中国雲南省の秘境で見つけた塩のロマン!
紀元前から塩を作り続ける!中国雲南省の秘境村・諾鄧(Nuodeng)で塩馬古道の深い歴史を感じる
・人生における塩の考察
・諾鄧の「塩水脈龍王」伝説
・諾鄧の「千古の塩井」の内容
・諾鄧産の巨大な塩の塊を2個も買ってしまった悪夢
・人生における塩の考察
みなさんは塩について真剣に考えたことがあるだろうか。塩といえばぼくたち人間が生きる上で必要不可欠な栄養素である。にもかかわらず、あまりになじみ深すぎて、また安くて簡単に手に入りすぎて、塩のありがたさや重要性についてあまり考えたことがない人が多いに違いない。海水が周囲にありあまっている日本の民族にとって、塩は必要ではあるが大してありがたみのない物質だったのかもしれない。
しかし周囲に海がない地域や塩を手に入れるのが困難な地域においては、古代より塩の重要性が真剣に問われたり塩がある種の神秘性を帯びていたこともあるはずだ。内陸部に位置する中国雲南省の諾鄧でも、塩に関する不思議な伝説が残されていた。
・諾鄧の「塩水脈龍王」伝説
諾鄧には「塩水脈龍王」という塩に関する伝説が残されている。諾鄧の龍王伝説によると、古代中国では龍王が5つの塩井戸を司っていた。5つの塩井戸と呼ばれていたものは、諾鄧井戸、順蕩井戸、山井戸、師井戸、大井戸の5つだったという。その5つの井戸に諾鄧の名前も刻まれているのだ。
諾鄧では紀元前109年の漢代から塩の採取をはじめ、今まで2000年あまりの歴史があるという。井戸から水を汲み上げ、それを乾燥させることで塩を手に入れてきたのだという。そのような歴史深く神秘的な伝説に彩られた古井戸を、今なお諾鄧の村で見学することができる。
「千古の塩井」と名付けられたこの井戸の深さは21メートル。昔は人力で塩水を汲み上げ格塩家へ分けられ、塩家はそれぞれのかまどで塩を作ったという。海のない内陸部の中国雲南省の井戸水を乾燥させることで、一体どうして塩ができるのだろうか。不思議。太古の昔には雲南省も海の底にあり、その塩分がまだ地下深くに眠っているのだろうか。
ぼくがアマゾンで買った感動的なロマンあふれるもうひとつの知られざるシルクロード 「茶馬古道」の映像作品の中での塩の作り方とはちょっと違うようだが、それでも紀元前から塩を作っていた由緒正しき塩井に違いなかった。
・諾鄧の「千古の塩井」の内容
「千古の塩井」は大きな屋根付きの小屋になっており、真ん中が一段くぼんでいる。その底に2つ穴が開いており、それこそが塩のための井戸水を汲み出すための井戸だった。今は柵がかけられている。
中には中国語や絵の資料も飾られており、「塩馬古道」と呼ばれたように、古代より塩が重要な交易品として馬とさえ交換された歴史が描かれている。
・諾鄧産の巨大な塩の塊を2個も買ってしまった悪夢
塩馬古道の歴史とロマンを感じるためにこんな秘境の村・諾鄧までやってきたのだから、諾鄧で作られた塩を買わないわけにはいかない。諾鄧の村の中には諾鄧で作られた証拠として「諾鄧」と刻印された塩の塊がよく売られている。ぼくも欲しいことには欲しいが、この塩の塊がかなりデカい!デカいし、それに重い。長旅では無駄なお土産品を買わずに荷物をできる限り軽くするのが鉄則だ。ぼくは塩を買うか買うまいか、真剣に悩んだ。
宿泊している宿でも聞いてみると、宿でも諾鄧産の塩を売っているという。大きな塊が2つでなんと15元(225円くらい)!安いのはいいが、どデカい塩の塊が2個も…重い…。
どれくらいデカいか宿の白族のおばちゃんの顔と比べてみると、この塩の塊の大きさが理解できるだろうか。
だいたい、海外旅行で塩を買うなんて意味が分からない。塩なんてそこらへんの日本のスーパーで格安で買えるのだ。しかも腐らないし長持ちするから、そんなに買い換える必要もない。海外旅行で塩の大きな塊を2個も買って重さに耐えながら旅を続けるなんて、どう考えても笑い者である。
しかしせっかく訪れたあまりに美しい諾鄧!おばちゃんにこの塩、ひとつ7.5元で売ってくれない?と聞いてみると、おばちゃんはぼくに諭すようにこう言った。
「この2つの塩はね、ひとつは諾鄧の『諾』で、ひとつは諾鄧の『鄧』なの。だから2個でセットじゃないと買えないのよ。2個買いなさい。」と説き伏せられてしまった。
いやいやいやいや!!!意味わからん!!!どんな論理やねん!!!
とぼくが中国語でおばちゃんに素早く突っ込めるわけもなく、おばちゃんの押しに負けて、ぼくは大きな塩の塊を2個買う羽目になってしまった。ぼくはかなり重くなった自分のバックパックを背負いながら、ただでさえ歩くのが大変な断崖絶壁の諾鄧の村を去っていくのだった…とほほ…。