アトスの修道院にはお金を払わずに泊まれる?!?!?
宿泊費も食事代も無料!ギリシャ正教の聖地アトスの修道院での滞在は思ったよりも快適だった
・女人禁制のギリシャ正教の聖地アトスへの憧れ
・アトスの旅の中では一体どこに宿泊するのか?
・テッサロニキのアトス巡礼者事務所で宿泊可能な修道院リストを手に入れた
・Zografou修道院滞在の詳細
・Pantokratoros修道院滞在の詳細
・Iviron修道院滞在の詳細
・アトスの修道院での宿泊費と食事代は全て入山許可証の30ユーロに含まれる
目次
・女人禁制のギリシャ正教の聖地アトスへの憧れ
2017年に偶然「孤高の祈り ギリシャ正教の聖山アトス」という写真集を見かけて衝撃を受けた。ギリシャ正教の辺境の聖地アトスでは何と1406年から今に至るまで女人禁制が貫かれており、一般的な世界とは隔絶された宗教世界の中で黒ずくめの衣装を纏った僧侶たちが自給自足の生活を営みながら祈りに専念しているのだそうだ。神秘的で美しく荘厳なアトスの写真の数々を目にしたぼくは、せっかく男性の肉体を持ちながらこの世に生まれ着いたことだし、世界一周の旅の中で絶対にギリシャのこのアトスへと立ち寄ろうと直感的に心に決めた。
・アトスの旅の中では一体どこに宿泊するのか?
ぼくがアトスの旅に出る前に気になったことは、アトスでは一体どこに泊まればいいのだろうかということだった。閉ざされた辺境の聖地アトスにおいてはホテルなど一般的な宿泊施設はなさそうだ。写真集「孤高の祈り ギリシャ正教の聖山アトス」の中で筆者は修道院に泊まっているので、おそらく全ての巡礼者は修道院に泊まることになっているのだろう。しかし数あるアトスの修道院の中でもどの修道院に泊まることができるのか、どうやって行けばいいのか、予約はどうすればいいのかなどの詳細は全くわからず、アトスの旅は謎に包まれるばかりだった。
・テッサロニキのアトス巡礼者事務所で宿泊可能な修道院リストを手に入れた
謎は謎のままでぼくは日本からギリシャへと渡り、アトスの巡礼者事務所のあるギリシャ第2の都市テッサロニキで、ようやく宿泊可能な修道院のリストを手に入れた。リストにはそれぞれの修道院の電話番号とメールアドレスも記載されているので、これらを利用して予約を取ればいいということだった。しかしぼくが宿泊可能な修道院リストを手に入れたのは、アトスの冒険を開始するたった3日前だった!
ギリシャで電話番号を持っていなかったぼくは可能な限り全ての修道院にメールを送って何とか予約を取ろうとしたのだが、そんなに直前になって宿泊予約をしてくるぼくに対して返信してくれる修道院は当然ほとんどなく、ぼくは1泊目の宿泊予約しか取れないままアトスへと旅立つことになってしまい不安な気持ちでいっぱいだった。予約なしでも、果たしてアトスの修道院には泊まることができるのだろうか。
結論から言うとたとえ予約していなくても、直接修道院を訪ねて今夜泊めてもらえるように交渉すると、その日に宿泊させてもらうことは可能だった。しかし噂によると予約していなければ絶対に泊めてくれない修道院も存在するそうなので、予約ができるなら予約をして行った方が無難だし安心できるだろう。この記事ではぼくが実際にアトス巡礼の旅の中で宿泊した3つの修道院を紹介し、アトスの修道院に泊まるのってどういう感じだったのかを紹介しようと思う。
・Zografou修道院滞在の詳細
アトス巡礼の旅の初日は、ブルガリアの修道院であるZografou修道院だった。Zografou修道院のゲストハウスはとても綺麗で快適だった。部屋はドミトリーホテルのような相部屋で、ぼくの部屋にはしっかりとした作りの5つのベッドが並んでいた。綺麗なシーツと毛布も用意されており、夜に寒くて凍えるということもなかった。充電も可能だった。トイレとシャワーは共用。シャワーはきちんとお湯が出た。シャンプーや石鹸はないので持参する必要があった。
Zografou修道院の宿泊で特徴的だったのは、ぼくのようなギリシャ正教徒ではない異教徒は、正教徒と様々な場面で区別されてしまうということだった。たとえば異教徒は教会での祈りを見てはいけないと決められていたし、食事の時間も正教徒と異教徒とでは机を分けられるほどの徹底ぶりだった。しかし自分が全くの“異物“であると感じさせられてしまうという珍しい体験を除けば、非常に快適で不満のない滞在となった。夕ご飯は大量で美味しかったが、朝ご飯は出なかった。
Zografou修道院は直前に宿泊予約のメールを送ったにも関わらず返信をくれた唯一の修道院であり、頼り甲斐があるし慈悲深い修道院だと心から感謝した。
・Pantokratoros修道院滞在の詳細
2日目に宿泊したのはPantokratoros修道院だった。Pantokratoros修道院はアトス半島の東海岸に位置し、断崖絶壁に立ち大迫力の海の風景が見られる絶景修道院だった。この修道院から望まれる「アトスの海+隣のStavronikita修道院+アトス山」の絶妙な組み合わせの光景は、ぼくがアトス巡礼の旅の中で最も感動した見事な絶景!
