見所を徹底解説!アテネ国立考古学博物館で古代ギリシャと日本の不思議な共通点を見出した
・ぼくがギリシャ彫刻が好き
・アテネ国立考古学博物館の入場料と所要時間
・アガメムノンのマスク
・ポセイドンのブロンズ像
・馬に乗る少年
・ミロス島のポセイドン像
・マラトンの少年
・アンティキセラの青年
・アフロディテとエロスとパンの像
・アフロディテ像
・アルカイック期のクーロス像
・カルディツァの考える人
・アッティカ地方の黒絵式壺
・動物と人間の結合
・古代ギリシャ人もタコを食べていた?
・花で飾られたお洒落な牛さん
・一番可愛かったで賞
・古代ギリシャも古代日本も女体と妊婦を崇拝していた
・古代に共通して見られる謎のクルクル
目次
・ぼくがギリシャ彫刻が好き
ぼくはタイ、マレーシア、シンガポールを巡るマレー半島を南下する旅を終え、シンガポールから格安航空機に乗ってついにギリシャへとやって来た。今回のギリシャの旅は今でもなお女人禁制を貫くギリシャ正教最大の聖地アトスを訪れることが最大の目的だったが、せっかく人生初のギリシャへとようやく辿り着いたのだから、ギリシャの美しい島々を含むギリシャ一周の旅を計画していた。
これまでに世界中の美術館や博物館を巡っていると、自分がどのようなものに心惹かれるのか、どのような国のどのような時代のどのような作品が好きな傾向にあるのか何となくわかってくる。有名な美術館や博物館には膨大な数の展示があり、その中で飽きることなく豊かな時間を過ごすためには、好きなものと好きではないものを自分自身でしっかりと把握し、好きな分野はじっくりと鑑賞し好きでない分野に関しては流し見するくらいのメリハリを付けることが重要なのではないだろうか。
自分が好きなものというのは、説明がつかないから面白い。例えば自分が青色が好きな理由や、桃の味が好きな理由を的確に最初から説明できる人がいるだろうか。好きなものというものは理由や論理を超えた直感によって成り立っており、もしかしたらそれは先祖の辿って来た遺伝子の旅路や輪廻転生における前世の因縁と関連しているのかもしれない。
ぼくがこれまでの美術館や博物館の中で大きく心を動かされるもののひとつに、古代ギリシャの彫刻があった。白い大理石で作られた美しいギリシャ彫刻は、どれだけ見ていても飽きることがない。今回のギリシャ一周の旅路の中でも、なるべくそれぞれの都市や島で考古学博物館へと赴き、なるべく多くのギリシャ彫刻を鑑賞したいと考えていた。
・アテネ国立考古学博物館の入場料と所要時間
まずは首都アテネにある国立考古学博物館を訪れてみよう。アテネ滞在中は「今日は遺跡巡りだけをする1日にしよう」と自分で勝手に決め込み、遺跡巡りに集中する日を設けたりしていたが、今回の国立考古学博物館も、クレタ島以外のギリシャ全土の出土品のほとんどが収められている国内最大規模の博物館だということで、「今日は国立考古学博物館で1日を費やそう」と決めて入場した。
国立考古学博物館の入場料は10ユーロだった。結局めちゃくちゃゆっくり中を回ったぼくの所要時間は4時間だった。
・アガメムノンのマスク
まず最初に目に飛び込んできたのは、アガメムノンのマスク!黄金色に輝くこのマスクは金でできた葬儀用の仮面であり、ミケーネ遺跡の円環墓地にある埋葬穴の死体の顔の上で発見されたという。
・ポセイドンのブロンズ像
このポセイドンのブロンズ像はエヴィア島アルテミシオンの海底から偶然に発見されたもの。こんなのが海底からいきなり出てきたらめちゃくちゃ感動しそう。
・馬に乗る少年
ポセイドンのブロンズ像と同様に、エヴィア島のアルテミシオンで発見されたブロンズ像。まさに今にも実際に走り出しそうな躍動感がすごい!
・ミロス島のポセイドン像
こちらはミロス島で発見されたヘレニズム期の代表作。後ろにはイルカが隠れている。
・マラトンの少年
古代の有名な彫刻家プラクシテレスによる紀元前330年の少年像。アッティカ地方のマラトン沖で発見されたことが名前の由来だという。
・アンティキセラの青年
こちらは1900年にアンティキセラの海から壊れた形で発見されたアンティキセラの青年。ギリシャの海からはこんな立派な像がいっぱい出てくるのか!神秘的すぎる!
