夢叶わず 人は生きる 明日も力も愛さえも失くして

中島みゆき夜会「海嘯」のあらすじは?9月下旬のプレトリアで憧れのジャカランダは見られたのか
・中島みゆき夜会 VOL.10「海嘯」あらすじ~夢のテーマを軸に~
・ぼくのアフリカ大陸縦断の旅はついに最終章へ
・9月下旬のプレトリアで憧れのジャカランダは見られるのか
・プレトリアでジャカランダを見て生まれた新しい夢
目次
・中島みゆき夜会 VOL.10「海嘯」あらすじ~夢のテーマを軸に~

中島みゆきは主役・脚本・作詞・作曲・歌唱の5役を自分自身で担うという世界に例を見ない音楽劇「夜会」をライフワークとしている。最近ではその夜会で歌われる歌はほとんど全てが新曲で、年齢を重ねても衰えない彼女の創造的エネルギーには驚嘆せざるを得ない。今回は突然だが1998年に開演された中島みゆきの夜会 VOL.10「海嘯」のあらすじについて語っていく。夜会はいくつものテーマが多重的に絡まり合うことで構成されているが、今回は夢というテーマを軸として解説したい。
夜会 VOL.10「海嘯」で中島みゆきが演じる主人公・水上繭にはたったひとつの夢があった。夢というと一般的には小さな子供が野球選手になりたいとかケーキ屋さんになりたいとか、そういう将来の明るい希望のようなものを指し示す場合が多いが、夜会 VOL.10「海嘯」の中で語られる夢というものはもっと辛辣というか迫真に迫っているというような雰囲気が、彼女の歌唱からも醸し出されている。物語の冒頭には夢について歌い上げる歌詞が続き、彼女にとってそのたったひとつの夢を叶えることがどれほど重要なのかを語りかけて来る。
夢はきっと叶う
ひとつだけきっと叶う
そのために何もかも
失ってかまわないそれほどまでの夢なら叶う 一生にひとつだけ
夢はきっと叶う
命も力も愛も
明日でさえも引き換えにして きっと叶う
(この記事は著作権法第32条1項に則った適法な歌詞の引用をしていることを確認済みです。)
冒頭の「夢の代わりに」の歌唱を聞けば、彼女にとっての夢というものが楽しかったり明るかったり気楽なものではなく、もっと暗く重苦しく重厚なものであることが予想される。命や明日を捨ててさえ叶えたい彼女の夢とは、一体何だったのか。
彼女の夢の正体は、後半の夜会 VOL.10「海嘯」のクライマックスで明かされる。彼女の夢とは、自分の両親を殺した者たちが両親から横取りした温泉旅館に向かって意図的に地滑りを引き起こさせ、温泉旅館を海へ流し去りたいという復讐劇のことだった。そして彼女が自らの夢を告白した後に歌われる「紫の桜」は、まさに”絶唱”と呼ぶにふさわしい大迫力の歌唱で、舞台上から流れ落ちて来る大量の紙吹雪と相まって夜会史に残る名場面のひとつと言えるだろう。
別れを告げて消えていく者はない
思いがけないことばかり 残されることが生きること抱きしめて眠らせて 彼岸へ帰せ
桜 桜 20年前に
桜 桜 見たものを話せ
しかし彼女の夢は最終的に叶わないという結末を迎える。命をかけてもいいとさえ言い切る、人生でたったひとつの夢を叶えるためだけにこれまで走り続けてきたのに、それが叶わなかった絶望というものは常人には計り知れない。中島みゆきはその絶望を「叶わぬ夢」という歌で表現している。
夢叶わず 人は生きる
明日も力も愛さえも失くして
夢叶わず 人は生きる
嘘つきと呼ばれるだけのために空の蒼よ 海の蒼よ
抱きとめてくれますか
何の夢も叶えぬまま
消えてゆく私でも
彼女が彼女の夢を叶えられなかったのは、もうすぐ生まれて来る赤ちゃんとその妊婦を津波から守るために、自らが犠牲になったからだった。
今回は夢というテーマを軸として中島みゆきの夜会「海嘯」を解説したが、夜会「海嘯」はその他にも人間の罪が時間が経てば許される時効という制度への疑念や、国籍やそれにまつわる憎しみを超えて生命を救う医師という職業の尊さ、過去を憎み復讐するよりも未来の希望へと人生を捧げる重要性、呪いを受けた人間が生きながらにして生まれ変わる意味、誰も知らない自分だけの運命にただ孤独に立ち向かい生き抜くフロンティア精神の力強さなど、多重的な要素が複合的に重なり合って成り立っている。
・ぼくのアフリカ大陸縦断の旅はついに最終章へ
ぼくは2024年5月8日から10月1日まで、約5ヶ月間かけてアフリカ大陸縦断の旅をした。訪れた国はエジプト、エチオピア、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、タンザニア、マラウイ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビア、レソト、南アフリカ共和国だった。
ぼくたちはついにアフリカ最後の国・南アフリカ共和国に入り、大自然と大都会が見事に融合した美しきケープタウン、内陸国レソトも巡り、次に訪れたのは南アのプレトリアという街だった。
・9月下旬のプレトリアで憧れのジャカランダは見られるのか