宿泊施設としては、最も簡素で素朴な部屋だと感じられた。ぼくは地下室のような場所で滞在したが、10以上もあるベッドは様々な種類があり古く使い込まれている印象だった。しかし普通に寝させてもらうだけならば何も問題はなかった。それぞれのベッドに2つずつタオルが用意されているのがとても嬉しかった。トイレとシャワーは共用。シャワーはきちんとお湯が出た。シャンプーや石鹸はないので持参する必要があった。プラグの穴はあったが、なぜか充電はできなかった。
Pantokratoros修道院はZografou修道院とは異なり、異教徒であっても祈りを見学してもいいし、正教徒と異教徒は共に食事を取ることができた。また夕食も朝食も出てきたので飢えることがなかった。
・Iviron修道院滞在の詳細
アトスの旅の中で最後に泊まったのは、Iviron修道院だった。Iviron修道院のゲストハウスは本当に巨大で立派だった!しかもぼくが泊まったのは2人部屋のほぼ個室!しかも新しくて綺麗!アトスの旅の中でこんなホテルのような快適な滞在ができるとは思いもよらなかった!トイレとシャワーは共用。シャワーはきちんとお湯が出た。シャンプーや石鹸はないので持参する必要があった。充電も可能だった。
Iviron修道院にはなんと日本人修道士の方が暮らしており、3年ぶりくらいに訪れた日本人のぼくにとてもよくしてくれた。Iviron修道院周辺を案内してくれたり、隣のStavronikita修道院へ一緒に巡礼してくれたり、夜の食事会に誘ってくれたり、謎に満ちたアトスについて丁寧に教えてくれたり、思い出を挙げればきりがないほどに濃厚な時間をIviron修道院で過ごすことができた。Iviron修道院の夕ご飯は巨大な鯛が出てきてやたらと豪華で驚愕したが、日曜日はいい食事が出ると決まっているらしい。2泊したうち、朝ご飯は出る日と出ない日があった。曜日によって違うという。
注意したいのはIviron修道院のゲストハウスには「予約者以外宿泊できない」という張り紙がしてあったことだ。張り紙に反してぼくは予約なしの飛び込みでも宿泊できたが、それはぼくがIviron修道院を訪れた3年ぶりの日本人巡礼者であり、さらにIviron修道院には日本人修道士が暮らしていたことから特別扱いされた可能性もある。しかしいつでも日本人巡礼者が特別扱いされるかは定かではなく基本的には予約が必要らしいので、事前に予約してから訪れるのが賢明だろう。
・アトスの修道院での宿泊費と食事代は全て入山許可証の30ユーロに含まれる
このようにぼくの4泊5日のアトス巡礼の旅の中では3つの修道院に宿泊したが、それぞれの修道院にはそれぞれ独自のよさがあり、どれも比べることができない美しい思い出となった。このようにアトスの旅の中で巡礼者は修道院に宿泊させてもらい、食事も出してもらえることになっているが、驚くべきことはぼくは修道院にホテル代も食事代も全く支払っていないということだった。一体なぜそんなことが起こるのだろうか。
実はギリシャ正教の聖地アトスへと入るためには「入山許可証」の取得が必要となる。アトスへのフェリーが出るウラノポリという港町で、巡礼者は入山許可証を取得することになっているのだが、この入山許可証を取得する際に巡礼者は30ユーロ支払うことになっている。この入山許可証の発行のために支払った30ユーロの中に、なんとアトスの旅の中の宿泊代も食事代も含まれるというシステムになっているのだ!
入山許可証でアトスにいられる期間は基本的に3泊4日。ギリシャで3泊4日の宿泊代と食事代を30ユーロで賄えるなんて、アトス巡礼の旅はかなりお得なシステムによって成り立っているのではないだろうか。もしかしてどんなに貧しいギリシャ正教徒の信者でも苦労なくアトスという聖地を巡礼できるように、料金が低く抑えられているのだろうか。このシステムのおかげでぼくは最初の入山許可証をウラノポリで払ってしまえば、後はアトスでどんなに宿泊してもどんなに食べてもお金を払わないという不思議な体験をすることになった。他の通常の旅では経験できない独自性を、神秘的なアトスの旅は常に孕んでいる。
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