インドには道路にもお寺にも牛さんがいっぱい!!!!!
道路も寺院も牛だらけ!インドで牛が神聖なのはヒンドゥー教の破壊神シヴァの乗り物であることが理由だった
・牛が道の上を堂々と歩いているインドの日常的な風景
・インドで牛が大切にされるのは、ヒンドゥー教の破壊神シヴァの乗り物であることが理由だった
・インド人は本当に牛を神聖なものとして大切に扱っているのか
・インドのヒンドゥー寺院で牛と男根が対峙している不思議な理由
目次
・牛が道の上を堂々と歩いているインドの日常的な風景
インドを旅していて最も驚いたことのひとつは、インドではどこも牛だらけだということだった。学校の地理の授業でヒンドゥー教の国では牛を食べないで大切にしていると習ったことがあったが、まさか人や車が激しく行き交う都会の道路の真ん中でさえ、こんなにも牛が堂々と闊歩しているとは思わなかった。どこに行っても牛がウロウロしているというほのぼのとした風景は、まさにインドを代表する珍しい思い出としてぼくの中に刻まれている。
牛と人が共存しているインド社会では、気を付けるべきことも沢山あるようだった。牛がのんびりと道路を横断しているような時には、車と牛がぶつかってしまわないようにインド人ドライバーは必死にクラクションを鳴らし続けていた。それでも牛がそんなに素早く動けるはずもないので、牛が道路を占拠している時には牛が通り過ぎるのを人間の方がじっと我慢して待たなければならなかった。
野生の牛は突如として排尿したり排便したりすることにも注意が必要だ。インドの旅初日にはデリーの道路でウロウロしている牛がまだ珍しく、まさにインドに来たという光景が嬉しかったので牛の写真を撮りまくっていたが、目の前の牛がいきなり大量に放尿し出したのでド肝を抜かれてしまった!
また日本で犬のフンが落ちているような感じでインドの道では巨大な牛のフンが落ちているので、踏んでしまわないように気を遣わなければならない。北海道の牧場で働いたことのある友人によると、排便している最中に牛がくしゃみをするとフンが鉄砲玉のように空中を飛んでくることがあるらしいので、ぼくはなるべく牛の後ろに行かないようにしていた。
またこれは滅多にない経験かもしれないがインドのアーグラの街で牛の前を歩いていると、巨大な牛がいきなりぼくの背中に体当たりしてきたので怖かった!牛って穏やかな性格の動物だと思っていたのに、一体何の目的で体当たりなんかしてきたのか訳がわからない!結局インド40日間の旅の中で牛に体当たりされたのはその1回だけだったので珍しい出来事だったのかもしれないが、怪我でもしたら大変なので牛の前を歩く時にも気を付けようと感じた。
・インドで牛が大切にされるのは、ヒンドゥー教の破壊神シヴァの乗り物であることが理由だった
しかしなぜインドでは牛がこんなにも人間社会から排除されずに人と共存し、ある意味で大切に扱われているのだろうか。それはインド人から主に信仰されているヒンドゥー教という宗教に理由があるという。
ヒンドゥー教とはインダス川流域に紀元前より発生した開祖を持たない多神教の民族宗教で破壊神のシヴァ、維持神のヴィシュヌ、創造神のブラフマーの三柱などがメインで崇拝されている。そしてそれぞれの神様には独自の乗り物があり、シヴァの乗り物は牡牛であるナンディン、ヴィシュヌの乗り物は神鳥であるガルーダ、ブラフマーの乗り物は白いガチョウのハンサと決まっているという。インドではこの三柱の神様の中でも破壊神であるシヴァが最も熱烈に信仰されており、インド人たちが牛を大切にしているのも牛を食べないのも、まさに牛がシヴァ神の乗り物だからである。
・インド人は本当に牛を神聖なものとして大切に扱っているのか
しかし全てのインド人がその辺にいる牛を神聖な動物としてめちゃくちゃ大事にしているのかと言われればそうでもないのかなとぼくはインド中を旅をしていて感じた。インド人の男たちは車の進行を妨げている道路の牛たちに無遠慮にクラクションを鳴らし続けていたし、街中の道路でウロウロしている牛をペシンと叩いて邪魔だと言わんばかりに追い払ったりする者もいてとても敬意を払っているようには見えない場合もあった。その一方で牛がいると何やら祈りを捧げて丁寧に触っているインド人女性なども見かけたので、牛が神聖なシヴァ神の乗り物として信仰されているのも確かなことなのだろうとも感じられた。
厳密には乳白色の牡牛だけがシヴァの乗り物のナンディンとして見なされるらしいので、牛の色や性別などもインド人の牛に対する信仰心と関係があるのだろうか。宗教に根差したインド人と牛の切っても切れない関係性は、その他の国でもなかなか見られない光景だったので興味深かった。
・インドのヒンドゥー寺院で牛と男根が対峙している不思議な理由
インドのヒンドゥー教寺院に行くとその建造物に入る前から「あ、この寺院はきっとシヴァ神が祀られているんだな」と予想できることが多々ある。なぜならその寺院の前には、じっとして動かない牛の像が鎮座しているからだ。牛の像が寺院の前にあるということは、その寺院の中には牛が乗せるはずのシヴァ神が祀られているということを意味する。牛は寺院の前で、自分の飼い主であるシヴァ神が寺院の中から戻ってくるのを健気にずっと待っているかのようだ。インドでは街中で生きている牛だけではなく、生きてはいない牛の像も同じように重要な意味を持っている。
世界遺産であるエローラ遺跡のヒンドゥー教寺院の洞窟の前に、プリンとした牛さんのお尻だけが見える。この牛のまん丸としたお尻を見るだけで、ぼくたちは「この中にはシヴァ神がいるのだろう」と簡単に予想できる。それでは実際に洞窟の中に入ってみよう。
お尻はやっぱり牛さんのものだった。地に伏してただじっと洞窟の中を眺めている。
洞窟の中には天に向かって堂々と聳え立つ不思議な石の突起物が!これはリンガと呼ばれ、シヴァ神の象徴である男根を表現している。インドではシヴァ神を祀る時には、必ずと言っていいほどこのリンガが用いられている。つまりヒンドゥー教寺院の前に牛の像が鎮座している場合には、その寺院の中心には堂々とした男根が祀られているということだ。
牡牛と男根が対面しているという不思議な構図が、インドのヒンドゥー教寺院では至る所で見られる。鎮座する牛と人間の男根という一見全く関係のなさそうなものがインドで密接に巡り会ってしまうのは、それもこれもシヴァ神の乗り物が牛であるという理由からである。
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