プレトリアは別名ジャカランダ・シティーと呼ばれ、春になると街中にジャカランダの紫の花が咲くことで有名だ。ぼくはこの紫の花というものに並々ならぬ憧れがあった。夜会 VOL.10「海嘯」で中島みゆきが歌い上げた「紫の桜」という花が、何を隠そうこのジャカランダのことだからだ。
夜会 VOL.10「海嘯」の舞台はハワイだから夜会の中の紫の桜はハワイのジャカランダのようだが、ジャカランダは世界中で咲くものらしい。ぼくはDVDで夜会 VOL.10「海嘯」と中島みゆきの「紫の桜」の絶唱を何度も何度も見てきたからこそ、この目でジャカランダを見たいと強く思い続けてきたが、今までそのような機会に恵まれることはなかった。しかし今回春にジャカランダ・シティーと呼ばれるプレトリアに行くことになり、もしかしたら見られないかと大きな期待を抱いたのだ。
しかし春に訪れると言ってもプレトリアでジャカランダが咲き始めるのは10月かららしく、ぼくたちが行く9月下旬には見られるか見られないかものすごく微妙な季節だった。まぁ夜会の中のように盛大に咲き誇る様子は見られないにしても、ちょっとくらい見られたらいいなぁと淡い期待を胸に秘めていた。
・プレトリアでジャカランダを見て生まれた新しい夢
南アの都市は基本的に治安がいいとは言えずケープタウン、ブルームフォンテーンに加えてここプレトリアでも歩き回るのに注意が必要だった。最初は大丈夫かな、大丈夫かなと恐る恐るだったが、男4人で歩いていると変な場所でなければ意外と平気だということがわかり、結局割と広範囲を歩き回る結果となった。
歩いていると沢山の並木道を通ることになるが、そのほとんどがジャカランダの木だという。そして残念なことにほぼ全ての枝には何の花も葉もついていなかった。やっぱり9月下旬はジャカランダの花を見るには早すぎたみたい・・・。







しかし真剣に観察していると、たまーーーに紫の美しい花がちょこっとだけ咲いていることがあって幸せな気分になった。さすがジャカランダ・シティー!季節じゃなかったけれどほんのちょっとだけジャカランダの紫の桜を生まれて初めてこの目で見ることができて感無量だ。
一緒に旅していたオジさんは、ジャカランダの花を南米で飽きるほど見たという。ジャカランダは世界中にありそう珍しくもなさそうなので、季節が合えば簡単に見られるのだろう。この先の世界一周の旅路で絶対に空一面に咲き誇るジャカランダを見てみたい。少しだけ紫の桜を見せてくれたプレトリアを訪れて、そんな”夢”がぼくの心に深く刻み付けられた。
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