がっている必要を感じていた。そういう空間から立ち上がってきた石や花でなければ、霊性にひたされた芸能と呼ぶことはできない、ただ美しいだけのただの物質的現象に過ぎないと見なされた。

能の演目中で最重要と考えられてきた「翁(おきな)」とは、この宿神に他ならないと密かに伝承されてきた。「翁」として影向する守宮神なくしては、春日大社に集う神々のおもてだった面々でさえも、自身に備わった強力な霊威を発動させることはできないと考えられた。守宮神が住処とする特別な様式というものが、猿楽の徒には明瞭に直感されていた。それは神々以前からあって、神々を自分の中から生み出す空間である。しかも生まれたばかりの神々を優しく包んで、破壊されないように守る役目も果たしている。

 

・「宿神」=「翁」=「胞衣」の方程式

金春禅竹の書した「宿明集」には、「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙の根源である「隠された王」であるという主張が明記されている。

出産のとき、母親の体の外に排出されてきた胞衣はその途端に「荒ぶる神」へと変貌する。胎児は母親の胎内にあってへその緒とこの胞衣を通して、リズミカルに胎動する巨大な暗い空間に自分を繋いでいることができた。その意味で、この段階の子供はまだ人間の世界のものではなく、神の領域のものだった、その子供はへその緒を断ち切って母親の体外に出てくる。そしてそれと一緒に、あの巨大な暗いリズム空間と子供との衝撃となっていた胞衣は、この世界ではもはやどこにも「置かれ場所」というものを持たない恐るべき存在として人の世界に取り残される。金春禅竹は、これこそが「翁」であり、宿神であり、大荒神であり、だからこそ秦河勝だと考えるのだ。

猿楽は、ある特殊な空間の感覚を主題にした芸能なのだ。その空間はあの世(他界)の余韻を保ったままにこの世(現実世界)に出現をとげている。

 

 

・ミシャグチを示すものとしての男根的石棒と女性器的扇

ミシャグチのような神は、たとえこの現実世界に呼び出されて来ようとも、それによっていささかも純粋な霊威が損なわれるということが起こらない。母の体内を出て、現実の世界に存在しながら、閉じられた壺のような子宮のうちにいる時とまったく同じ状態を、ミシャグチは維持することができるのだ。それはこの神が「胞衣をかぶって生まれてくる子供」であることによる。

神使は「胞衣」を表す笠をかぶってミシャグチを我が身に付着させる。神の霊威が人に憑くことを、諏訪信仰圏ではこのように胎生学の比喩で理解しようとしている。それどころか、ミシャグチの神自身が、「胞衣をかぶって生まれてくる子供」として、決して「胞衣」を脱がない神なのである。ミシャグチは「胞衣」を通して、存在の母胎と常に結び合っている童子の神として、石棒(男性器)と石皿(女性器)の結合(陰陽不二)から生まれる神、絶え間なく生成される神なのだ。

ミシャグチは日本列島の全域から見出される。国家と関係を持たない神としてこれほどまで広くこの列島上に分布している神は他にない。それはしばしばほとんど自然のままで男根の形状をした石や、女性器を意味する扇胞衣としての布として表現されている。

 

 

・包皮をまとったペニスは人類最古の幸福の象徴

生まれてくるときに、頭に胞衣をつけて出てきた子供は、人生で望みを叶えることも自在な、特別な子供だとヨーロッパの民間では考えられてきた。そのとき子供がかぶって出てきた胞衣は「幸福のずきん」として珍重された。特にそれは水難よけの魔力を持つと言って、船乗りたちに喜ばれたのである。

子供は「無」の世界を渡ってこの「有」の世界に現れる。イメージとしての胞衣は、この「無」と「有」を隔てる境界の間に関わっているものとして関心を集めていた。胞衣をつけたまま生まれてきた子供は、幸福で豊かな人生を送るだろうと考えられた。この子供が見えない霊界との繋がりを失うことがないからである。霊界を作っている力は、現実の世界に触れるとたちまちにして消え去ってしまう。ところが、胞衣をかぶって生まれた子供は、現実世界の諸力の影響からデリケートな力を守るための防護膜が与えられていたのだ。この世界の中にいても、この子供の頭にはいつも薄いベールがかぶさって、霊界との通路がふさがれていない。

実際に多くの民話に登場する精霊や小人たちは、しばしば頭にずきんをかぶっている。このようにヨーロッパの「古層の神々」は、胞衣をめぐる象徴的思考から、たくさんの養分を吸い上げていたのである。

ハヴロック・エリスはすでに民衆的思考の中に”子供=ペニス、胞衣=コンドーム”の等式が働いていたことを理解していたようだ。すると、胞衣に包まれている状態の子供には、何か「男根的 phallique」機能のようなものが備わっているのではないかと考えることができる。この説には根拠がある。

ブルターニュからドナウ川にかけての広大な地域から「ずきんをつけた精霊genus cucullatus」の像が発見さている。特に温泉の湧いている場所に建てられた古いお社の跡などからは、石や青銅や焼いた粘土などで作られたこの精霊の像が、今でも多数発見されている。この像はケルト世界の「古層の神々」を表している。人々に幸福をもたらすというこの「小さな神様」は、どれも子供ような顔つきで全身にすっぽり衣をまとい、頭には深々とずきんをかぶっている。そして中にはこのずきんの部分がそっくり外せるような作りになっており、ずきんを脱がせると子供の頭がペニスの形に作ってあるという作品も多数見つかっている。

頭を覆っていたずきんは従ってペニスを覆う包皮に相当することがわかる。実際包皮は外套のように、着脱可能な皮膚でできた衣であり、亀頭の部分を覆ったり、外に露出させたりする。多様な表現をされるこの精霊の像をみると、ペニスと子供ないし精霊そのものが同一視され、亀頭部は頭に、包皮は胞衣ないしずきんと同一視されていたのが明白だ。実際語源を調べてみても、この精霊の名を示すcucullusはずきんという意味と包皮という意味を同時に表している。

「胞衣をかぶって生まれた子供」のイメージには、男根とそれを包み込む母体の保護機能とが、合体しているのだ。子供や小さな精霊の姿で描かれる「男根的機能」を、胞衣や頭巾や包皮の表す保護機能によって包み込み、外界の影響から守っている。

ここでは外界にむき出しになった男根的機能も否定されているし、内容物が空っぽの母性的機能も否定されている。ふたつの機能が皮膚と皮膚を合わせるようにして一体であるとき、ヨーロッパ精神の「古層」において、人間は神々の世界への通路を始めて見いだすことができたのである。その通路では、動物が人間の頃場を喋り過去の夢は未来の現実となる。このイメージはいずれ、古い神々を抑圧した後に形成されたキリスト教ヨーロッパにおいて「幼子を抱くマリア」の像として蘇りを果たすだろう。「幸福」という概念の人類最古の表現形態、それが私たちの「胞衣をかぶって生まれた子供」に他ならない。

現代社会の日本では、皮をかぶった包茎というものが恥ずかしいものという認識が広まっているが、世界と古代を見渡せば、むしろ包茎の方が幸福に近く、神性を帯び、意味深い文化を人の心に運んできたのだ。現代の流行的な思想に流されて、狭い時代の範囲の常識のみで物事を捉えてはならない。

 

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