・アフロディテとエロスとパンの像
1904年、ミロのヴィーナス(アフロディテ)で有名なミロス島で発見された。性的ないたずらをしようとする牧羊神パンに向かって、愛と美と性を司る女神アフロディテがサンダルを投げつけようとしている。え、愛と美の女神なのにサンダル投げちゃうの?間にいる天使はアフロディテの息子のエロスで、母親を守ろうとパンを止めている様子がうかがえる。解説を読むとどうやらアフロディテはお風呂に入ろうとしている場面のよう。お風呂に入るところで性的ないたずらをされたら、そりゃあ愛と美の女神であろうとサンダルでしばきたくなるのかもしれない。ぼくは入浴中のしずかちゃんを覗いてしまったのび太君に、しずかちゃんが激怒するというお決まりの場面を思い出してしまった。古代でも現代でも、男女の性的衝動や関係性はずっと変わらないのかもしれない。
・アフロディテ像
アフロディテ単独の像はこちら。こっちは確かに愛と美と性の女神としての風格が感じられる。
・アルカイック期のクーロス像
アルカイック期(紀元前7世紀~紀元前5世紀)に作られたクーロス(青年)像には共通してアルカイック・スマイルと呼ばれる微笑みが見られる点が特徴。アルカイック期の作品には、エジプトの影響が色濃く見られる。アルカイック期の部屋にはいくつもの巨大なクーロス像が立ち並んでいいて圧巻だった。そして今はギリシャにいるはずなのに古代エジプトの風を感じ、地理的にも近いギリシャとエジプトは古代から影響し合っていたのだと実感した。エジプトにはまだ行ったことがないけれど、いつか絶対に訪れたい。
・カルディツァの考える人
カルディツァの考える人は、テッサリアのカルディツァ地域で発見された紀元前4500~3300年の土偶。男性が上を向いて考え込んでいる。
・アッティカ地方の黒絵式壺
アルカイック期(紀元前7世紀~紀元前5世紀)の時代にアッティカ地方を中心として、黒絵式陶器が盛んに作られた。黒色と朱色のみをベースにした絵柄は他で見たことのない独自性を持っていた。ギリシャ神話のストーリーが描かれていることが多いという。
・動物と人間の結合
他にも古代ギリシャには様々なモチーフの絵柄が陶器に描かれていて興味深い。動物と人間が組み合わさっている不思議な生物の絵も多かった。
・古代ギリシャ人もタコを食べていた?
ぼくがアテネで初めて食べた食べ物だったタコが、なんと古代ギリシャの壺の模様に!今ぼくがギリシャでタコを食べたのと同じように、古代ギリシャ人もタコを美味しいと思いながら食べていたのだろうか。
・花で飾られたお洒落な牛さん
この牛さんは花を額に飾っていてすごくお洒落!部屋に飾ってみたい。
・一番可愛かったで賞
アテネの国立考古学博物館で一番可愛かったで賞!
・古代ギリシャも古代日本も女体と妊婦を崇拝していた
ぼくが最も興味深いと感じたのは、上記のようにギリシャ芸術がギリシャらしくなるむしろ以前の先史時代の展示だった。そこには乳房と腹部が膨らんだおそらく妊婦のかなりシンプルな土偶が並んでいた。ぼくがこれを面白いと思ったのは、同じようなものを日本の縄文時代の博物館でも多数見たからだった。
やはり膨らんだ乳房と腹部=妊婦は子孫繁栄の象徴として、古代人にとって最も重要な題材だったのだろうか。ギリシャと日本って今は遥か彼方の別の文化圏に属している国という感じがするのに、古代まで遡ると等しく女体や妊婦を崇拝しているという点で共通していて、そこの底では人間は結局誰もが同じ気持ちを持っているのだと不思議な親近感が芽生えてくる。
・古代に共通して見られる謎のクルクル
同じように古代ギリシャと古代日本で共通していると感じたのは、クルクルだった。古代ギリシャでは様々な模様がクルクル回っていた。そして縄文土器も同じようにクルクルしているのが特徴的だ。
古代人の関心事は、日本でもギリシャでも女体、妊婦、そしてクルクルだったのだろうか。女体や妊婦は子孫を残すという動物的な衝動に支えられているから納得できるが、クルクルがなぜそんなにも古代ギリシャ人にとって重要だったのだろうか。一体クルクルにはどのような秘密が隠されているのだろうか、考えてみてもわからない。海の波を描いたものだろうか。蛇のクルクルだろうか。まさかアニメの中の眼鏡のクルクルではあるまい。
・ギリシャ一周の旅の記事一覧はこちら!